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神賜の不遇と劣等感情 小説版
空気が冷たいなぁ。
春とは名ばかりの寒さに身を震わせつつ、人間・黒瀬神名は休日にも関わらず出勤の途中にあった。
電車を降り、改札を抜けて歩道橋へ。職場の最寄り駅と職場のビルは、透明なドーム状の屋根に覆われた通路(歩道橋)で連絡している。造られてまだ日もないため汚れも見当たらないフロアー面兼ソーラーパネルが、青天をうけて黒く照る。
「こう天気もよかったら、少々寒くたって憎めないものね……」
などと、少しばかり寒さへの評価を上方修正するが、その寒さともあっさりお別れである。通路の駅とは反対側の端、目的地たる高層建築物との境界面を仕切る自動ドアを越えれば、適度に空調の効いた世界が待っている。