狭間慎吾少年の決断 前編
早めに書けたので…
次から遅くなります。
俺の名前は狭間慎吾。
こんな平日の昼間から家でパソコンして、まあ俗にいう引きこもりだ…
そんな俺は今なんか事件に巻き込まれてる。
「ああ、どうなったんだよこの日本は。」
とかぼやきつつカーテンの隙間から外を見た。
そこには歩行者天国よろしく多くの人間がフラフラさまよってた。
ただ少しおかしいのは彼らの肌はみんな灰色にくすんでいるってことか…
カタカタカタッ
とパソコンを打ち掲示板を開く。
その中では俺のネット上での友人がログインしてた。
今の状況を報告するため何度か書き込みを行った。
よくわからないが彼らの話と、今の俺の情報を統合するとこんなかんじらしい。
・ニュータウンかぐやまを含め複数の主要都市でこの騒ぎが起こった。
・世界中でも同じようなことが起こってる。
・あの灰色の肌の人間に噛まれると同じようになる。
・自衛隊は救助より重要施設の守備を優先してる。
・無事な場所は人口の少ない孤島ぐらいらしい。
正直さっぱりわからない、両親は二人共仕事に出ているし、外の事もどこか実感がわかない。
と外から悲鳴が聞こえた。
窓から外の様子を覗くと、高校生ぐらいで茶髪の女の子がフリフリのスカートを揺らしながら走ってた。
その娘は息も絶え絶えで今にも倒れそうだ。
後ろからは顔から血を滴らせ奇病に掛かったと思われる人間が追ってきてる。
「助けた…ほうがいいのか?」
俺は迷った。
だがあの娘を助けたら確実に巻き添えをくらう。
あのさまよっている感染者は家に押し寄せ、噛まれ、あれらと同じふうになる。
嫌だ…そんなの嫌だ。
さっきの彼女が転倒した。
「あっ。」
と間抜けの声を出してしまった。
こちらに気付いたのか一瞬目が逢ったような気がした。
「きゃあアァあ!」
がすぐに追い付いた感染者に噛まれ、彼女の断末魔が聞こえた。
俺は咄嗟に顔を背けた。
どちらにしても間に合わなかっただろう。
そうだ俺は悪くない。
何もできなかったさ、何も…
自分に言い訳をして布団を被り、ヘッドホンを着け、そのまま目を閉じた…
ふと目が開く。
とりあえず眼鏡を捜し、慣れた手つきでパソコンの電源を入れて時刻を見るとまだ夕方のようだ。
寝たのが昼だからまだ数時間しか経ってない。
俺は腹が減ったのに気付き前以て集めた食料のパンを口に頬張った。
ガタンッ
と下から音が響いた。
あやうく喉を詰まらせかけ、手元に置いてたペットボトルの水で流し込んだ。
「な、なんだ…?」
まさか外の感染者が家の中に……
俺はそのままにしておくわけにもいかず昼に持ってきた懐中電灯と武器になりそうなはさみを持ち、下の階に降りた。
階段を下りると、そこはいつも住んでいた家とはまた違い、不気味な雰囲気を醸し出していた。
静まり返る廊下を歩き始めると台所から
ガサガサッ
という音が聞こえた。
近付くと冷蔵庫が開いていた。
辺りを警戒しながら冷蔵庫の前に立つと、後ろから何かの気配がして振り返る。
するとそこには長い黒髪の華奢な女の子がうずくまっていた。
「だ、だ↑れだ!」
と音を外して叫んだ。
普段から会話をしないとこんな弊害もあるのか…
「ご、ごめんなさい。」
その女の子は、身体を震わせながら立ち上がった。
見ると背は低く、髪は胸辺りまで伸ばし、何よりすごくかわいかった。
胸の方はお察しだったが……
「本当にごめんなさい。お腹が空いて…でもまだ何も取ってません!迷惑ならすぐに出ていきますから。」
という彼女の気迫に押されうろたえながら
「いや…別にいぃけど……」
と吃りながら呟いた。
そもそも彼女いない歴=年齢で、異性と交流のなかった俺が女の子と饒舌に話せるわけないだろ!
てかこの娘はどこから入って来たんだ?
と俺の疑問に答えるかのように玄関から呻き声が聞こえた。
彼女を置き去りにして廊下に出ると、予想通り感染者が家に入ってきていた。
それも先程下りてきた階段の前までだ。
「まじかよ……」
俺は最初の決断を迫られたのだった。