#64 画竜添生②
私たちは今、忍び達と対峙している。
そして、そのリーダー格の存在、流畏咲。
彼女の名前は里にいた頃聞いたことがあった。
忍び界の神童にして終焉。
彼女のような存在が忍びとしてみなされる限り、忍びという存在は限りなくファンタジーに近いものとなると言われている。
梨疾羅の明らかに量、耐久性、破壊力が常軌を逸したワイヤー、私の隠し玉。
それらはあくまで「常人には無理」の範疇ではあった。
しかし、彼女のソレは違う。
極めて魔法に近い何かだ。
敵にバレずに情報を持ち帰るというかつての忍びにおける役割は完全に消滅した。
どんどんと、人として出来ることから離れていき、だんだんと異常的な戦いに身を委ねていった。
「あなた……洸ヶ崎ね?」
「やっぱり、知ってるんだね」
「もちろん! かの有名な名家だもの!」
「あなたの事は以前にも調べた事があるの。有名な家の出でもない。それどころか、忍びの家系ですらない。そんなあなたが何故……?」
「遺伝が強さに関係するとでも?」
「事実的に」
「……そう。でもごめんね! 私強いんだよね!」
彼女はそう言い、どこからともなく巻物を取り出し、首元の絆創膏を剥がすと、青い血が流れ出す。
首元に巻物を当てると、どんどんと血が吸われていく。
「それじゃ、やろっか」
巻物を広げた瞬間、中に描いてあった水墨画内の動植物が飛び出した!
虎が、兎が、鶴が、ツタが、どんどんと飛び出していく!
「”召伝・墨界”」
白と黒で構成された生物、植物が次々と出てくる!
「な、なにこれ!?」
針を飛ばすと一撃で風穴が空き、虎は消滅する。
が、しかし、敵の増えるスピードの方が早い!
巻物の中から次々と溢れ出る!
「ちょちょ、早いって!」
「ほーらほーら、どんどん増えてくよー」
相も変わらず巻物の芯を首元に当てながら水墨画の生物を出し続ける!
つまり、あの首元が供給源!
「雄一、取り巻きは任せられる?」
「あぁ、任せろ」
彼は次々と敵を倒し続ける。
耐久はそれほどなく、彼の拳が敵を貫く。
そして、白と黒の墨が彼の腕に被着する。
「あーあ、汚れちゃってるよ」
そう余裕そうな言葉を漏らす彼女に向け、針を何本か飛ばす!
「おっと」
すると彼女は首を曲げ避けた。
依然として巻物を当てながら。
「はっずれー」
巻物から多数の鶴が飛び出し、襲いかかる!
マズい!
そう思った瞬間、目の前に雄一が立ち塞がり、鶴の大軍を押し留めた!
「大丈夫か、月宮?」
「う、うん!」
拳銃を取り出す。
弾はあまり多くないが、あの針を避けられるならこれを使うしかない。
「彼女には近づけない。なんとかして彼女の首から絵巻を隔離させる。その瞬間を狙って攻撃を仕掛けて」
「了解した」
拳銃の標準を定めようとする。
「お、作戦会議はもう終わりだね?」
一発、放った。
「甘い」
軽く、受け流される。
「銃口、見せつけないでよね。もうバレバレだよ」
彼女は、その場から一歩も動かず、ひたすらに避け続ける。
そして、道が白黒の動植物や亡骸によって埋め尽くされていく。
「……さて、そろそろメインといこうかな?」
そう言い、彼女が指を鳴らした瞬間、彼女が召喚してきた全てが破裂し、白と黒の液を撒き散らした!
液が目に入りそうになり、思わず目を閉じてしまう。
目を開いた次の瞬間、世界は黒と白で染まり切っていた。
そして、彼女の背後には長い体を持った龍が現れていた。
「”絶界・画竜添生”」




