ラスボス
「顔色悪いぞ。大丈夫か?」
「誰のせいだ、誰の。」
天然クッションを目指したお陰でユーリまでの距離がほんの少しあるが、なぁにもうほぼ目と鼻の先だ。顔色の悪いクリアを連れて行くべきか迷った。
「どうする?サーチ・・・はもう起動してないが、ここからすぐなんだが休んでおくか?」
「あんたより私の方がずっとずっと悩んで、苦しんでお姉ちゃんを探してたんだから行かないわけないでしょ。こんな苦しみなんて欠伸が出るほどだぞ。」
と言いつつ今にも吐きそうになってはいるが、覚悟を持ってここまで来ている彼女を無下には出来るはずがなかった。
「そう・・・・だな。じゃあ肩貸してやろうか。」
そう言うと彼女はモジモジとして紅潮していく。なんだこの庇護欲をそそる生き物は。
「か、肩じゃ高さが合わないからあんたが辛くなっちゃうでしょ。それより、手が・・・・いいな。」
・・・・・・・・。やばい。なにこれ、なんかやばい。
「な、なんか言ってよ。」
目を合わせたりそらしたりと忙しい彼女の表情が余計に俺の中の何かをたぎらせる。
「ん、んー・・・・まぁ、いいだろう。」
俺の方までモジモジしてしまったが何とか声に出すことが出来た。
「あ、ありがと。」
恥ずかしがりながら手に触れそうになったり、離れたりを繰り返してようやく彼女が手を握ってくれた。
「な、なに恥ずかしがってんだよ。」
「それはあんたもでしょ・・・・。」
くぅうううううう。彼女いない歴年齢の俺にこのシチュエーションはかなりやばい。
そう思いながらも手を繋ぎ、歩き始めた瞬間だった。背後に違和感を感じてクリアをそのまま抱きかかえて思いっきり前に跳んだ。
「え?なになに?」
「くっ・・・・」
ズドドドドドドドドドドドドドドォオオオオオオン!!!
先程まで俺たちがいた場所に巨大な隕石が降り注ぎ、数十メートルほどのクレーターを作っていた。
「やはりそう来たか。出てこい!ギル・パプテマス・アルベルト!」
「おや、バレていましたか。これはこれは。お取り込み中のところ申し訳ないですね。」
森の暗がりから隕石で消し飛んで明るくなっているこちらの方に声が近付いてきて、やがてその姿が現れた。
「それはいい、だが先に聞かせろ。何故グレン達の記憶を奪い、そして俺達を殺そうとした?」
「それを話す義務が私にはないですね。ま、私だと特定できた時点であらかた証拠は掴んで来ているのでしょう?」
「まぁな。たとえお前が話したくなくてもこの能力使用不可領域から出れば、俺の能力で自白させることなんて簡単だぞ。」
「おお、それは怖い。」
ギルはわざと震え上がるような仕草をして、すぐに真顔に戻り、ついにはその表情はぐにゃりと曲がって、この世の人とは思えないほどえぐいにやけ方をした。
「ここから出れば・・・ですけどね。」
ゴオオオオオオオオオオオオオ!!
頭上からクリアが乗っていた奴より遥かに巨大なドラゴンが炎のブレスを飛ばしてくる。一度下ろしたクリアを再び抱えてかわす。
「さすがにすばしっこいなぁ。だが能力が使えないお前じゃいずれ体力が尽きるぞ。この世界はゲームと違い俺達の力は有限なんだ。それくらい分かってるよな、セツナ。」
「くっ・・・・、ああ!わかってるさ!だからこそ、こんなモンスターが訳の分からないとこから出てきて脱出出来なくなってしまう世界でも、俺達は皆を守るため希望を持って生きようとしてるんだろ!お前はそんな奴らのためにDIEを作ってたんじゃないのか!ギル!」
射出されるブレスは巨大な見た目とは逆に高速で連発しやがる。
「ああ、違うね。俺は俺のためにDIEを作り、そしてセツナ・・・・お前とユーリのお陰で本当の意味で完成した。」
「どういう意味だ?」
「ふっ・・・・ふははははは。どうやらこの偉業を俺も人に話したいらしくてな、いいだろう教えてやろう。」
ちっ、いちいちもったいぶる奴だ、面倒くさい。
「お前は初めてこの世界に囚われの身となった時、キツネ型のモンスターと接触したのを覚えているか?」
「ああ、勿論だ。」
「あれは俺が召喚したものだ。」
「なん・・・・・だと!?」




