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終末歌姫  作者: 岩城ぱれす
第1楽章 少女が破界に変わった日
9/16

八曲目 共鳴し合う二人

「くそ、広瀬奏めっ……」

 とある山の中。朱音は木々を切り落としながら、憎悪を漏らす。

「あいつには何故、私よりも力があるのだっ……」

 そう言うと再び木々を豪快に切り落とす。そして、損傷した大鎌の先端を見つめる。

「絶対に許さない……。何としてでも狩り殺すっ……!」

 朱音はそう言うと、復讐を胸に誓った。


     ☆


「あれ? ここって?」

 奏は目を覚ますと、見たことのあるような光景が広がっていることに気付く。そこは、ただただ白い地平線が広がる雲の上だった。


目覚めたか、我が化身よ。


「この声……。あの時見た夢……。てことは、私また夢の中っ!?」


無視するでない。我が化身よ。


「ああっ、じゃあ起きたらまた遅刻だよぅ……。先生に怒られるし、鈴音にも嫌われるぅっ!」


話を聞かぬか!


「うぐぅっ!」

 何者かによって身体を束縛される感覚が奏の身体に走る。


我はお主をいつでも殺せる。このようにな。


 さらに力は強くなり、潰されるような感覚が奏を襲う。

「や、め、て、えぇぇぇっ!」

 奏が苦しみながらもそう叫ぶと、稲妻が発生し、奏は鈴音を助けたあの時の姿になっていた。そんな姿になると、さっきまで襲っていた感覚が突然消える。

「一体、何なんですっ? 人の夢の中に出てきて、睡眠も現実も邪魔するあなたっ! 一体何なんですっ?」

 奏は何者かに向けて、そう文句を叩き付けるように言った。


ふむ。やはりお主を選んで正解だったようだな、ヒロセカナデ。


「えと……もしかして、覚えてくれたの名前?」

 片言の名前を呼ばれ、奏は何者かに聞き返す。


ああ、そうだ。我の願いを叶えし者、ヒロセカナデ。お主の力、期待しているぞ。


 何者かがそう告げ終えると、奏の足元を形成していた雲が消える。

「またこれえぇぇぇっ!?」

 奏の叫びも虚しく、スピードを上げて落ちていった。


     ☆


「――で、変な夢のせいで、今日も遅刻と?」

 天石先生は遅刻理由を聞き、あきれ顔で奏に言った。

「えと、あの、その……はい。その通りです」

「まあ、今日は普通に減点ね。かわいそうだけど」

「すいません。以後気を付けます……」

 奏は少し落ち込みながらそう言うと、教務室から出て行こうとする。すると、天石先生に呼び止められる。

「あと、広瀬さん。放課後、音楽準備室の方に来てくれる?」

「へ?」

「話したいことがあるから。あと、鈴音さんも呼んでくれる?」

 天石先生にそう言われると、返事をして教務室から出て行く。そして、放課後。言われたとおりに鈴音と音楽準備室にやってきた。

「失礼します」

「どうぞ、入って入って」

 そう言われると、二人は室内に入る。しかし、その顔には不安が張り付いていた。

「その……私の進路はどのような末路に……」

 奏は恐怖心を体全体からにじませながら、恐る恐る天石先生に聞く。

「先生! 奏はやればできる子なんですっ! だから――」

「あなた達、何を勘違いしてるの?」

「「へ?」」

 二人は間の抜けた声を漏らす。

「違うわよ。今回、こうして集まってもらったのは……久遠朱音のことよ」

 天石先生は早速奏に聞く。

「広瀬さんはどうしたいと思っているの?」

「どうしたいって……朱音さんとは分かり合いたいです。朱音さんの歌、何だか泣いていた。そんな気がするんです」

 奏は朱音に対する今の気持ちを、素直に、率直に、そして簡潔に答えた。

「そう。鈴音さんは?」

「わたしは、奏の意見を尊重したいですけど……危険な目には合ってほしくない、です」

「そうよね。友達だものね。私もあまり危険な目には合ってほしくないわ」

「それでも、わたしは、奏の気持ちに――」

 突如、警告音が校内に鳴り響く。学校からそう遠くない場所で土煙が上がり、霞んだ音が鳴り響いてくる。

『周辺地域で破界者ノイズ発生。生徒は直ちに校内に避難せよ。繰り返す――」

「破界者……ってことはっ! 私行ってきますっ!」

 奏は待っていたといわんばかりに追うかに飛び出す。

「ま、待ちなさい広瀬さん!」

 天石先生が奏を止めようと慌てて廊下に出るが、その時には奏はいなかった。

「奏……」


「お母さん、ボクだよっ! ひろしだよっ! おかあ――ッ」

「グルガァァァ――!」

 実の子供の声も破界者ノイズと化した母親には伝わらなかった。槍のように尖った腕で身体を貫かれ殺された。

 それと同じような光景が、あちらこちらと繰り返されている。

「孝二さん……やめ――ッ」

「グル……めぐ……ミィィィッ!」

「やめろ、こっちくるがぁぁぁ――ッ!」

 人が破界者ノイズに殺される光景を、朱音はビルの上でまじまじと見降ろす。その様子は、何かを心待ちにしているようにも見える。

「さぁ、来い。広瀬奏……っ」

テンポよく話を進めていくことにします。あと、自分がおもしろいと納得できる作品にしたい。

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