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#61 母なる凶星・還るは彗星②

 魔物だとか、エヴォクションだとかじゃない。


 存在してはいけない、厄災だ。


「”焔天斬”!」


 気づけば、体が勝手に動いていた。


 あれを野放しにしてはいけない……と。


 放った一撃は、凶星に一つの小さな傷を与えた!


 しかし、1秒の間にその傷が肉で埋まる!


 ……次の瞬間、視界は数多の触手で覆われていた。


「なッ!?」


 触手は足と腕を絡め取り、ゆっくりと体を凶星へと引き摺り込む。


「危ないッ!」


 数本の針が飛び触手を全て切断した。


 体の拘束が外れ、そのまま床に落ちる。


「柊命! 大丈夫!?」


「……近接はマズいかもしれないな」


 愛鈴が弾丸を数発放った。


 全て、避けることもなく凶星に命中した。



 しかし、2秒で全ての薬莢が凶星の体内から排出された。



 銃弾を撃ち込まれた部分からは目玉が生え、ギョロリとオレらを見つめる。



「ひぃぃぃ!? 怖いよ!」


「近接もダメ、遠隔もダメ、最悪だな」


「こうなったら僕が……」


「お前はガチ接触だからやめろ」


 何か、何かアイツにダメージを与える方法はないのだろうか?


 ヤツの恐ろしさは溶解力と再生力だ。


 今思いつく方法は、一撃で体を真っ二つにするとか、そのくらいだ。


「今はひとまず非接触技で戦うぞ! 愛鈴と忍羽は遠隔で攻撃を! そこのお前は蒼馬を探してくれ!」


「了解!」

「わかった!」

「応!」


 ヤツを一撃で葬れる技。


 無いわけではないが、愛鈴の援助を受けて尚魔力量が足りない。


 その上、撃てたとしても、真っ二つになっても再生する可能性は大いにある。


 ……厄介なヤツだ。


 何本もの触手が、こちらへ向かってゆっくりと伸びる。


 忍羽が針を飛ばし、愛鈴が魔法を放つが、その圧倒的な数に間に合わず、少しずつ、少しずつ近づいてくる。


 ……愛鈴の魔法が明らかに弱まっている。


 本来、両手で魔力を補給していたステッキが片手でしか使えないせいで魔力供給量が減っているんだ。


 マズいな。



 すると突然、空から何十本ものクナイが現れた!



 穴を囲むように多くの忍びがいる!



「な、なんだ!?」


 凶星の目の位置が上へと動き、忍者達を見上げた。


 そして、凶星はゆっくりと、ゆっくりと地上へと上がっていく。


 それを見た忍者達はすぐ離れていった。


「……マズい! アイツ外に出たぞ!」


「僕らも追おう!」


「でも蒼馬が……」


「多分大丈夫。結構タフだし、きっと戦いが終わった頃に目覚めて電話してくるよ」


「忍羽ちゃん……わかった! 行こう!」






「それで、話って何ですか? フミ様?」


 とあるカフェの2階にて、2人の女性が話していた。


 ひとりは元凶こと運結フミ。


 もうひとりは赤い、長い髪をした少女だ。


芳朱ほうしゅよ、貴方に研究内容の資料やサンプルを全て任せる」


「それはまた……突然ですね」


「考えてもみろ、幹部4人のうち1人は敗北後行方を眩まし、1人は今さっき配下によって吸収、そして、もう1人は恐らく今日明日に亡き者となるだろう」


「数日で壊滅しちゃいましたね」


「これもまた仕方ない。どうせ貴方以外は即席で集めた紛い物だ。元より信頼なんかしていない」


「私もそう思ってました」


「それに、私も危険な状態にある。仮に陽奈山蒼馬がさらに力をつけた場合、私でもどうなるかわからない」


「あれ? 彼って今麻酔で起きないのでは?」


「それで済めば良かっけど……特異点だから何をしでかすかわからない」


「怖いですねー私が〆てきましょうか?」


「いや、多少の危険が伴えど彼を研究することは非常に有意義な事になる。それこそ、Ω種の魔法を完成させられるかもしれない」


「確かに……それなら研究が終わってから〆ましょう」


「あぁ、そのつもり」


 2人がふと窓側を見ると、遠くで巨大な肉塊のバルーンが飛んでいた。


 店内の客達はそれにカメラを向け、一心不乱で写真を撮っている。


「私たちは帰りましょうか」


「ええ」

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