9 三人よれば
木の下に人影があった。
三人の少年少女達。と、クマ。
そう、我らが三兄妹である。
『これは…とんでみょないクマったこちょになりまちた。』
「何が起きたんだよ。マリアナ嬢のことか?エリック真面目に傷付いてたしな。」
「何かあったの?とか、エリックってだれ?」
よく聞き取れてるなとしかいいようがないアエラのクマ言葉から始まった会話はあちこちへと余所見しながら進んでいく。
「何が困った、いや、クマったことかと言いますと、」
「別に言い直さなくても。」
「いや、そこは大切だろ。愛花続けろ。」
「ゲームのイベントが次々と始まっております。このゲームの主題である、王子の婚約者への嫌がらせが……。」
「……ふ~ん。で?」
「それが、俺らになんか関係あるのか?」
アエラの後ろのクマたちが腕をバタバタと振り回す。
それはもう、腕がちぎれそうなほど。
あ……一個とれた。
『ぎぃやあああ!!痛いのじゃあぁ!!』
「うっせぇ!!」
妹の奥義。腹パン。
これらの声に学校の廊下を歩く生徒が皆振り返った。
一年は驚いたように見ているが、その他の生徒はいつものことだと元の行動を戻った。
「う、腕が……クマの、腕が……」
「に、兄さま……クマが、クマがいたがっております。」
「え、まって、私がおかしいの?」
いや、君は正常だよ。
うん。他がおかしいだけ。
「クマああああ!!」
『痛いにょだあああ。うわああ!!』
駄目だこりゃ。
おっかしいなぁ~、ちゃんと選んできたはずなのに。なんでこんなの連れてきたかな。
狂人じゃん。
ちょっ…、怒られる。
いろんなとこから怒られる。
止めてよねぇ、今度月一の視察入るんだから。
大天使長とか、来るんだから。
怒られるじゃん。
「は・な・し・を、戻せ!」
「わ、分かった。分かったから。止めて、静かに拳を握りしめるの止めて!え~こほん、」
「おい、ちょっと待て。クマはどうなる。」
あ~あ、ロエル連れてきてて良かった。
この子のおかげで、話が進みそうだ。
テオ、おい、テオドール。お前、そこに引っかかるなよ。
「大丈夫。後で直しておく。あ~。包帯、包帯巻いておこう。」
アエラはそこら辺の草を何本かむしると、えいっと言った。
手の中にあった青々とした草は、いつの間にか白く細い布になっていた。
「ほい。ロエル、巻いて。」
「え?なんで私?」
「え、元陸上部だしテーピング慣れてるでしょ?」
「やったことないよ。私、怪我とかしなかったし。」
「よし。やれ。」
「ちっ……後で憶えとけよ。」
「ひぇ…、」
さて、と、アエラ。
「話そうか。鈴菜ちゃん、は、知らないと思うけど、マリアナって言う私の友達がいるの。」
「へえ~。」
「んでね、その子、王子の許嫁なの。」
「ほう…未来のファストレディー?」
「第二王子だよ?」
「セ、セカンドレディ?」
「おい愛花。あるのか、そんなの。」
「知らない。ないんじゃない?んで、その子がいじめられてるわけです。」
むふ~と鼻を鳴らすアエラ。
その他二人はコテンと、首をかしげた。
「いや。だからなんのために私達に言うのさ。」
「そうだ。エリックにいえよ。」
「それがねえ、ちょっと困ったことに、頭の良いいじめっ子なのだよ。」
「ふ~ん。どゆこと?」
「つまりだねえ。一見いじめに見えないいじめをしているんだ、この時代だと。」
「……はい?」
二人はコテンと、首をかしげた。
「どういうことだよ。」
「んっとねえ、つまりだねぇ。マリアナはいじめられてるなんて気付いてないわけよ。」
「はあ?そんな馬鹿いるの?」
「知識がないってそう言うことなの。つまりねえ……。」
話し始めた三人を空の上から見下ろす。
なかなか真面目な雰囲気になってきた。
これなら、天使長も許してくれるかな。
常日頃からこうだったら良いのに、と僕は一つため息をついた。
***
こ、こ、こんにちは。
まりりあです。
ク……マが……
(^^)
では、次回。