主人公チートって、ありですか?
古代魔法。
少なくとも千年前。もっとも古い類いのものは何時作られたのかも分からないような魔法のことで、古代文明の人々が使っていたとされる遺跡などから発掘、もしくは国の国立図書館に集められた古代の書などから見つけられ再現されたもののことを一般的にそう呼ぶ。
しかしながら、
現代魔法が生活に基づき、誰でも使いやすい、操りやすい、のに比べ、自然や他人もを支配し、理を超える禁忌を犯す古代魔法は攻撃力は高いものの操りづらく、相手も自分も危ない。
学校で教えられることはなく、独学で学ぶのが殆どだが、
そこまでして学ぼうとする者はいない。
使っていたら、戦闘用の魔法とされる古代魔法を扱う野蛮な奴という烙印を押されるのが殆ど。
優等生達ほど使わない。
まあ、この大会において使用は許可されているから、使う奴が大体一年に二、三人はいるんだけどね。
そう。
上記したように、古代魔法とはそう言う代物なのである。
それを持ち出したソフィアンと、個人的に現代魔法とも、古代魔法とも付かない変な魔法を使うアエラの戦いが目を引かないわけなく……
観客席は千客万来の大賑わい。
隣のコートの選手までもが振り返って見ている。
生徒会の諸君は試合が長くなりそうでスケジュールの管理に大わらわ。
騒然とした中、ソフィアンとアエラだけが互いを見合い、冷静だった。
「…………。避けた?」
「ソフィアン。受け止めるわけないでしょ。死ぬよ?多分。」
「あなた、そんな動き出来ましたの?」
「いや、出来ないよ?」
ダーツのピンの如く鋭く投げつけた腐蝕魔法で形成された青い花をアエラは咄嗟に避けていた。
刺さった床はミシミシと崩れ落ちる。
だが、流石は魔法学校の設備、何か魔法がかかっているのか、ある程度穴が大きくなると、次はその穴を塞ごうと床がうごうごと動き出す。
「では、どうして避けられたのです?」
「クマに背中押してもらった。」
「ふーん。つまり、反射で動くだけではなく、人形に指示を送るほどの余裕があったと。」
「いや、反射とかできないし。」
アエラは、一応セットされていた髪の紐を取ると、少し高めの位置で縛りなおす。
彼女なりの気合いを入れたのか、縛り終わり、いつもよりすっと顔を引き締めたアエラはソフィアンを見つめた。
「ソフィアンが、当ててくるのを知ってたから、ここ以外のどこかに動かすよう予めお願いしてたの。」
「………逆手に取られていたと?」
「ソフィアンが、いい人で良かったぁ~。」
てへへ、と笑うアエラは、でも緊張した肩を落とさず、いつでも動けるように身構えていた。
面白くないという表情だったソフィアン。
簡単に当たってくれるとは思っていなかったが、必殺が当たらないのは、掠りもしないのは流石に気分が悪い。
そこで、再び技を繰る。
「………ふーん。つまり、追跡機能が付けば?」
「それは………やめて欲しいかな?」
「…………。」
狼狽えるように笑うアエラをにやりと見やり。
「やめてあげないって言ったら?」
「っ………困るかなぁ!!」
青色がより濃い花のような形の先の尖ったピンを投げる。
十センチ代のそれはアエラの方に向かって飛び、
避けようとした後を追う。
見事な魔法に観客席から歓声が上がる。
いつも戦いにおいて動かないアエラが、今回はクマたちの力を借りながら、その攻撃を素早く避けていたことも、あるだろう。
それでも、どうしてもやり過ごしきれないと踏んだのか、アエラは息を止め、思いっきり振り返る。
追ってきていた花の方へ。
「っ………クマ!!」
「なっ?!腐蝕魔法でクマは悪手では?!」
「分かってた!ソフィアンがだとは思ってなかったけど誰かが絶対腐蝕魔法使ってくる。だから、先手を取れってテオ兄様が言ってたの!」
アエラの前に呼び出されたクマは、大きな口を開ける。
しかし、他のクマと違う。
どこが違うかというと………
口の中が真っ黒い闇だった。
「テオ、そんなことアエラに言ってましたの?」
「ええまあ。アエラは、能力はあるが短絡的で力押し。それではどうしてもいつかボロが出ます。そこで、彼女の力では向き合いない、所謂相性の悪い魔法を教え込んでおきました。」
「………あなた、アエラの軍師にでもなったらどうかしら?」
「妹か弟が軍師は聞きますが、兄が妹の、ですか?」
「ええ、そうすれば我が家は安泰よ。」
「あー、それは、無理ですねえ。」
困ったようにテオは頭を抱える。
その様子に、母もはっとする。
「アエラは、自分の家のためでも、楽しくないことに魔法は使わない。」
「そうでした。」
二人の、いや、隣で聞き耳を立てていた父親と付き添いの従者達の慢性的なため息が歓声に混じった。




