#69 母なる凶星、還るは彗星⑤
「「”アムリュジア・フレア!!!!”」」
剣先から、巨大な光線が飛び出していき、星を呑み込んだ!
空中にて、星の影を覆い尽くす、大爆発が発生した。
「……これは……勝てた?」
「……勝てたんじゃない?」
凶星は未だ、煙に包まれている。
だが、確かな手応えがあった!
「やった! これ勝っただろ!」
「ハイタッチ! ハイタッチ!」
愛鈴が両手を大きく上げる。
次の瞬間、空気中に大きな振動が伝わった。
それは煙の中から。
まるで、心臓の鼓動のように。
一定周期で。
ドクン、ドクン、と。
空気の振動によって、星を覆っていた煙が消える。
気づけば夜空となっていたその空に、一つの星が再び姿を表す。
卵。
近くのどんな建物よりも巨大な卵。
緑の微光を放ち続ける卵。
ゆっくりと、ゆっくりと鼓動する。
「なに……あれ……」
「とんでもねえ……化け物だ……」
鼓動が、段々と早くなる。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、
異世界に転生してから長い時間が経つが、ここまで胸騒ぎがしたのは初めてだ。
ただ鼓動を聞いただけ。
それだけで、全身の感覚神経が異常を伝える。
全身の運動神経が、逃げるように促す。
ド、ド、ド、ド、
絶句するしか、なかったのである。
殻に、ヒビが入った!
『グア゛ァ゛ァ゛ァァァァァ!!!!!!』
中から、星を破り、新たな生が誕生した。
数多もの魔物、人、生物が混ざり合い、還った。
まさに、惑星そのもの。
青と緑の半透明で、煌めく姿はまるで、
……彗星のようだった。
「柊命……ヤバくない、これ?」
「……どう考えてもヤバい!」
顔が青ざめていく。
先ほどの攻撃で、ほとんどの魔力を使い果たしてしまった。
彗星は、ドラゴンのようで、4本の足と煌めく巨大な翼、宝石のような赤い目をしている。
見惚れてしまいそうでもあり、悍ましくもある。
「今は魔力残量がマズい! コイツを放置したらどんな被害が起きるかも検討がつかないが、今はひとまず逃げるぞ!」
「うん! わかった!」
駅の屋上から愛鈴を抱っこし、慌てて降りる。
魔力を回復するためには、何かを口に加えてからだいたい3時間ほどが必要となる。
……魔法少女と異世界人では、少しばかり魔力の性質が異なるはずだ。
「愛鈴、そっちは魔力の生産に何か食ってからどれだけ時間がかかる?」
「えっと……大体30分くらい」
「30分だな? 信じるぞ」
近くにあったカフェのガラス窓を蹴破り、中に入る!
中には誰もいない。
「悪いけど、これ貰ってくぞ!」
カウンター裏に入り、大量の砂糖が入った瓶を取り出す。
「愛鈴、あーん」
「え? いや、そんな、恥ずかし……あー」
彼女の口の中に砂糖をぶち込んだ!
「あ、甘いよ! 甘すぎるよ!」
「コーヒーいるか?」
「私みたいな小学生には無理だよ!」
「……いいか、この戦いが終わったら、なんでもしてやる! だからキツイだろうが協力してくれ」
「ひゃ…ひゃい……」




