レッツ マジカルクッキング☆
あー、
こんにちは。天使です。
チャーハンにケチャップかけたくなる時ってあるよね。
さて、そんなこんなでお料理回ですよ。
ここは学園の寮の調理場。
寮では、一日二食の食事が提供されているため(朝夜の二食)、調理場はそれなりに大きい。
しかし、学校がお休みな休日。
実家に戻るものや、外食を楽しむものなどいるので、その利用者数は平日に比べて確実に少なかった。
よって、頼めば使わせてくれるのである。
「さあ、始まりましたクッキーング!頑張っていきましょうね、クマちゃん!」
『うむ、がんばるのじぇごじゃる。』
いつもは下ろしている髪を後ろで纏め、クマと自分に同じ柄のエプロンを着けたアエラ。
そして、青い顔をしたシャルロッテが、立っていた。
「あ、アエラさん。ホントにやるのですか?」
「やるよ?何か?」
「いえ、別に……」
『クマもやる気満々なのじゃ!』
アエラは意気揚々と小麦粉の袋を大きな人形に運ばせている。
片やシャルロッテは青息吐息。
今すぐ止めさせたいという思いを隠すことなく表情に浮かべている。
「と、とにかく、何を作るんですか?」
「…………決めてなかった…。」
「……そうですか。」
はい!でました。
あるあるだね、もう。
なーんか、作りたいんだけど、何つくろっかなぁ~。って考え始めて三時間。みたいなね。
ちゃっちゃと本とかネット……は無いのか。
折角だから、寮の先生に聞いたりさ、すれば良いじゃん。
「あ、そうだ、リラちゃんは、何食べたい?」
『………。』
「ありゃ。何も言ってくれない。」
だろうな。
そうだろうな。
だって、腹話術だもんな。
この馬鹿みたいな会話にはシャルロッテも思わず。
「…………。」
唖然である。
可愛い顔の小さいお口を開きっぱなしにして、茫然としている。
まあ、そうなるわな。
アエラと二人きり(クマはいるが。)とか、可哀想。
南無。いや、天使的にはアーメン?
まいっか。
天使は宗派はキリストだけど、個人的には厭離穢土欣求浄土とか言いたいし。
徳川家康好きなんだよね。
つか、この職場天界のくせにブラックだからさ、日本にある、浄土ってとこなら、いいんじゃね?って感じだけど。
話が逸れたな。
そんなこんないってたら、調理室の奥でガッシャーンという音がした。
小麦を運んでたネコの人形が何かにぶつかって大きな音をたてて転んだらしい。
「うわっ、大丈夫?」
「床に鍋が置いてあったのですか?でっかい鍋……と言うより、フライヤー?」
「シャル、これなんに使うの?」
「魚のフライとか、ポテトフライとかに使うのではありませんか?」
「なるほど、油で揚げるのね………ドーナツ作る?」
「ドーナツ。ですか?」
「サーターアンダギー食べたいかも。両方作ろう。」
「サンタ?サンダー?なんでをすかそれ。」
『しぇちゅめいしよう!サーチャーアンジャーギィーちょは…』
「聞きづらいです。」
「では、此方で。」
確かに聞きづらい。そして、指摘されて素直に聞くとは、
今日のアエラは何かが違う!
「サーターアンダギーってさ、黒糖使った丸いドーナツみたいなのじゃね?一回しか食べたことないけど。」
それで作れるの?と、ツッコみたいよね。
そんな顔してるよ、シャルロッテちゃんが。
料理下手ほど冒険したがるらしい。なんなの?ってかおしてるね。
うん。多分大丈夫だよ?
まあ、どうなるか知らないけど。
「ささっ、早速始めましょう。まずは、小麦粉、砂糖、卵、牛乳を~。」
どこからが人形達を連れ出してボールに食材をツッコミ始める。
自分はぐるぐるとボールに突っ込んだ棒をかき回している。
シャルロッテは分かりやすく頭を抱えた。
額を抑えた、の方が良いか?
とにかく、絶望していた。
この先、何が出来上がるのかを憂い。
ここにいなければいけない自分の運命を恨み。
これを食べさせられる人々(きっと自分も含まれているであろう)を哀れんだ。
調理とは、科学である。
特にお菓子作りはバターの量、粉の量一つとってもとの少しの誤差で成功失敗が左右されるまさに科学である。
しかし、このアエラという女ときたら……
「アメリカって国にさ、ドーナツガールズとかっていう人たちが……」
なんて、話ながら調理するもんだから、シャルロッテは気が気でなく。
「は、はい。ええ。そうですね。」
と、生返事。
分かる。
でも、大丈夫だって、多分。
***
こんにちは。
ドーナツ食べたい。ドーナツか、長芋が食べたい。
そんな気分です。