別次元の強さ
総帥が刀を振り抜いたその先で、なにが起こったのか一瞬分からなかった。ただ私に見えたのは総帥とユウガの間に不思議な亀裂が走り、空間ごと二分にしたようなそんな現象だけだった。
その一瞬だけ本当に時が止まったように、この場の全員が体を動かせないでいた。
総帥に攻め込むために総帥とユウガの間に割り込んでいたサクラの身体もまた真っ二つに裂けて見えた。
チン・・・
総帥が納刀すると同時に時が動き始めた。
「がはっ・・・!?」
サクラが吹き飛ばされ、仮想の家屋に突っ込んでいった。
「貴様では役不足だ」
総帥はユウガに向けて一歩踏み出した。
「何が起こった」
「明確な敵である貴様に説明する筋合いはないな」
「相変わらず硬ぇ野郎だ」
ユウガの表情にはまだ余裕があり、驚きはしたが対応策があるといった様子だった。ブラフの可能性もあるが、それは無いと見て油断すべきではないだろう。
「では貴様の持つ技を全て見てから教えてやらんでもないぞ」
「ったく、俺の引き出しを全部かわす気でいやがるとは傲慢な奴だ。消し炭にすんぞ」
「望むところだ」
互いに片口角を釣り上げてニヤリと不敵に笑う。その瞬間、二人の姿が消えた。
ギャイイイイイイン!
再び現れた時には数発やり合っていて、単純な力では互角なのか総帥は刀、ユウガは靴の裏でギリギリと硬直状態にあった。
「俺の速さについて来られるとは、まだそれなりに腕は鈍ってないようだな」
「ぬかせ。貴様はまだまだこれで一速だろうが。本気で来ないと叩っ斬られてから言い訳しても遅いぞ」
「ソウジ、お前そんなにお喋りだったかよ」
「・・・」
「フン・・・俺も久々にお前に会えて嬉しいぜソウジ」
「私は二度と会いたくは無かったがな。今の貴様の行動は流石に見逃すわけにはいかぬのでな。ここで死んでもらうぞ」
「やれるもんならやってみな」
再び消えた。色んなところから衝撃音が聞こえるが、その姿を一切捉えることは出来ない。そんな別次元の戦いを彼らは繰り広げているようだった。
今こうして私達が息をしているのも、この状況の中総帥がユウガを抑えてくれているからに他ならなかった。真後ろで衝撃音が響いたりしていて正直生きた心地がしないというのが本音だが。
ユウガは強い。多分今まで出会った中で最強だろう。だがそれはこちらの総帥も同じだ。怪物クラスの彼らの戦闘は恐らくこの中立フィールドに甚大な被害をもたらすに違いない。既に辺りは荒野同然にボロボロだった。
「破壊不能オブジェクトがこんなにバラバラになるなんて、あの二人の力はなんなの」
答えを求めてはいない単なる独り言のつもりだった。
「イメージの力ってやつだな」
目が忙しく動いているアレクがそう返してきた。お前あれが見えてるのか?
「何それ?」
「俺もまだ足を突っ込んで間もないから上手くは説明出来ねぇが、本来壊すことの出来ない破壊不能オブジェクトを【壊せる物】としてイメージし、それがオブジェクトの硬さを上回った時壊れるんだとよ」
「そんなものがあるのか。ここで生き残れたら私も挑戦してみるか」
「辞めとけ。お前にはまだ早ぇよ」
「どうしてだ。もっと強くなれるのなら挑戦すべきだろう」
「コイツは危険な力だ。最悪挑戦するだけで死ぬぞ」
アレクの表情は本物だった。だからこそそれ以上何かを訴えることが出来なかった。
「・・・分かった」




