白昼夢の実現
ビクビク震えながら入ってきたアエラの前には、
「アエラ。そんなに怯えないでください。」
「怖い……顔が怖い……」
「え~?」
頬を触って笑うソフィアン。
その顔は笑っていたが……
影が、いつも以上濃い。
「そ、ソフィアン?漏れてるから、何か、闇魔法的な何かが漏れてるから。」
「あらいやだわ。」
「こっわ……え?怖すぎひん?何?魔王なの?」
「……笑えない冗談よ。アエラ。」
「笑ってる。顔が笑ってるから、目は笑ってないけど。」
怖々と話すアエラの怯えように客席はざわざわとざわめいた。
あの王子、お姫様相手に何の躊躇もなくタメ口を聞く、頭のイカレタ女で有名なアエラにも、怖いものがあったのか!?
これは珍しい。
彼女もまた人の子である証拠だ!
と、とてつもない話が展開されており、客席の両親は頭を抱えている。
気を遠くしている母にテオドールが水を渡している。
「えー、よろしいでしょうか?」
あまりにも異様な雰囲気の二人に、試合開始の合図を出来ないでいた生徒会の役員が話し掛ける。
勿論、と、ソフィアン。
アエラも怖々頷いた。
「では…………」
生徒が手を天に伸ばす。
「始め!」
声とともに勢いよく振り下ろした。
「テンシャー。」
「ちょっ、それ、駄目だからぁ!!」
合図とともにソフィアンが出した魔法にアエラは悲鳴を上げた。
彼女にしては逃げ腰の姿勢で、
ソフィアンのだした細かい青い花?みたいな奴を避けている。
量が量だけに、避けきれないものもあり、そう言うのは、アエラのドレスを破っていくが。
「ソフィアン!」
「アエラ。すぐにでも魔法で相殺出来るのでしょう。」
「簡単に言うなぁ!!」
身に纏わせている人形達を一旦散開させると。
「クマ!呑み込め!」
『え~。くまてきにはぁ、しゃけいがいたべちゃくなぁい。』
「後で川で鮭釣ってくるから、我慢して!」
「人形って鮭食べるのですか?」
「クマだから、ねぇ!」
アエラの声に反応し、一回り、二回り、さらにはアエラ達を圧倒し、コート一杯に広がるほどの大きさになったクマは、
『あぁ~む!』
「ちっ、食べますか。」
中から壊されることなく花々を食べていく。
そして……
『……こりぇ、あんまり美味しくないのじゃ。』
「でしょうねえ。」
ごめんね。と、頭の上にのったアエラがクマちゃんを一度ぽんと叩く。
もう一度クマは口を開けると、
『………おぇ。』
「擬音……可愛くない!」
青かった花を赤い鳥にして吐き出した。
その鳥は二、三度クマの周りを回ると、客席の上を通って、やがて消えた。
魔法で出来た鳥の飛行に、観客席は沸く。
「毎年、アエラの試合は客が多い。」
「このため……ですかね。」
テオドールと、母親は静かにため息をついた。
エンターテイナーとしては一流だろう。
だが、そこに自分たちを巻き込まないで欲しい。
お願いだから。
「アエラ!毎年変わり種を用意してますわね。流石です。」
「ソフィアン達も、一年、否、半年でよくまあ作るよ。」
「あなたを倒すのに必死ですもの。」
「うへ……」
あからさまに嫌そうな顔を晒すアエラは、それでも、ソフィアンの次の動作に目を光らせる。
「次は、何する気?」
「毎回、あなたのパフォーマンスに使われてもう懲り懲りですもの。」
「……?」
「クマ達にだって止められない攻撃を………」
「!?」
なっ……と、小さく声を上げると、アエラはいつもの笑いを消して、真剣に驚いていた。
「腐蝕魔法!?」
「現代魔法に書き換えるの、大変でしたのよ?」
「優等生が!なんで知ってるのよ。」
ひぃ!と、アエラはクマたちを遠ざける。
その反応にソフィアンはにっこり笑う。
「古代魔法は野蛮だから、優等生には好まれないと?あなたを倒すためなら、優等生なんてやめますわ。」
「え……友達?だよねえ~」
「…………………ええ。そうですよ?」
「え?怖いよ。間が。」
笑い顔が恐ろしい。
天使怖いから帰りたいレベルだよ?
ソフィアンちゃんは数少ない可愛いキャラだったのになぜ?!
まあ、良いですけどね。
兎も角、隠し技に顔面蒼白の相手を見て、ソフィアンは楽しげに笑った。
「いきますわよ?」
「ソフィアン……恐ろしい子!」




