#84 Un bye friends⑧
オレ達は、施設の中を走り回っていた。
「それで? 蒼馬から何を言われたの?」
「あぁ、ヒーロー達が発電してた場所にあった小球、あれを打ち上げて欲しいって」
「……え?」
愛鈴はポカンとしていた。
それもそうだ。
「彼女、運結フミの攻撃は魔力をほとんど使わない。あの一人で動く剣だって、微細な魔力しか感じなかった」
「あれ? おかあさまの魔力量は豊富なはずなんだけど……」
「蒼馬の魔力吸収を警戒しているんだ。吸収されれば一気に強化され、巻き返される。だから必要以上に魔力を使わないようにしてるんだ」
「なるほど!」
「あの小球はいわばエネルギーの塊だ。電気も魔力もエネルギーって点においては変わらない。だからあの小球を吸収して必殺技を打つつもりなんだろ」
そうこう話している隙に、例の部屋へとたどり着いた。
……先程まで働いていたヒーロー達は見当たらない。
「よし、盗むぞ。ここからは大胆な行動になる。天井に穴を開けてそれを地上まで行き渡らせる。それが目印となって蒼馬が追いかけ、いつでも小球を回収できるよう調整する。で、最後の穴から小球を放り出す!」
「忍羽ちゃん、爆弾は大丈夫そう?」
「うん!ストックもいっぱいだよ!」
「雄一は足止めを頼む」
「あぁ、任せろ」
柊命がプラズマを持ち出すと、忍羽は天井に向かってネズミ爆弾を投げ飛ばした!
天井にひっついた2秒後!ネズミは爆発を起こし、天井に穴が開く!
「うわっ! ここ真上水中かよ!」
「でももうやるしかない!」
爆破の音を聞きつけ、多くの足音が近づいてくる!
「雄一!」
そう言った時には、もう彼は足止めに取り掛かっていた!
「よし、今のうちに施設内を駆け回るぞ! 3分後にプラズマを投げ込む!」
「……間に合ったか」
渦巻きの中央に、一つの球が打ち上げられた。
プラズマの小球だ。
ったく、どれほど爆弾を使えばこんなデカい渦になるのか……
「蒼馬! 受け取って!」
忍羽の声が大穴から聞こえてくる。
水中から身を飛び出させ、その剣でプラズマを叩き割った!
「充填、完了!」
「そんなッ!?」
フミはもう十分な距離近づいてきている。
ただ、このままだと避けられる。
恐らく、「避けていた運命」とやらを使うのだろう。
……なら!
剣を力強く湖に突き刺すと、大爆発が発生する!
「何!?」
彼女の体は宙に投げ出された!
さらに爆発によって、剣の魔力が染み込んだ水飛沫が飛び散る!
そして、剣の刺さった部分は勢いで水が捌け、人一人分の足場が残る。
俺はそこに立ち、剣を抜く。
水飛沫の中央にいる彼女を見た。
彼女は今、アンダーコモンの特異性により、運命を否定する水飛沫の檻に閉じ込められている。
今から、その檻ごと叩き潰す!
「さぁ、これで終わりとしよう」
『Liast Final Drive!』
剣を低く構え、その刃の行く先をしっかり定める。
「やめろぉぉ!! それだけはぁぁ!!!」
深く深呼吸をし、全身全霊、その一撃を放った。
「”曦”!!!!!」
一撃が、振り上げられた。
夜明けを誘う閃光が、月を飲み込み、大空を覆う。
その一撃、彼女は一切避けることができなかった。
その輝きに、目が離せなかった。
光が収まると、湖の水はほとんど蒸発し、泥の上に彼女は横たわっていた。
「月は……満月は……あんなに輝いてるのに……それを覆い隠すなんて……」
掠れた声で、そう言った。
変身が自動で解除される。
剣を収め、答えた。
「月は確かにすげぇ、でも、一番輝いてるのは太陽だし、そいつがなきゃ誰も生きていけない。それこそが必然的絶対の運命だ」
夜が明ける。
日が昇る。
燃えるような朝日の光は、彼女を照らしていた。
「……まぶしい」




