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2・兄の世話は義妹の義務でしょう!

第2話になりました。

今回は段々と妹の凄さが分かってきます。

 そろそろ、尻が限界だ。


 急に何を言っているんだと呆れられてしまうだろうが、とにかく尻が痺れて仕方が無い。理由はチカの指示通り正座していてかれこれ一時間経つからだ。

 因みにその間俺は動く事を許されず、許してくれない癖に自分は外出して行ってしまったのだ。


 普通正座を長時間保っていると脚が痺れるのだろうが、俺は早も尻の感覚が失われつつあった。そして、微かに尿意を催している。

 このままではマズいと立ち上がろうとしたが、チカが潤んだ(幻覚)愛らしい瞳でお願いしてきたのを思い出し、踏み留まった。もしかしたら我慢してはならないのかも知れないが。


「チカ、何をしに出て行ったんだ。買い物なら長いと思うしな」


 それと言うのも、実は家のすぐ近くにスーパーがあるので時間がかかる事がないからだ。かかるなら学校……いや、今日は日曜だから休日の筈だ。


 学校に行くのにこれで待てと言ったら鬼畜だしな。チカは鬼ではない。


「だが、そろそろ本当に色々ヤバい気が……」


「ただいま! 遅くなってごめんね!」


 帰って来てくれた。これで解いてくれれば俺の尻と息子は無事生還出来る。


 部屋に入って来たチカの右手にはスーパーの袋が握られている。しかも大したサイズのでない小さめのだ。

 それくらいなら、一時間は絶対かからないだろう? 疑問に思い、チカに質問を投げかける。


「チカ、何して来たんだ? 俺そろそろ色々とマズいんだけども」


「お母さん家! そこで野菜貰って来ちゃった、今日ご飯作るね」


 チカは俺のスプラッシュサインを笑顔でスルーし、白菜を見せつけた。母さん家に行ったならむしろ後一時間はかかるだろう。

 理由を聞く程に知る程に時間が全く分からなくなってくる。どうやった?


「行きは電車で、帰りはスタミナつける為に走った! 流石に遅くなったけど」


「走った!? どんだけ距離あると思ってるんだ!? スタミナもう充分じゃないか!? 随分保ってるけど」


「お金なるべく取っておかないとだもんね。道覚えたから次からは走ってく!」


「不安だからやめてくれ!」


 俺の家から母さんの家までは電車で三十分、徒歩で二時間近くかかるのに、走った? しかもそれで往復一時間って休んでなくない? スタミナ切れてなくない? チカさん息切れしてないよ。


 もし、それがスタミナではなくバイタリティによる無理矢理なものだとしたら、臓器に負担がかかって最悪倒れてしまう。ここは、止めなきゃな。兄として!


 未だに正座を解いていいとは言われてない為、バカ真面目に俺はそのままでまず咳払いをした。


「チカ、お前の身体が心配だから走って行くのはやめてくれ。交通費くらいなんてことないから、な?」


 仕事もしない俺が何を言うか、と思われても仕方がないが、とにかく無理はさせられない。

 大人として、いや義兄としてチカの面倒を見なくては。


「お兄ちゃん、私の心配してくれるんだ? 嬉しい! 大好き!」


 口を両手で覆いながら感動したチカは抱きつき、二つの柔らかいものを腕に押し付けてきた。意外とふっくらしてるなぁなんて義妹に抱いてはいけない邪な感情を目を逸らして排除する。


 母なる温もりで包まれた俺の右腕はこれ以上なく癒されている様に脱力している。情けない。


 だがチカ、お前は俺の質問に答えていないぞ。


「チカ、走らないか? ちゃんと電車使うか?」


「え、ああぅ……うん、使う!」


「よし、良い子だ」


「うん! 良い子! 私良い子だよね!」


 元気よく笑顔を咲かし、直後に後方を向いたチカは何やらブツブツ呪文を唱えている。いや、そう見えるだけだ。


 それにしてもこの娘は可愛いなぁ。愛らしいなぁ。俺の為にバイトもしていて家事も全般自主的に行ってくれるし何より俺を一番に考えてくれている。

 だがちょっと苦労をかけ過ぎだな。家事の一つでも覚えるとするか。


「あ、良いの良いの。お兄ちゃんはゆっくりしてて、私が全部やるから!」


 両手をガッツポーズの様に曲げてウインクをするチカに、少しだけ不安になった。

 こんな小さな身体で人一倍働いてしまうと病気になってしまうんじゃないだろうか。俺の為にというのは有難いが、無理はして欲しくない。


 何か手伝えないかと辺りを見渡し、チカが持って帰って来たビニール袋に目がいった。二、三袋あるが結構力持ちだなぁ。


「チカ、母さんから貰って来たのは何がある? 冷蔵庫にしまうくらいならやらせてくれ」


「うーん、いいの? えっとね、野菜が一杯入ってるよ。キャベツにニンジンにジャガイモに、とか。あとはお米が一俵にお水が二本!」


「重くなかったんですか!?」


「重く……かったよ?」


「だよな、流石に重いよな」


 重くなかったら腕力が俺より遥かに高く、いや高いなんてものじゃないぞ。しかも……ん? それを走って持って帰って来たのか? え、嘘でしょ?


 俺は三つの袋を一気に持ち上げてみた。異常だ。尋常じゃないぞこの重さ。

 流石に十六の女子高生が簡単に持ち上げ、走り続けて帰って来れる重量じゃない。チカ、本当にこれ持って来たのか?


 汗一つ掻いている様にも見えない清々しい面持ちの少女は、袋の一つを軽く持ち上げ台所に立った。料理を作り始めるそうだ。

 今頃気がついたが、俺普通に立ってるし足痺れてるんだった。


「くはぁっ」


「え、あれ、お兄ちゃん!?」


 気付かない内は何とか無事だったが、思い出した途端にその場に崩れ落ちた。そして先程まで記憶の彼方まで吹き飛んでいた尿意が急激に襲いかかって来る。

 マシンガンVS全裸の丸腰男、という状況だろうか。とにかくこのままではスプラッシュアウトしてしまう。


 何だと思ったのか、チカが体温計を手に取り風の様な速度で駆けつけて来た。フリル付きのスカートがひらりと翻り青横縞のパンツが露わになる。気づいてないけど。


「お兄ちゃんどうしたの!? 風邪!? お腹痛い!? 大丈夫!? 今お布団準備するから待ってて……」


「違う! 大丈夫だ! 俺は今足が痺れているだけなんだ。だが一つだけ残念なお知らせがある」


「な、何? 怖いこと言わないでね?」


「トイレ行きたい」


「あ! おトイレ、そっかどうしよう。歩けないんだもんね? 私がおぶって行く訳にもいかないもんね」


「あはは、流石に重いだろう」


「え?」


「え?」


 的外れだが直ぐに心配し駆けつけてくれる。ポンコツ可愛いってところだな。いい。

 きょとんとしているが、その小さな身体では俺を運ぶ事は不可能だと思うぞ? 潰れちゃうぞ?


 例え何かの力が働いて袋三つ軽々と持ち運べたとしても、俺は無理だと思うからな。


 チカは閃いた様に目を見開き、ドヤ顔を決めたまま冷蔵庫に向かった。そして何故か空のペットボトルを手にして──待てよ、まさかとは思うが、やめるんだチカ。


「お兄ちゃん、私、私が()()からこれに、ね?」


 掴むって何をだ。何でだ。そのペットボトルに何をどうしろと言ってるんだ? チカ、よく漫画とかで見るがそれはやらない方が互いの為だぞ。やめてくれ。


 紅潮した頬を隠す様に腕を口元に当てるチカは、うつ伏せに転がる俺の尻に手を乗せた。

 チカダメだ。ダメだぞ。それだけはお兄ちゃん許せませんからね。やめてください!


「お兄ちゃん、行くよ……」


「行かない行かない俺は何処にも行かない! ここで俺は真の星に成るのだ!」


「お、お兄ちゃん?」


 何を言っているんだろうなと正直自分で引いたが、チカを集中させてはダメだ。気を逸らしてその行為だけは防がなければ。


 俺は足の痺れから解放されようと力を抜き、でもそれだとあっちの方がまずいので股間にだけ力を込めた。

 そろそろ脚が大丈夫そうだと両手をつき、上半身を起こす。


「あ、お兄ちゃん大丈夫なの?」


「大丈夫だ。早くとぉぅっ、トイレにい、行ってくる」


「う、うん。ついて行こうか?」


「大丈夫だ」


 漏れそうな訳ではない。完璧に痺れが取れた訳じゃない為歩く度苦痛なんだ。下手したら漏れるなこれ。


 大丈夫だと言ったのについて支えてくれるチカは少しだけ顔が赤い。照れるくらいならやらなきゃいいのにな。いや平然とやられても嫌だが。


 何にせよ、これで色々なピンチを乗り切った訳だ。今は開放感に浸ろう。



 ──料理を始めたチカのエプロン姿を花見気分で眺め、ふと残り二つのビニール袋が視界に入った。そうだ、冷蔵庫にしまう物しまわないとな。


「チカ、冷蔵庫に入れとくぞ」


「あ、うんありがとお兄ちゃん。ごめんね」


「いや、これくらい出来なきゃ人としてダメだ」


 キャベツにニンジンにジャガイモ……本当にこんな野菜ばかりなんだな。実家は農家ではない筈なんだけどな、何故野菜ばかり。

 水二つって、二リットルサイズの物だったのか。本当によく持てたなチカは。


 水を入れ終えても、袋の中に何かが残っているのが見えた。赤色の派手な花柄の財布だった。母さんのではない、もしやチカのか? 野菜を貰いに行ったのに何故財布?


「ん、何か落ちたな」


 ニンジンを取り出そうと一度財布を出したら、何かがするりと抜け落ちた。何だろう。そこそこ小さくて銀色の四角形で、0.02ミリと表記されている。

 円状に盛り上がっている──待て、これってもしかして「コ」がつくアレじゃないか?


「わああああ!!」


「おわっ! び、ビックリした」


 俺が拾ったら叫び声を上げて奪い取ったチカは、今にも消えて失くなりそうな程縮こまっている。

 この反応を見る限り、ソレである事は間違いないのではないだろうか。避妊具と呼ばれる物じゃないだろうか。そして何故そんな物を?


 可愛い妹がそんな物隠し持っているとなると、不安だぞ。お兄ちゃんは不安だ。誰とやる気だ。


「チカ、それは……」


 俺が確認の為に話しかけると、チカはザリガニの様に飛び逃げた。こっちが驚くだろう。


「これは、その、あの……念の為、だから」


 湯気が出そうな程真っ赤に染まったチカは、ソレを左ポケットに仕舞った。見つかっても尚その場で隠すんだな。


 それと、「念の為」とはどういうことなのかな。他の誰かとやりたい訳ではなさそうだし、もしかしたら俺? なんてな。はは。

 いかんいかん。こんなこと考えていたら良い兄とは呼ばれなくなってしまうな。きちんとしなきゃ。


「そうだお兄ちゃん! 何かやってほしいことない!? 何でも良いよ!」


「え、あ、まずは料理に集中してくれ」


「ああ! そ、そうだったねごめん! 終わったら何か聞くから!」


「あ、ああ」


 話題を逸らしたいのか口止めの為に何か恩を売りたいのかは知らないけど、テンパるとポンコツになるのか。覚えておこう。

 別に口止めとかしなくても誰にも言やしないんだけどなぁ。言う機会無いし。


 無垢な妹といちゃいちゃってのが夢だったけど、既に興味を持っている義妹との緊張感あるいちゃいちゃも良いかも知れないな。まぁ出来るとは思わないでおくが。


 意外だったなぁ。容姿は清楚で大人しめな美少女なのに、内側はおませさんだとは。

 これから色んな事を教えてく日々が楽しみだ。俺は変態だな。兄として失格だ誰か殴ってくれ。


「お兄ちゃんは座ってていいよ! 私が全部やるから!」


「それは流石に悪いだろ。俺も何か手伝うよ」


 手伝うというかその前にやるべきなのは俺なんだからね。


「ううん。お兄ちゃんのお世話は妹の義務みたいなものでしょ? 全然遠慮しなくていいんだよっ」


「そ、そうなのか? まあ、助かるけど無茶するなよ?」


「うんっ。心配してくれてありがとう!」


 チカは美少女。もうこれは何度も言っているから分かるだろう。

 顔は整っているし、肌は色白で透明感があるし、さらさらで触り心地も良い鮮やかな黒の髪はいい匂いだってする。


 顔だけが完璧な訳じゃない。細い腕に小さな手は愛らしく、それでいて絶妙に膨らんだ胸、括れも綺麗に出来ている。適度な肉付きが施された脚もまた味わい深いものに──俺は変態なんだな。理解した。


「あ! お兄ちゃん大変!」


 野菜炒めを作っている途中のチカが急に声を上げた。結構ビックリしたぞ。


「どうした?」


「まだお風呂掃除してないよ〜!」


「まだ時間ある! 夕方だ! それとも俺がやって来ようか?」


「ええ、悪いよ。そうだお兄ちゃん、時間無かったら一緒に入ろっか?」


「な、何を言ってんだ。流石に高校生と入る訳にはいかないだろ」


「えー、兄妹なのに?」


「義理のな」


 義理とか何とか関係無く、それは色々アブナイだろ。女子高生と二人きりで生活してるのも犯罪って言われそうなのに風呂まで入ったらマズいだろ。

 だが、入りたいかどうか問われたら勿論入りたい。義理だとしても妹と風呂に入れたらさぞかし楽しいだろうしな。


 一緒に入ったら色々とな、何か、アレだ。色々ヤバい気がするから我慢するぞ。俺は大人だ。兄なんだ。

 妹の裸を見て興奮してしまう姿を見られたらもう恥ずかしくて生きていけないだろう。更に引き篭もってしまう。


「私は一緒に入りたいんだけどなぁ」


「俺が理性を抑えているんだ、やめなさい。やめとこう、な?」


「はーい。いつかは入ろうね」


「あ、ああ……?」


 いや待て、いつかの方がダメだろう。更に成長したらその分理性が抑えられなくなってしまうだろう。ダメだそれは。

 天然なのか、策士なのか、愛情故かこの誘惑に耐え続けなければ。俺とこの娘はもう兄妹なんだ。異性としては見てはいけない。


「ん? まだ袋に。お菓子でも貰ったのか?」


 俺は三つ目の袋に四角いケースを発見し、取り出した。


「あ、そ、それ……! お兄ちゃんダメ──」


「……お前何個買ってるの?」


「あうぅ……」


 チカが倒れてしまったので料理を代わりに作ることにした。

 可愛いから良いんだが、結構ポンコツだよな。見られたくない物は先に退かしておくと良いだろ。

 買ってる物に因ってはこっちが恥ずかしいからな。


 にしても、0.02ミリか。薄いな。

兄貴、変態でござんす。


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