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電脳獣被害者が透明人間になる世界で俺と彼女は引き裂かれ続ける(XXC  作者: 京夜騎士団長
第一章 始まりは2年前から
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未知の機械

ズドドドドドドドドドドドドォオオオオオオン!!!!

覗き見する俺の鼻先を掠めて一直線に衝撃波のようなものが通りすぎていった。

「あっ・・・・・ぶなっ・・・・」

声が洩れぬよう必死で心を鎮めて堪える。が、俺の目は捉えてしまった。その衝撃波に乗って何かが飛んでいったのを。


いや、何かではない。誰かだ。


すれ違う瞬間に顔を守るように腕を組んで防御態勢で飛んでいく彼女と目が合った。その視線は痛みと苦しみ、そして焦りと驚きに満ちていた。

前半は攻撃をまともに喰らったから、そして後半は何故俺がここにいるという疑問からくる目だろう。

「なんで・・・ここに・・・」

ここにいるのか、そう問おうとしたのだろうがその言葉を最後まで聞くことが出来なかった。

十字路は途中で絶たれていて彼女が飛ばされた先は壁。十数メートル飛ばされたその勢いでガスっという荒い音を立てそのまま衝突した。

「ぐぅっ・・・・」

少女は一瞬呻いてうなだれた。

「お、おい!大丈夫か・・・」

壊れた壁による土煙で彼女の姿は覆い隠されていて様子が分からない。

さっきの突風は奴のチャージ技だと俺は知っていたから、一瞬躊躇したもののチャージ技後の遅延ディレイで硬直する時間を利用して彼女のもとへ急いだ。


「あのー、大丈夫ですか・・・っ・・・あああああああああ!」


土煙が薄れるほど彼女に近付いてようやく気が付いた。


額から血をダクダクと流し、服はところどころ擦れて破れていて、庇った腕砕けたように変な方向に曲がっている。

見るからに死ぬ一歩手前だった。

死・・・?

ああ、そうか。ここは仮想世界だ。

たとえ現実的仮想世界といえど、そんなの死んだらログアウトして現実世界に戻る、それだけじゃないか。

果たして本当にそうなのか?

この異常事態。

モンスター・・・汗・・・傷・・・痛み・・・血・・・。

考えたくないがRVワールドで起こる殆どのことはリアルでも起こり得る。じゃあこの世界で死ねば・・・。

「そんなの・・・そんなこと・・・ダメだ・・・あっていいはずがない・・・」

俺は今一歩も動けなかった。彼女が飛ばされて来た時、ラノベや漫画の主人公なら壁と彼女の間に割って入って、ものの見事に助けただろう。

でも俺は・・・。

ゲームの中でしか力を出せなくて、ここじゃ何も出来なくて・・・。ヒーローになりたかったわけじゃない。それでも怖いものや分からない物から目を背けている内に彼女は怪我をしてしまった。

さっき俺ならこの問題を解決できるかも、なんてうぬぼれた考えを持ってたやつはどこの誰だ・・・。

俺は何も出来なかった。たった一人の女の子を救うことさえも・・・。

後ずさりするとユニコーンと目が合う。

お前は何なんだ。何でお前みたいな奴がここにいるんだ。ここはお前の世界じゃない・・・!


ブヒィーヒヒヒヒヒヒヒヒ!!


俺がユニコーンを否定し恐れる気持ちが奴にシンパシーして感じ取られてしまい、雄叫びを上げさせてしまった。

それに驚いて俺は尻もちをついてしまう。

ダメだ・・・。もうダメだ・・・。やられる・・・。

その時、カラカラカラと地面をなぞる音がした。俺の足元に転がってきたそれを摘みあげる。

「こ、これは・・・」

それは彼女が爆風から助けてくれた時、彼女が爆風から飛ばされていた時着けていた片目用の機械だった。

彼女は攻撃を受けた際、腕を顔の前で組んでいたのは自分の顔じゃなくコイツを守るために防御を・・・。

自分の腕を捨てるほど大事な物なんてあるのか・・・。

歯の奥がギリギリと鳴っているのが意識せずともわかる。

彼女をこんな惨たらしい姿にしてしまったというのにまだビビっている自分に腹が立つ。だが今は後悔している場合じゃない。

遅延硬直から抜けたユニコーンがもう間もなく迫ってくる。クールタイム残りおよそ三秒。その時間で何かしらの対抗策を考えるなり逃げるなりしなければならない。

だがこんなボロボロな彼女を抱えてどうやって走れる。血と衝撃派による摩擦で浅黒くなっている腕なんて取れそうな程だ。運ばれる側にも負担はかかるという。走って逃げれば彼女は死ぬかもしれない。いや、たとえそれが仮想だから死にませんでしたで終わるならいい。だが、本当に死んだらどうする。俺は責任を取れるのか?

この子の家族に、友達に対して守れませんでしたと言うのか。何から?モンスターからだって?そんなの誰が信じる?

仮想世界に対しては学生の中では最も知識と興味がある俺が言うんだから間違いない。誰も信じやしない。

とにかく彼女を抱えて走って逃げるって線は完全にナシだ。

では残る選択肢は戦うしかないわけだがそれも困難を極める。何故なら彼女が持っていた双剣がいつのまにか消えている。

ロジックはまったくもって不明だが恐らく何らかの形で召喚したのだろう。そしてそれが彼女の気絶と同時に消失した、と。ふざけんな!剣があっても守りながら戦えなんて無理ゲーだっつうのに剣まで無くなるなんてどこのクソゲーだよ!ほんとふざけんな!

ふぅ、とりあえず落ち着け。彼女はどうやって剣を召喚したかを考えればいいだけじゃないか。

そこまで考え至るのにほぼ三秒を要した。

「もしかして・・・」

すぐにそいつを右眼に装着して、電源を入れる。


【固有技名『嵐の突撃ストームラッシュ』】


遅延硬直を終えたユニコーンが、高度を上げながら飛び、嵐のような暴風を纏って急降下しながら突撃してくる。


「早く起動しろ!」

DIEディーアイイーを再起動しました。装備を生成ジェネレートしてください』

起動した瞬間機械音が指示を出してくるが、やりたくても何を詠唱すればいいのかわからない。だが最初のでボイスコマンドに対応していることは確かめられた。

漫画やアニメなら主人公は感覚で最初の変身とかで誰に教えられたわけでもないコマンドを言い当てるんだが、あれほんとフィクションだから出来ることだよなと、この時心の底から感じた。

くそ!もうヤケクソだ!

「レックス・デストラクションをジェネレート!!!」

『コード100832,アバター,セツナ。ゲーム、モンスター・ジ・クロスのゲームデータより、レックス・デストラクションを生成します』

機械音が流れた後に右眼の機械が光り、レーザー状にその光の線が伸び、魔法陣が描かれた。

その光の眩さに驚いた天馬は悲鳴のような鳴き声で仰け反り、翼を羽ばたかせて一旦退いた。

「おいおい。マジなのかマジで・・・」

目の前の魔法陣から真っ直ぐに刀の柄のようなものが伸びてきて、やがて止まった。

興奮が収まらない中、なんとかソイツに手を伸ばして引っこ抜く。

フォン・・・!

軽く振ってみると心地の良い音がした。

エメラルド色の柄、全くくすみのない銀色の鋭い刀身。つばは恐竜の顎門あぎとのような禍々しさを放つ。薄い膜のように刀身全体を覆う黄緑色のオーラのような物が刀の威圧感を増させている。

間違いない・・・俺の・・・俺の・・・。


「お帰り、相棒」


【超激レアドロップ武器:両手太刀カテゴリー『レックス・デストラクション 』】


このレックスデストラクションという武器が存在している『モンスター・ジ・クロス』というゲームのサービスが終了して数年が経過している。そのためこの武器もアバターデータ共々抹消され、あの時は自分の片割れが死んだかのような消失感を味わったのを今でもよく覚えている。

モンスター・ジ・クロスは人気絶頂期にその幕を閉じた。これには運営以外俺だけが知る裏の事情があるのだが、この話はまた別の機会にでも。

とにかく何故だか分からんが武器が出て来た。

鼻をすすり熱い涙を拭って刀の柄を強く握りしめる。

「これでようやくお前と戦える」

睨む奴に向けて強い一歩を踏みしめた。

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