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2 学校も楽じゃない。

この世界には桜はないらしい。

と言うか、この時期に桜は咲かないが。

今は、秋である。

秋である。


そう、物語は今日この日から、始まる。

この物語の主人公にして、わざわざ送り込んだ神ですら手を焼くこの三人揃う今年におきることになる。


すでに高等部一年になった泰治ことテオドール。

中等部最高学年の四年になった長女は愛花ことアエラ。

そして、中等部一年に入学した末っ子鈴菜ことロエル。

この三人は、入学式も終わり、実験棟の中庭で落ち合っていた。

「レナ。やっときたか、遅いぞ。」

「うっさい泰治。」

「いや、ここではテオドールお兄さまだ。」

「うげ、反吐が出るよ。」

さも嫌そうに舌を出すロエルの頭をアエラがぽんと叩く。

「二人ともぉ、喧嘩は駄目だよ!えっと……レイラちゃん?」

「ロエル!妹の名前くらい覚えてよ。」

「ごめんごめん。向こうの名前呼んでる方が長いから。はい、入学祝い。」

アエラから差し出された花束をすごすごと受け取る。

花と一緒にクマのお人形が包まれていた。

「凄っ………これ、お姉ちゃんが?」

「そうだぞ~。凄いだろぉ~。褒めろ讃えろ!」

えっへんと無い胸を張るアエラ。

それを見てロエルは肩に手を置いて首を振った。

そして絞り出すように一言……

「残念。本当に残念だ。これで変人じゃ無かったらきっとモテていたのに。誠に遺憾である。」

「ちょっ、ひど!」

「いいえ、酷くない。私は校舎に入った瞬間。注目された、なぜか分かるか?」

「え……とぉ、可愛いから?」

こてんと首をかしげる姉の頭を妹は思いきり叩いた。

こいつ……魔力籠めて肉体強化してやがる……。と長男テオドールは妹の成長に息を吞む。


「違うわ!この馬鹿がぁ!お前が、その無駄な魔法みたいな奴を使って私達の周りにクマなど浮かせるからだ!父さんと母さんはその場でぶっ倒れたんだぞ!」


「俺も呼び出された。校舎違うのに。」

心底面倒くさそうに兄妹に詰め寄られて、アエラは苦笑いを溢す。

「あ、あはは、私はほら、役員とかでいなかったし。えっと………ごめんね?」

「ごめんで済まされるなら?」

「警察は入らないですね。はい、すみません。心の底から謝罪の意を込めて頭を垂れます!」

余りの妹の目つきの冷たさに、ようやく、事の重大さに気付いたのか、全力で頭を下げるアエラ。周りのクマたちも一緒に頭を下げていた。

「それでいいと思って………」

それでも治まらない怒りを、ぶつけようと腕を振り上げたとき、ロエルの制服の袖がクイと引かれた。

「ん?」

見ると、花束の中からクマの人形が手を伸ばし、此方を見上げている。

止めろと訴えているのか。

「う………。」

そのサ雑念の交ざり気のない瞳による制しに思わず出した手を引っ込める。

そして深いため息をついた。

「はぁー、もういいよ。次やったら殺す。」

「え~。次やらないとは約束できなぁい。」

「お前、まじ殺すよ?」


その時、校舎の方から笑い声が聞こえる。

振り向いた三人を眺めていたのは、金髪の青年だった。

「お、モリー。」

「やあ、テオ。それにアエラも。そちら、新しく入学した妹さん?」

「そうだよぉ~。あのね、ロエルって言うの。うちの次女で末っ子の。」

「へぇ、よろしく。」

手を振ってくるモリーと呼ばれた男にロエルは軽く腰を落として挨拶する。

「ロエル、彼はモルガー・シュレガー。兄さんの友達。」

「よろしく、お願いします。先輩。」

もう一回ひらひらと手を振ると、くるっと此方に背を向けて、何を考えたのが大声で叫んだ。


「おーい!シルバール家の変人三兄妹が揃ったぞ!!」


「なっ!」

「やっぱあいつ変な奴だな。」

「いや、今のは私が操りました。」

「まじで。」

「はい。」

「お前、多分後で恐ろしい目に遭うよ。」

「そうですね。逃げる支度しないとぉ。」

ぼそぼそと話していたら、モルガーが窓枠にかじりつく勢いで此方に叫ぶ。


「アエラ!後で憶えておけよ!一生その力を使えないようにしてやる!」


顔を真っ赤にして怒っていたモルガーに末の妹は不憫そうな顔をする。

「うっわぁ~。お姉ちゃんどうするの?あの人多分めっちゃ怒ってるよ?」

「ヤバいねぇ。あの人一応去年の中等部生徒会長なんだよね。」

「兄ちゃん。副会長だったんだぞ。」

「どうすんだよ。会長って事は、すごいってことでしょ。」

「うん。あの人めっちゃ頭良い。んで、スポーツ超出来る。でも、魔法なら負けない。」

「はいはい。そのイカレタ使い方しか出来ない魔法、才能だけはあるんだから真面目に伸ばそうよ。」

「昔も言った。私は……」

ここで決めポーズ。


「面白いこと以外に、力は使わない。」


分かりやすく頭を抱えるロエル。そして、その方にポンと手を乗せるテオドール。

「そうだった。こいつ馬鹿だった。」

「俺は去年一日たりともそのことを忘れなかった。そして、早く元の世界に戻ってゲームしたい。」

こいつもこいつだな。

いいのかこれで。


「あははは!凄かったですわねぇ。ごきげんようお三方。」

「マリアナさん。そんなに笑ったら失礼ですよ。ふふっ、」

次に声をかけてきたのは、茶髪と銀髪の少女たちだった。

「あ~。マリアナちゃんと………あ、待って、ここまででてる。」

「ソフィアンです。そろそろ憶えてください。」

もぉ~、と可愛らしく怒ってみせるソフィアンにアエラは頭を撫でて、笑った。

「あっ、ごめんごめん。こっちの私の妹ね。えっと……レイラ?」

「違う。ロエル。妹の名前まで間違えるなって、このやりとり二回目だよ?」

流石に他人の前で姉を殴るわけにもいかず、ふるふると震えるだけで我慢した。

しかし、その汚物を見るような細められた目を見て、窓から覗く二人はひぇっと声を出す。

睨まれてるアエラはさぞかし死の恐怖を感じて……

「ロエル。名前が憶えずらいから、改名して。」

あ……感じてないですね。

分かりました。

凍てつく空気を察して、少女二人はその場を一刻も早く離れることにした。

「あ、では、アエラ。また教室で。行きましょうソフィアン。」

「え、ええ。」

「また~。」


手を振るアエラの手首をロエルが捕まえる。

「あ、あのぉ……ロエルちゃん?腕痛いよ。」

「アエラ。これはお前が悪い。」

「え?テオドールお兄さままで。何が?」

「分からないなら、分からせる必要がありそうね………。」

「えっ、え~。お姉ちゃん。分かりたくないかも……」

「問答無用………。次やったら殺すっていったよ。」

「それは別の話でしょ……。」


青ざめたアエラに一歩一歩と近付いていくロエル。

その日中庭に響いた悲鳴で人々は二つのことを知った。

一つやっと問題児を躾けられる人材が入ったこと。

もう一つ、シルバール家の三番目は絶対に怒らせないほうが良いこと。




***

こんにちは、まりりあです。

カタカナの名前が覚えられない。

創作活動始めて初めてノートにメモを取りました。


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