第一章25~29 要点まとめ
同居から二週間。リビングで飲み物を片手に雑談する二人の日常が定着している。際允は青の、止湮はオレンジのマグカップ。
2月15日の夜、止湮が際允に、瞳の色に似た水色のネックレスを贈る。
今日は今世の誕生日ではなく、前世の際允の誕生日、つまり命日。それでも止湮はあえてこの日を祝う。
それだけでなく、止湮は今後、前世と今世、一年に二回誕生日を祝うという、衝撃の宣言を。
際允にとっては破天荒で理解不能な行為。そのわけは、止湮が抱え続けてきた「後悔」と「執着」。
止湮は六年前から、自分が何かをしていれば、たとえばその日に誕生日プレゼントを贈れば、際允は死ななかったのではないか、という自嘲的な後悔を抱え続けていた。
君が生きていてくれて、本当によかった、と。
また君に会えて、また君の誕生日を祝えて、よかった、と。
「仕事から帰ってきてドアを開けた時、明かりがついていて、『おかえり。お疲れ様』と言ってくれる人がいて、本当に嬉しいんだ」
真っ直ぐな好意を連発され、際允は顔が火照るほど激しく動揺する。
止湮の心底幸せそうな笑顔を見て、際允は「転生してよかった」と初めて心から感じる。
墨然には警戒心の強い際允だが、なぜか再会して間もない止湮だけを信じている。
それは、二人が「前世の死」という極めてプライベートな秘密を共有し、互いの命を守る約束を交わしたからなのか。際允にはわからない。
結局、「止湮はいい人だから」と誤魔化す。
前世の死を究明するために、止湮と墨然は初歩的会議を行う。そこで、墨然はなぜか、その場所を二人の家にすると提案した。
初の会議の日、午後、墨然の来訪を告げる玄関のチャイムが鳴った瞬間、際允は前世で殺害された時の記憶を呼び起こされ、過呼吸に近いパニック状態に陥る。
その異変にに気づいた止湮は、今後すべての来客対応を自分が行うと宣言した。
墨然も際允の顔色の悪さを案じるが、 嘘をつけない止湮をフォローするため、際允は「人見知り」「記憶力が悪い」と嘘を重ねてはぐらかす。
前世では止湮の真似をして無理にコーヒーを飲んでいた際允。その日、止湮に勧められ、あまり口にしたことはなかった紅茶を「美味しい」と感じた。
二回の人生を渡って、二十四年に及ぶ生きてきて、まだ知らない「自分の好み」があることに気づいた。
二人のやり取りを見守っていた墨然が、一瞬だけ口角を上げる。




