1 うまれ~てぇ~は~じめ~てぇ~
大きな木が庭に生えていた。
その下には三人の少年少女。
澄んだ声で三人合唱をしていた。
「うまれ~てぇ~は~じめ~てぇ~♪」
「いせかい~に~きぃてぇ~♪」
「うまれ~てぇ~は~じめ~てぇ~♪」
「ぜつぼぉ~す~するのぉ~♪」
可愛らしいはずの空間も、その歌詞と三人の様子に雰囲気ぶち壊されていました。
折り重なるように倒れ込んでいます。
「れなぁ~。重たいよお~。私のお腹で寝ないでぇ~。」
「アカ。お前も俺の俺の足枕にするな。」
想像しにくいだろう、とりあえず、互いが互いを枕にしていると言うことを分かっていただければそれでいい。
三人とも美しい黒髪に黒い目。目鼻立ちも体型も整った所謂美男美女ではあったのだが、
「おい、まじいい加減にしろよこのクソども、重いっつってんだよ。」
「泰治うるさぁ~い!」
「レナに同意~。」
フリルや上質の生地で仕立てられた服を土で汚し、それと同じくらい下品な口調で言い合う。
「お前等の方がうるさいだろ!」
「うっさいよクソ泰治、黙ってろ!」
「寝不足で頭痛いの!止めてぇ~」
この光景には彼等の両親も、
「………………。ええ…………」
「旦那様。私たち、何所で教育間違えましたの?」
この絶望度である。
幼いころは元気で仲のよい兄妹だと、喜んでいたがここまでこうだと流石に………。
特に、長男の泰治(この世界ではテオドールという名だが)はこの家シルバール家の跡継ぎの上、あと一カ月後には帝都にある貴族の子息などが集められ教育を受ける学園。
天下に名高い施設、学園にいれられる。
そこでも“ああ”ならこの家は終わりだ。と、両親は頭を抱えていた。
そんな親の気持ちも知らず、三人の兄妹は仲良くお人形遊びだ。
「ほ~ら、泰治。タイシックマが踊ってるぞ。」
『クマ~おどるのたのしぃ~。』
鈴菜がくまの人形の両手を持ってバタバタと動かし、
愛花が裏声で声をつける。
これを嬉しそうな顔で見ているのだから、
親は大きくため息をついた。
そうして笑ってるのは元々整った顔立ちのため、なかなか絵になるのだが、
それでいいのか!わが息子よ!
いや、妹たちの可愛らしい行動に笑ってあげるのはいいが、どう見てもそのクマに笑ってるだろ。
それ、クマだぞ。人形の。
何でそんな愛しい娘を見つけたみたいな顔するんだよ!
どっかの麗しい貴族の娘との出会いにとっておけよ!
妹二人もだ。
タイプは違えど、愛花(此方ではアエラ)は女性らしくお淑やかに、鈴菜(此方ではロエル)は可愛らしく見えるのだが。それは、黙っていればの話であって、口を開いた瞬間その印象は爆発的に崩壊することとなる。
ほんとに、黙っててくれないかと、深夜寝静まったころ、二人の寝室に針と糸を持って母親が忍び込んだのはいい思い出である。
結局オールで読書するという目標を立て、それを実行していた愛花にバッチリ止められたが。
「はぁ……なあ、俺、学校行ったら、このクマとも会えなくなるのか?」
「だろうねぇ。」
「いいじゃん、学校。本は読み放題だしぃ~。」
「お姉ちゃん。学校は勉強するところだよ。」
「前言撤回。学校とかって言う悪魔の巣窟今から壊してくるわ。」
「何で?いいじゃん勉強。」
「おい、こいつ変なこといってるぞ。」
「ええ。我が妹ながら恐ろしい。」
「泰治までいってる……。」
メイドたちが余りのいたたまれなさに目線を逸らす。
両親は今にも泣き出しそうだ。
両親の給仕をしていたメイドは「お願い、お願いだから、早く気付いて、両親の異変に!!」と心の中に三人へ祈らずにはいられなかった。
『でもだいしょうぶなにょでしゅ!おまえが悲しむと思ってクマはとくべちゅに分身出来るようになったのじゃ!!』
長女、愛花はポケットの中から人形を取り出すと、腕を大きく掲げて、クマを太陽にかざした。
「おお~。」
「やるなクマ。」
「し~か~も~ただ増えただけじゃなくてこの二体は魔法的な何かにより、双方向から通信可能!」
「まじか、すっげえな。」
「その力をもっと生かせれば、お姉ちゃんは成功するとおもう。」
冷静な次女のツッコミに見ていた人々は頷いた。
母親に至ってはやっと出てきたまともな台詞に涙している。
「え~。面白いこと以外に私は一ミリも動きたくない!働きたくないでござる!」
あ……………
奥さん倒れた。
大丈夫か?
「相変わらずだな、愛花。」
「お姉ちゃんって残念美人。貧乳だし。」
「ふっ、貧乳はステータスだ!希少価値だ!」
あ……………旦那も倒れそうだぞ。
おい、バカ兄妹。
そろっとお前等の両親の状況に気付け。
「あ、あの、」
「ん?」
「メルルだぁ~。」
「どうしたの?」
しびれを切らしたメイド長が恐る恐る話しかける。
「あの、そろそろ、旦那様と奥様が。」
「母さんと父さんが?」
『うにゅ?何やら具合が悪るそうでごじゃるぅ~!』
「大変!」
ようやく気付いて駆け寄ろうとするも、何、三人折り重なっていたため、もたもたする。
ようやく、両親の元にやってくる。
末っ子の次女は母のこしに抱きつき、長女は父の顔をクマの人形とともに覗く。
「父さん、母さん。大丈夫ですか?」
「「…………。」」
「……返事がないただの屍のようだ。」
「ふっ………泰治、止めてよぉ~」
「くはっ、駄目だ、面白い。」
嫌面白くねぇよ、とは、メイドたちの総意である。
「………この、」
「どうしたの。お父様?」
「馬鹿どもがぁ!!!」
「なんでー?」
「何怒ってるのぉ?クマいるよ?」
「ちょっ、おこなの?意味分かんない!」
顔を真っ赤にして怒りだした父親に、三人の兄妹は初めて自分たちが何かしでかしたのだと自覚した。
***
はい。まりりあです。
世界観的にフランスとかのお貴族さまだといいなぁ~。と思って書いてます。
愉快な馬鹿どもの学校生活を書きます。
二重カッコ『←これの中はクマの台詞を代弁する台詞ですよ。つまり裏声
これだけ分かれば大丈夫!
みなさん、楽しんでいってね?




