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#60 母なる凶星・還るは彗星①

2025年 5月3日 (SAT)



 全身の痛みと共に目が覚める。


 気づけば体の一部が土砂に埋もれ、地下深くにいた。


 先ほどのモグラ……ホームモールの仕業だろう。


 大型の魔物で2匹の夫婦でダンジョンひとつに匹敵する巣穴を作ると言われているが……それが4体、そりゃこんな大穴開くわ……


 地下室は完全に崩壊しており、天は地面で覆われながらも、隙間から微かに陽の明かりが漏れている。


 もう朝……いや昼か。


 本来白であったであろうが液に漬けられていたせいで緑に変色した患者衣を絞り、液を落としながら周囲を見渡す。


 ……オレの防具が見当たらないし裸足だ。


 戦への参加はキツイか……いや、あれは大型の魔物だ、いくらあの4人でも無茶だろう。


 腕を伸ばし、右手を広げると、どこからともなく愛用の大剣が現れる。


 そして、それを静かに掴んだ。


「……お前ら、大丈夫か?」


 今度は、仲間たちがいないか見回す。


「……うん、ここだよ!」


 最初に、愛鈴が起き上がった。


「痛ッ……」


 次に忍羽が。


「厄介な事になったな」


 そして雄一が……


「……蒼馬は?」


「あれ? いなくない?」


「まだ気絶してるんじゃないか? 僕らで探そう」


 そい言うとすぐ、皆で近くの瓦礫を漁り始めた。


 しかし、蒼馬の姿は見当たらない。



 すると突然、光の漏れていた天が大きな音と共に崩壊した!



「お は よ う ♡」



 残念ながら見つかったのは、イーステイムだった。


 いや、さらに残念な事に彼は厄介なモノに乗っていた。



 “空飛ぶ肉塊”



 それはまさに、大穴を塞ぐ凶星であり、異常な大きさで空を飛び、ゆっくりと降りてくる。



 どうやって浮いているのか、そんな事すら気にしなくなる異様性。



 生きた肉の塊。



「それじゃ、悪いけどあなた達は利用価値以上に危険性が高いの、だから処分させてもらうわ」



 肉塊から、無数の触手が伸びる。



 それら一本一本の先端は、オオカミの爪のように、イカの触手のように、鷹の足のように、それぞれ異なる生物のように特徴が現れている。



 いや、異なる生物だったのであろう。



「これこそ、タワシの最終兵器! “冥母”! 数多の魔物達を飲み込み! その力を! 血肉を! それら全てを自らへと吸収し完成した生きた墓場! あぁぁぁぁ!! ゾクゾクしちゃうわ!!!」



 そう言って彼は頬を凶星へとスリスリする。



 すると突然、彼の皮膚が溶け始めた!



「あら……?」



 彼の皮膚が、肉が、凶星との接触部から段々と飲み込まれていく。



「なに……これ……!?」



 男はどんどんと溶けていく。



「嫌……嫌! 嫌ぁぁぁぁぁ!!!!」



 そのまま、体を激しく動かし、シルクハットが地に落ちた頃、彼の肉体は完全に消滅した。



 部分的に溶けたシルクハットが、足元に落ちる。



 圧倒的な光景だった。



 この世のものではないような。



 見ればSAN値が削られる、異形の怪異。



 魔物だとか、エヴォクションだとかじゃない。



 存在してはいけない、厄災だ。

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