#8 昔はスタント目指してた
残りの弾は1発。
敵は全く疲れているようには見えない。
さて、どうするか……
見たところ、あまりタフには見えないし、ずっと意地でも避け続けるあたり、防御は弱いのかもしれない。
しかし、先ほど俺を片手で床に叩きつけたそれなりの筋力の持ち主。
いや、ムキムキな人でも銃で撃たれたらひとたまりもないし、あの筋力が理由で防御が低い事自体が否定されることはない。
とにかく、一撃加えたい。
アイツはさっきから基本的に避けばっかりで自ら攻め込んできたのはさっきの一回。
でも、銃を構えればすぐ逃げ出していった。
……なら、逆に相手が攻撃しやすいペースに持ち込むか?
……怖いな。
かなり度胸いるわこれ。
いや……でも……やるしかないか。
どうせ死んでも生き返れるって話だ。
ヤケになるにはまだ早い気もするがヤケだ。
銃をバッグの中に戻し、両手でバッグを持つ。
「蒼馬……何する気?」
「ちょっと愚行」
バッグを持って、怪物へと一気に駆け寄り、振り下ろす!
しかし、当然軽々しく避けられる。
いや、あまりにひどい動きに怪物は余裕を見せる。
バッグの振り上げ、何かがバッグの口から溢れた。
怪物は軽々とそれを避けた後、バッグに噛みつき投げ飛ばす!
バッグは部屋の離れた壁にぶつかり、そのまま落ちた。
怪物はヨダレを垂らす。
その目は、完全にこちらを捕らえている。
勝利を確信し、獲物に飛びつく目だ。
「蒼馬! 危ない!」
愛鈴はステッキから光線を放ち続けるが、いずれも避けられ、だんだんと怪物は近づいてくる。
そして、ついに怪物は口を大きく開け、こちらに飛びかかった!
「バーカ」
右袖の中から、銃が姿を現す。
乾いた破裂音が辺りに響く。
怪物は床に落ち、飛びかかった勢いの分地面を擦った。
風穴となった口内からだんだんと灰になっていく。
銃をしまう動作を見せた後、バッグの振り上げで拳銃を落とし、手と腕を伝い、死角にしながら、ジャケットの袖の中に隠す。
袖に隠すところが見られてたかは不明だが、銃が見えてるだけでかなり警戒される。
だから、バッグに一度入れた。
バッグを経由することに効果があったかは不明だが。
馬鹿の考えた技。
こういうのをいざって時だけ成功させれば最高にカッコいいな。
「怖……」
「いや引くなよ……てか柊命の方!」
「あっ! やば!」
彼の方を見ると、一人でかなりの接戦をしていた。
身長の高い怪物との戦い、柊命はその身のこなしで敵の腕や肩を移動しながら避け続け、攻撃の機会を伺う。
柊命が隙を見つけて切り掛かり、怪物は傷つきながらもその一撃を巨大な筋肉で受け切ってカウンターの一撃をノーガードの柊命にぶつける。
一般人ならあの一撃で頭蓋骨がへこむだろう。
そんな攻撃を何度も受け、互いにボロボロになりながら戦っている!
「そろそろフィナーレと行こうじゃないか。互いにもう終わらせたいだろ?」
柊命が剣を掲げると、その剣に炎が纏い始める。
「”極琰抜閃”!」
炎が竜のような姿へと変わり、その刀身は赤熱化していた!
灼熱を纏った一撃が振り下ろされる!
怪物は背中の4つの腕全てで全力で止めにかかる!
が、その刀身はどんどんと肉を割き、食い込む!
「ウオォォォォォォォァ!!!」
剣が、その体の中心に深い一筋の傷を与え、怪物は後ろへと倒れた。
「この技を使わせるとは……見事だった」
剣を鞘に収める。
住宅街の地下人知れず、二つの戦いが終わった。
……いや、終わってはいなかった。
「研究員どこ行った!?」
俺が気づけた一等賞に。
「マジだ! いなくね!?」
「奥! 部屋に逃げたかも!」
「お前ら追うぞ!」




