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#85 それぞれの道へ

2025年 3月29日 (SAT)


 目が覚めると、ベッドの上だった。


 スマホが指すのは3月29日。


 だが、カレンダーはめくれ、5月を示している。


「……これも修正力……か。時間まで書き換えるとはな」


 カーテンを開く。


 何気ない風景が広がっている。


 リビングに降りてみた。


 ……が、誰もいない。


 不思議な事に、昨日焦りで洗わなかった食器だけが残っている。


 冷蔵庫を開くと、5人分の食材が入っている。


 だが、依然として客室からは物音が聞こえない。




 一人で冷凍した米を解凍して、食べた。


 間違いなく、彼女の味だ。


 ……夢オチって事ではなさそうだ。


 ……うん。


 ……


 雫が溢れる。






「勇者様、どうかなされましたか?」


 食事中、どことなく上の空になっていた。


 非常に深い喪失感が全身を襲う。


「どうしちゃったのよシュウヤ? らしくないじゃない」


 今となっては常識的存在なのだが、こうやって獣人族の仲間を見たのもいささか久しぶりだな。


「いや、なんでもない」


 ポケットの中にあるスマホは、今後生涯通知がなる事はないだろう。


「次はプライミースという国に新たなドワーフの仲間がいるそうです。馬車で大体5日で辿り着くかと」


 エルフの仲間がそう言った。


「あぁ、そうか……」


 早いうちに心を切り替えなくちゃな。


 この先だって別れは多いだろうし、その分出会いもある。


 ……今は魔王を倒すことに集中だ。






 私が元の世界に戻ってから半年が過ぎた。


 ちなみに、耳にピアス穴を開けてからも半年である。


「イェーイ! あけおめぇぇぇぇ!!!」


「ことよろぉぉぉぉぉ!!!」


 私は居候先の探偵事務所にて、大晦日のパーティ(参加者2名)を楽しんでいた。


 もう1人の参加者はというと……私の養父の実娘である親友だ。


「それじゃ、新年1発目は何して遊ぼうか!」


「そりゃもう羽子i ……」


 バリィィィィィィィィィンンン!!!!!


 突然、窓ガラスが割れ、人が入ってきた!


「あ、不二宮ぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「洸ヶ崎ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」


「あ、梨疾羅ちゃん、一緒に遊ぶ?」


 この子はいつも冷静だ。


「そりゃ探偵ですから」


「思考を読まないで……」


「洸ヶ崎ぃぃぃ!!! 今日こそ決着をつけt……!」


「あ、それなら2人で羽子板対決してみてよ」


 突然のお誘いである。


「え!? なんでそんな急に……」


「やってやるぅぅぅ!!! 洸ヶ崎ぃぃぃ!!!」


 その後、圧勝した。

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