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狭間慎吾少年の決断 中編

迷走してます。


小説ってむずかしいね…

どうする…どうすんのよ俺……




続く!










なんてことはなく、俺は頭が混乱していた。


というかまじでどうすんだ?



後ろには女の子が一人、前には感染者が一体、手にはハサミと懐中電灯……




駄目だ死ぬ。





と、さっきの娘が俺の前に出た。そして


「こっちだよ!」

と、ほざきだした。


頭でも狂ったのか?




感染者はますます近づいてきて、俺は恐怖に足がすくむ。



すると彼女は手前の廊下へと走り込んだ。それを追うように感染者も歩いていった。




今なら逃げれる…

という考えが頭をよぎる。



だが次の瞬間


「今のうちに逃げて下さい!」

と、言い放ったのだ。





いいのかこんな小さな女の子を見捨てて逃げても…



俺が自分だけ助かろうと思ってたのに、あの娘は助けてくれようとしたんだぞ。




だが俺は2階へと向かい走りだした。


なにしてんだよ、最低だ…


人間として…


男として…


わかってる、わかってるよ…


だけど誰もが漫画やアニメみたいなスーパーマンになれるわけじゃないんだよ、俺には無理だよ。



きっと誰か…


誰か…




そして2階へ着くと部屋に入りドアを閉めた。


そのまま冷や汗をかきながらその場に座り込む。










…いいのかそれで?


立ち上がる。

あれから数十秒も経ってない。


あの時は助けられなかった、でも下にいる女の子はまだ助けられるかもしれない。



なぜ?ベストを尽くさない!




やらずに後悔するより、やって後悔した方がいいに決まってるだろ!!










気付いたら俺は下の廊下に立っていた。


感染者はどうやらトイレに入ろうとしてるらしく、女の子は中にいるんだろう。


「よかった、まだ生きてる。」

とりあえず一息つき、持ってきた椅子を構える。



そして間髪入れずに

「うおおぉおおおお!」

感染者に身体ごとぶつかった。



感染者は掴む力が異様に強いが、フラフラしてるので結構倒れやすい。


※掲示板情報



椅子を離すと、そのままぶっ倒れてくれた。


すぐにトイレのドアを叩き


「早く出てきて、逃げるよ!」

中にいる女の子を呼ぶ。



ガチャッ


ドアを開け、中から顔を覗かせて


「な、なんで?」

驚いた表情を見せた。



感染者が起き上がろうとして焦り、とっさに彼女の手をとり2階へ走り出した。


後ろから呻き声が聞こえたが、一度も振り返らなかった。



息を切らしながら2階の部屋へと入り鍵を閉めた。



「あ、ありがとうございます。」

そんなふうに彼女は言ってくれた。


今思うと人にお礼を言われたのは、これが初めてだった気がする。



とりあえず怪我がないか


「えっと…大丈夫?」





その質問に


「はい、さっきは本当に助かりました。」

無垢な笑顔で答えてくれた。


可愛くて思わず視線を逸らした。




「ごめん……君みたいな小さな女の子に助けてもらって。」

とりあえず眼を逸らしながら正直に謝っておく。



「あっひどいです、私こう見えて18ですよ。」

と、返され

「えっ年上!?」

普通に驚いた。



「ご、ごめん。」

この容姿で俺よりひとつ上とか…末恐ろしいわ…



「………」

と、彼女が無言で見つめてきた。


「………」

吊られて俺も無言になる。






少しして


「ハハハハハッ!」

沈黙に耐え切れず二人して笑い合った。









ドンッ

唐突に扉から音が響き、二人して身体をすくませた。



外からは呻き声が聞こえ、扉がギシギシと歪む。



忘れてた、まだ感染者がいたんだった。


「ど、どうしましょう?」

俺に聞かれても困る。



「え~と…」

さっき感染者を撃退したときとは違い、頼りなく声を濁らしてしまった。



「…とにかく、必要な物をまとめて窓から隣の家に逃げましょう。」

すぐに彼女が方針を決めてくれた。


というか俺頼りねー…





この住宅街は密接していて、2階から隣家に入れるぐらい近い。問題は開いてるかどうかだ。




とりあえずノートPCとバッテリー、食料等の役立ちそうな物を学生鞄に詰め込んでいく。


高校に入ってから数回しか使ってないから新品同前だ。





彼女の方を見ると窓を割り、身を乗り出して鍵を開けている最中だった。


ああ…開いてなくてもよかったのか……





バキッ

と、嫌な音が鳴り、ドアに亀裂が入った。



「早く!」

既に向こうに渡った彼女に急かされた。



「よし。」

ちょうど物を詰め終わり、窓に向かい出す。


同時にドアの蝶番が外れ、感染者もろとも室内に倒れ込んできた。



先に鞄を投げた。綺麗なアーチを描き、彼女が受け取ってくれた。




次に這ってきた感染者を避け、窓から隣家に飛び込んだ。


だが飛距離が少し足りず、窓枠にすねをおもいっきり打った。




しばらく悶絶して無言のままその辺を転げ回った。


いやマジで痛いから…




痛みが少し引き、心配そうな彼女を横目に立ち上がって振り返る。




そこに感染者はいなかった。


微かに下から呻き声がしたので見ると、手足をおかしな方に曲げて這いずっていた。



どうやら奴らに『跳ぶ』や、頭を使って『渡る』ということはできないようだ。



勉強になった。

少なくとも俺の嫌いな数学と英語よりは…






ずっとここに居るわけにもいかず、すぐに彼女からさっきの鞄を受け取って外に急ぐ。


こういう時は男が荷物持たないとな…あんま体力無いけど。




階段を降りてる途中、そういやまだ彼女の名前を聞いてないなと思った。


いや別に支障とかないけど読者さんとか困るし……ね?




なので人との会話は苦手だが聞いてみた。さっきも話せたし大丈夫だ。




後ろを歩く彼女に早速聞いてみる

「あのー…」



「どうしました?」



「名前…とか教えてもらっても…いぃすか?」



「?なんでですか?」


即座に聞き返された。まあ当然である。




「いやー…これから一緒に行動するし、呼ぶ時とか困るかなーって…」


みたいな意味不明な理由を言ってみた。




「いや別に変な意味とかは!」

なんとか取り繕おうとしたら

「いいよ。」

了承してくれた。




「私の名前は相田里香あいだりかです。これからよろしくね。」

ニコッと笑顔で話してくれた。


とりあえず俺も


「お、俺は狭間慎吾って言い…ます。よ、よろしく…です。」

見た目は小さな女の子だが、一応年上なので敬語で喋るか迷いながら言う。



「別に敬語じゃなくていいよ慎吾くん。」

と、言ってくれたが

「えっと…相田……さん…」

やはりこういうのは苦手だ。



「もう…まあいいや早く行こう。」


「う、うん。」


あれ、なんか主導権相田さんが握ってないか?別にいいけど…




すぐに玄関に到着し恐る恐るドアを開けた。どうやら鍵は掛かってないようだ。


さっき階段の下で何処へ行くか話し合ったが、ひとまず近くのショッピングモールを目指すことにした。



そうゾンビ作品御用達のモールである。



理由は日が沈むまでに着けそうなのと、人がバリケードを張っていて、中で安心して睡眠が取れそうだからだ。




まあ賭けのようなものだ。




二人して塀に張り付き外を覗くと、通りに感染者が3~4体程フラフラ歩いてた。


予想より少なくて助かった。





「いますね。」


と、後ろから耳元に囁かれた。


いや別に興奮はしてない…よ




平常心を取り戻しつつ


「そうだね、まずは…」

その辺に落ちてた握りこぶし程の石を引っつかみ、遠くへぶん投げた。



少し離れた場所でカンッと音が響いた。


同時に、通りの感染者はその音がした方へ群がっていった。



感染者の視力は乏しいが代わりに聴覚が過敏になったそうだ。

※掲示板情報



すぐに逆の方向へと忍び足で歩いていった。



ある程度離れたら走った。




しばらく無言で走り続け、たまに数体感染者と遭遇したが無視した。



どうやら平日ということもあるが、比較的住宅街には奴らはいないようだ。



そもそも俺達が住んでいるこのニュータウン『かぐやま』は五つのエリアに分かれてる。



住宅街で人が住んでる『ホームエリア』。


ビルが立ち並び、仕事場所が密集してる『ビジネスエリア』。


田畑や養殖場などが点在して自然が多い『ネイチャーエリア』。


政府施設や自衛隊の基地がある『サードエリア』。


最後に買い物が楽しめる『ショッピングエリア』がある。




ちなみにショッピングエリアは島の北側にありホームエリアは西側である。







ふと後ろから荒い息遣いが聞こえ、相田さんを見るとかなり疲れた様子だった。



目的地を目指すのに必死で疲れを気にしていなかった。気がつけば俺の足もガクガクで今にも倒れそうだ。



「あの少し休みませんか?」

陽が沈むまでまだ時間があるし、少しぐらい大丈夫だろう。



「う、うんそうだね。」

肩で息をしながら素直に頷いてくれた。


どうやら相田さんも運動は苦手なのだろう。




とりあえずその辺の家へと入った。


「ふーやっと一息つける。」

玄関で荷物を下ろし、床に座った。呻き声もしないし感染者はいないだろう。



ふと同じく腰を下ろした相田さんを見て、特に意味もなく話しかけた。


「…あの…」



「ん、なーに?」

俺の顔を見上げて、眼を見つめながら言った。


「相田…さんは俺の家に来るまではどうしてたんですか?」


少し照れて眼を泳がしながら聞いてみた。





「里香でいいよ。」




「いや…」

言い掛けると息が当たる距離まで顔を近付けて、じっと睨まれた。




あまりのかわいさに屈してしまい


「里…香。」

と、ぎこちなく言った。



「よろしい。」

どうやら満足したようだ。







「私はね学校にいたの。」

と、さっきの問いの答えを話し始めてくれた。



「昼過ぎた頃ぐらいかな…校庭で流血事件が起きてね…」


「襲われた先生は外にいる人達みたいに理性が無くなって凶暴化して他の人に噛みつきだしたの。当然みんなは一斉に逃げようとして学校は大パニック。」


「私は何人かと逃げ出せたけど…途中ではぐれてちゃって、そのうちにお腹が空いてきたから近くにあった家に入ったんだよ。」




「そ、そっか…」

聞かなきゃよかった…

興味本位で話しずらい事を思い出させて、ほんと駄目な男だ。




「別に気にしないで、大丈夫だから。それにみんなも生きてるよきっと…」

無理した作り笑いで言ってくれた。



それ以上は何も聞けず黙って体を休めた…










「おい手を挙げろ。」

ふいに後ろから野太い男の声がした。



二人して振り返ると、拳銃を構えた警察官と後ろに婦警が一人立っていた。



「おい!聞こえないのか!」

と、馬鹿みたいに喚いた。



「わ、わかりました挙げますから静かに。」

里香さんはそう言い、俺もおとなしく手を挙げた。




どうやら先客がいたようだ。




拳銃を構えている警察官は少し髪が後退して、見た目は30~40代といった所だろうか。

後ろの婦警は髪がショートで、歳は20代ぐらいに見える。



「い、い、一般人だなお前ら。そ、外の奴にか、か、噛まれたりしてないか!」

拳銃を構えている手を震わせながら、興奮気味に喚いた。本当に勘弁願いたい。



「噛まれてません。」

また里香さんが答えてくれた。





「も、森巡査調べろ。」


未だに手を震わせながら喋った。どうやら信じてはもらえなかったらしい。



「は、はい!」

婦警も不安げに返事をした。




少しぎこちない手つきで怪我がないか、同様に隣の里香さんも調べられた。



当然噛まれてないので


「だ、大丈夫です。」

森という名の婦警は、上司らしい年配の警察官に報告した。



「そ、そうかご苦労。」

そう言うと構えていた拳銃を下ろし腰のホルスターに納めた。




そして突然


「もう大丈夫だ私達についてきなさい。」

さっきとはうってかわって陽気な声で半ば強制的に腕を引かれた。




「ま、待って下さい。」


と、里香さんが呼び止めてくれた。





「なんだね?ああ大丈夫私はこのニュータウン『かぐやま』の警官さ、役職は巡査部長だ!」

と、胸を張って警察手帳を見せてくれた。




「さあ来たまえ。」

また腕を掴まれ


「いや、ちょ…」

と、言いごもっていたら


「なんでこんなところにいるんですか?」

俺が聞きたいことを里香さんが代弁してくれた。




「ああ、よく聞いてくれたね。私達はこの騒動を鎮静化しようと尽力したんだが駄目だったんだ。同僚達はことごとく奴らの仲間入りをしていった。」


「それでせめて市民を守るため、何人かを連れて逃げたんだが本庁は島の中心部、到底辿りつけなくてね。」


「たまたまその中に、家の地下にシェルターを持っている人がいて、それで救助が来るまで篭っているんだよ。」




「でもぉれたちは…」

と、言葉を吐き出そうとするが

「ん?何だね?」





「………」

あれ…里香さんとは普通に話せてたのに、なぜか急に言葉が出ない?



「私達近くのショッピングモールに向かってる最中なんです。」

また里香さんが事情を説明してくれた。



情けねぇ…



「何!それはいかん。この家に来る途中見たが、感染した奴らが押し寄せてとてもじゃないが入れないぞ。」




「そんな…」

里香さんは顔を曇らせながら言った。



「だから、さあ君も早く!」


という巡査部長の言葉に里香さんは


「私は…私は慎吾の決断に従います。」

と返した。




!!?

え?なんで?



巡査部長は里香さんから視線を外し


「さあ、行くぞ。」

俺を睨みながら言い放った。



圧に押されつい


「は…はぃ…」

と、言ってしまった。



「そっか…わかった。」

里香さんは少し気を落としているようだった。



今、最高に格好悪いな俺…でもきっと正しい決断だよ。





シェルターは庭の地下にあり、巡査部長達は食料を集めるため家の中にいたらしい。



入口に到着して中へと入る。


中は薄暗く、その小さい空間には髪をオールバックにした若い男、そして赤ん坊とその母親、老夫婦に中年の農夫がいた。








「おお!やっと帰ってきた、早く飯下さいよ飯!」

と若い男がはしゃぎだす


「おお見つかりましたか。」

と老父


「はい、シェルターはおろか食料の提供まで感謝いたします。」

と森巡査


「いえいえ今は緊急自体、こんなことでしか手伝えませんが…」

と老婆


母親は赤ん坊をあやし、農夫は俯いてた。


「まあ待て、今から均等に配給する。」

巡査部長が喋る。



「そんな~いいじゃないっすか、ジジババなんてそんな食わないっしょ。」

若い男が続けて喋る。


「ふ、藤沢くん!」

森巡査は慌てて若い男を怒った。



「へいへい…つーか何その二人?」

と、俺達を指差しながら藤沢という名の若い男は言った。



「ああ彼等も避難してきてな、私が保護したんだ。」

巡査部長は得意げに語った。



「へぇ~。」

藤沢は品定めするかのように見つめてきた。



里香さんはさっと俺の後ろに回り、手を握ってきた。


俺の顔は真っ赤である。









あれから1時間

みんな無言である。



当然だろう、みんな命の危機にひんしているのだ。喋る気力もなくなるだろう。


俺はパソコンに眼を通して掲示板で情報収集したり、暇なのでゲームをしたりしてる。



これだけ経つとログインしてる人も少なく、今生きてる俺は幸運なんだろう。



そしてもうひとつ


「あ、すご~い。」

俺がシューティングゲームしている画面を覗き込み、敵を倒すごとに喜ぶ声が聞こえる。



そう、里香さんと知り合えたことだ。



俺みたいなDTで引きこもりが、こんなかわいい女の子と仲良くなるなんて天文学的にありえない。



不謹慎だろうが、俺はこの状況に感謝してしまっている。



ほんと終わってるよな…




ゲームが終わる。俺にとっては手慣れた作業で一発全クリある。



「慎吾ってゲーム上手なんだね。」



「えっそうかな~。」

眼鏡をかけ直し、顔をほてらせてしまう。



ああ、この時間が永遠に続けばいいのに…





「ねぇねぇ君何歳?」


唐突に藤沢が里香さんに話し掛けてきた。



「………」

里香さんは顔をプイッと背けた。だから可愛いって!



「無視かよ。なぁ!」

と、里香さんの肩を掴む。




マズイ俺が…


「こら!何してる!」

と。巡査部長が一喝した。



「チッ」

藤沢は自分の座ってた場所に戻る。



なんかここまでいいとこなしだな俺…




と、今まで俯いていた農夫が急に立ち上がり、シェルターの扉へと歩き出した。



「おいどうした?」

巡査部長は怪訝な顔をしながら見る。


「私は外へ出る。」

農夫は呟いた。



「な!駄目に決まってるだろ。」

巡査部長は怒鳴り、農夫につかみ掛かる。



「うるさい!」

が、次の瞬間農夫は持っていた石で頭を殴りつけた。



「巡査部長!」

森巡査はすぐに駆け寄った。


「きゃあぁあ!」

里香さんは叫び。



「うわぁ。」

藤沢は飛びのき


「ひぃ」

母親は赤さんを庇うように身を屈めた。



「くそっ」

巡査部長はすぐに立ち上がり


「止まれ!」

そしてホルスターから拳銃を引き抜き、農夫に向けた。




農夫は無視して歩く。


「と、止まれと言っているんだー!」




パァンッ

発砲音が響き周囲には硝煙の匂いが立ち込めた。

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