勝つということ
勝敗は、時として判断することが難しく。
最後まで立っていた者、最後までぶつかる姿勢を崩さなかった者が勝ちとは限らない。
それは、その勝負において、なにを成し遂げようとしているか、なにゆえたたかっているかに関わることであるが。
少なくとも彼女の今回の戦いにおいて、
相手を力で押さえつけることはさほど意味がなかった。
出来れば重畳。
出来なくてもそれで良い。
ただ、
一分でも一秒でも早く、この戦いを切り上げる。
そのことに本気になっていた。
「………ぶつぶつ……」
男は、驚いていたが、別段、焦ってはいなかった。
男女の戦い。
槍術や剣術、格闘術のトーナメントだと、男女は別々にされている。
体力もリーチも違いすぎるから、わざを試し、力を見せ合うこの戦いの目的にそぐわないためである。
しかし、魔法的ななにかは違う。
男女の性別関係なく、秘めたる魔力的なあれをどれだけ駆使できるか。
いわば、魔法的なあれは鋏。
どう使うかでどうなるかは変わる。
誰でも使える平等な力なため、女性にして、男性より使いこなし、自分のうん十倍も良い体格の相手を赤子の手を捻るように投げ捨てる者はいる。
しかし、魔法はやはり力であり、瞬発力は平等でも、持久力だと少しばかり差が出る。
そこを狙うのが定石、
だから、男は、身構えることもなく、相手側が攻撃を仕掛けてくるのを待っていた。
しかし、どうしたことか。
相手の女は攻撃をするどころか、先ほどからなにかをぶつぶつと呟いたまま俯いている。
この異様な空気には、観客も戸惑いの声を上げている。
やっちゃえ!と言ってくる同級生。
でも、近付けなかった。
これは……
「呪文の詠唱か!!」
殆どの場合、詠唱は簡略化され、一言二言口に出せば、とっとと使える者が殆どである。
しかし、古代に使われていたものや、あまり有名でないものは、簡略化されることなく、元の形としてのこっている。
しかし、そんなマイナーなもの、学校では最早教えない。
教科書や参考書の枠外にも出てこない。
つまり、
男にとってそれは、初めて聞いた呪文だった。
いつ発動するかも分からない呪文の中に突っ走っていくのは愚行。
どこから引っ張り出してきた古代魔法か、禁忌魔法か知らないが、近付けないならすることはただ一つ。
遠距離魔法で片を付ける。
「炎を……」
一言、
両の手に現れた炎は1番得意な魔法故、息をするように操れる。
思いっきり、振りかぶり……
「いっけぇ!!」
怒声とともに投擲した。
魔法の詠唱中の彼女はシールドすら張れない。
一瞬後には黒焦げた服で立っている彼女の姿を拝めるはずだった。
だった………
「………かしこ……りょう!!」
奇しくも、最悪のタイミングで詠唱が終わったのである。
まるで計ったかのように。
目を見開いた。
そこにいた者の漏れなく全てが天井を覆い尽くすくらいの大きな化け物の現れに驚き、畏れ、戦いていた。
「ね……こ……?」
青い光で形成された大きなネコ型の怪士は人々を見下ろし、そのざらざらした舌で、放たれた炎を文字通り食い止めた。
まんざらでもないように舌で顔をペロリと舐める。
『ふぅぎゃにゃあああ』
地鳴りのような鳴き声を上げ、しゅるしゅると小さくなっていき、やがて……ぱんっと消えた。
「は……はは………」
相手の男は戦慄していた。
これは……もう……
ふと、前を見ると、女がまたなにかをブツブツと言っている。
今度は虎がでるか蛇が出るか。
とにかく、もう戦意はなくなっていた。
第一試合の瞬殺女といい、こいつといい、
どうしてこうも女は……
「おっかねえ……」
顔面蒼白で手に握った青い石を放り投げた。
ピピー!!
と、笛の音が鳴る。
試合終了の合図だ。
相手の戦意喪失による終了。
それは……マリアナの待ち望んだ合図。
その音が耳に届いた瞬間駆けだしていた。
上から聞こえる父と母の声。
おそらく来ていたのだろう。
それに、返すのも出来ないくらい、急いでいた。
急いでその場から離れ、どこかへ行ったソフィアンを追った。
「……で、なにしてますの?」
「はい。店番です。」
「あなたのお店?」
「いえ、アエラさんがやっていたのですが、どこかへ行ってしまって。」
「やっぱり……」
大繁盛のレモネード屋の前、
二人の少女がため息をついた。
共通の友達の何とも言えないはた迷惑な部分を共感して。
「友達は、選んだほうが良いかもしれませんよ?」
「そうですね。そう思いました。」
***
車酔いって恐ろしいですね。
どうも、まりりあです。
この前、車の中で本を読んでいたら、恐ろしく酔ってしまい、半日気分が最悪でした。
皆さんは気をつけてください。
それでは、また次回。




