#63 Under Comon①
俺は今、夢の中に閉じ込められているらしい。
果てしなく続く洞窟の中、歩むのを止め、その場に座る。
そして、自身の記憶と認識から生まれた謎の影、それが今、俺の前に座っている。
「で、何か話したいことはあるか? どうせ外部干渉がない限り起きれないんだ。暇つぶし、付き合うぜ」
「うーん……」
これって自問自答の形にはなるんだよな?
「……率直に、漫画を描く上でのストーリー制作の能力って、上がったと思うか?」
「いや全く」
「うん、まぁ、薄々は気づいてた」
「大体、ここ数日は漫画描いてないだろ。それに、何か作品を作ろうって気概がない」
「サーセン、落ち着いてきたらやります」
自分に対して掛ける言葉にしてはあまりに強すぎる。
「……てか、絶対俺以外の意識も混在してるだろお前」
「あぁ、そうだな。具体的に誰とは言わないが合ってる。だが何故そう思った」
「俺の知らない情報混ざってた。柊命がどうこうって」
「お、当たり」
俺ってこんなヤツなの……?
「……さて、そろそろ本題に入りたい」
「本題?」
「ここから抜け出す方法」
「ないよ」
「あるよ多分」
「具体的にどうすると?」
「それはわからない」
「なんだよそれ」
実際、解決の糸口は見つかっていない。
それに、夢の中から自発的に目覚める方法などない。
「いや……アレならできるか?」
「アレって?」
「俺が分かるならコピーのお前も分かるだろ」
「……入眠時ミオクローヌス」
「とは別物の似た症状、寝てるときに落下する夢を見て擬似的に危機感を察知、体が起きる症状。あれを使う」
「それで麻酔が解けるのか?」
「わかった事をいちいち聞くな。一応言うと、これはレム睡眠であり、明晰夢だ。かなり浅い眠りについている」
「つまり、危機感知で起きる……と?」
「ま、そうなるな」
「面白い、コイツをくれてやる」
カードを5枚投げられる。
キャッチし確認してみると、左腕の機構に使う例のカードであった。
その内2枚は知らないカードだった。
1枚はピンクのコスモス、もう1枚は赤いリコリスだ。
「心当たりはあるだろ?」
「……これ本人以外からもカード出るんだ」
恐らく、コスモスが愛鈴、リコリスが柊命だろう。
「だが、それだけじゃまだ不安だよな?」
「そうか?」
「あの紫髪の魔法少女、彼女にこれらのカードで勝てるとでも?」
「さあな」
「無理だと断言しておこう」
「俺とは別認識の存在からのありがたいお言葉か?」
「あぁ、そうなるな。お前はまだ、”アンダーコモン”を使いこなせてない」
「アンダーコモン?」
「お前の腕に巻いたその機械だよ」
自身の左腕を見る。
お前……名前あったのか。
「数多の世界線における特異性であり常識性。自身らには当たり前だが、他の世界にとっては明らかに異常な点。お前はそんなものをここ1ヶ月、よく見てきた」
「愛鈴の世界には当たり前のように魔法少女がいて、忍羽の世界は俺の世界と似ていながらも超常的力を持った忍びがいた」
「そして、柊命の世界は言うまでもなく異世界、雄一は……愛鈴と同じか」
「柊命は転生者だから最初からその特異性を意識していたが、忍羽は『普通の世界』といった感じの事を言っていた。愛鈴だって、『あの魔法少女』みたいな感じで、さも芸能人ですよーくらいのノリだった」
「これが常識の違いだ」
世界ごとの特異性……
「そして、このアンダーコモンはそんな特異性を身近な人々の生き様や思考を見ていく中で抽出し、カードとして力に変える。共通的常識の深層部分にある特異性を抽出する装置、”Under Comon”。これがその語源だ」




