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#51 ※活動内容には個人差があります

「運結様! 映像記録持ってきました!」


「ご苦労」


 ゴルディジェネラは運結フミの元へと戻っていた。


 そして、戦闘中にスーツに仕込んでたカメラのデータが入ったUSBを渡した。


「では、拝見しよう」


 USBをパソコンに差し込み、映像を流す。



『レイヤーチェンジ!』


 映像内の少年が腕につけた機械の蓋を押し出すと、青い花びらが舞い散り、変身した。


 そして剣を強く握り、切り掛かる。


『おっと』


 が、軽く手で受け止められてしまう。


『はぁ!?』


『よわっちいなあ』


『こ、この馬鹿力ぁ!』



「……なるほど」


「どうっすかオレの戦いぶり! もうアイツなんてただの雑魚同然で!」


「首は?」


「はい?」


「首は持ってきたのかと聞いている」


「いえ、逃しました……でも、あんなの取るに足りな……」


「この大馬鹿者が!」


 魔法少女は光剣を手に持ち、男の首元に迫った。


 剣が僅かに触れ、首からは血がたらたらと流れる。


「一目でヤツの可能性に気づけなかったとは……傲慢にもほどがあるぞ」


「は、はい!」


「芽は生える前に摘め。全く、これだから幹部どもは役に立たないんだ」


「すぐに! すぐに仕留めてきます!」


「はぁ、頼んだぞ。全く……」






「怪人が出たぞ!」


 男の叫び声とともに悲鳴が上がる。


 怪人は街灯を折り、車を飛ばし、ビルのガラスを破る。


 この程度、この世界においては日常茶飯事だった。


 そして、新人だった僕にとってもあまり焦る事はなかった。


 僕は、「アンタは天才だ。よってこのオレが指導してやる」とゴルディジェネラ社長に言われ、現場にやってきた。


「いいかレッド? まずは様子見だ」


 この頃、まだ正式にヒーローとしての登録がなかったため、スーツの色にちなみ、レッドとだけ呼ばれていた。


 新人は皆、最初は適当な呼ばれ方で、2年ほどの研修の末、正式な名前がつく。


「様子見ですか?」


「ああ、ヤツを襲うタイミングをじっくりと見定めるんだ」


 社長はビルの屋上から鋭い目つきで怪人を睨む。


 その視線の先には、怪物と少女、そして成人男性がいた。


「@&_@&_@&_!!!」


「ふざけるな!」


 エヴォクションの近くにいた男が殴りかかろうとするが、長く細い尻尾によって捕らえられる!


「まずい! 助けに行かないと!」


 体を乗り出した瞬間、社長は黄金の拳を僕の前に広げ、静止した。


「社長!?」


「いいか? アイツは駒だ」


「は、はぁ!?」


「男は怪人の強さを誇示するいい餌になる」


「何を言って……!?」


「アイツが殺されれば、”普通の人じゃ手に負えない”怪物となる。そこで、オレらが捻ってやればたちまち名声が得られるって訳だ」


「そんな事許されるはずが……!」


「そういう社会なんだよ」


「……それでも!」


 助けに行こうとするが、男の巨大な拳で止められる。


「落ち着けって」


「それじゃあ! あの人が!」


 男は尻尾に巻き付かれ、尻尾はだんだんとエヴォクションの口元へと近づいていく。


「俺は……俺は負けねぇぞ!」


 男は震えた声で、憎悪を込めた眼差しでエヴォクションを睨みつける。


 しかし、男はなす術もなく飲み込まれてしまった。


「……!?」


 次にエヴォクションは男の近くにいた足を怪我して動けない少女を向いた。


「@&_!!!」


「誰かぁぁぁ!! 助けてぇぇぇぇぇ!!」


「よし、行くぞレッド。決めポーズをしながらだ」


「……」


 先ほどの光景が頭から離れない。


 戦いの中で一般人が巻き込まれて死ぬところは見たことがあった。


 しかし、こうやって意図的に殺されてだなんて、知らなかった。


「こりゃ使い物になんねえな」


 社長が1人でビルから飛び降りた。




 戦いは難なく終わった。


 社長は、傷ひとつなく帰ってきた。


 どうしても、解せなかった。


 僕は、後ろめたい気持ちのまま昨日襲われていた少女の病室に向かった。


「……ヒーローさん?」


「……うん」


「あなた……屋上で、ずっと見てたよね」


「……」


「ずっと! 私のパパが殺されるの見てたよね! 助けられたよね! 私の、私のパパを! たった1人の肉親だったパパを!」


「……」


 少女はボロボロだった。


 それでも、泣き、叫び、怒った。


「どうして! どうして見殺しなんかにしたの!」


「……」


 彼女のちぎれそうな声とひぐらしの鳴く音だけが、その病室にあった。






「雄一……雄一……」


 どうやら、寝ていたようだ。


 もう何年も前の事だってのに、未だ月に一度ほど夢に出てくる。


「あ、雄一起きた」


「……すまん寝てた」


「疲れてるだろうしって、1時間くらい起こすか起こさないか葛藤してたんだよ!」


「あぁ……すまんすまん。で、なんだ?」


「おやつとってきて」


「……あぁ……なんか最近子供帰りしてないか?」


「おかあさまの圧力が消えたから、本能的に年相応の精神状態になったのかな?」


「年相応ならそんな事言わないだろ」


 近くに置いておいたクーラーボックスから飲むタイプのアイスを取り出す。


 そして、硬い蓋を開けた。


「ほれ」


「ありがと」


 愛鈴が右手でアイスを飲み始める。


 場に沈黙が流れた。


「……愛鈴は、戦う時に演技したりするのか?」


「うん、するよ」


「やっぱり、本当の正義ってもんはないのか……?」


 人々を助けるためにヒーローになったのに……


「正義と悪の問題は難しいよね……正直なところ私たちが扱っていい内容じゃない気がするかな」


「そうか?」


「そうともそうとも! みんな生きるのに精一杯だから、私たちだって襲いかかる脅威を正面から迎え撃ってるだけで、正しいかどうかなんてわからないし……いや、エヴォクションがどうこうは完全に善性でやってるかな……?」


「そうだったのか……」


「というか、正義か悪かを語ろうなんて傲慢だよ! 演技や演出をこだわるヒーローとか魔法少女は金や承認欲求に忠実で、人を助けようとするヒーローや魔法少女は他人に忠実なの。結局、違いなんてそんなもんなんだから!」


「……」


 他人に忠実……


「人はみんなある程度の自由が認められてるんだし、その中で何を目指しても、それをとやかく言うのも、全部エゴなんだから!」


「そう…か」


「雄一は節度を持って自分の欲求に従ってれば、きっといい方向になるよ。正義になりたい? それなら自分が正しいと思うことを好きにやればいいじゃん!」


「好きにやる……」


「他人が取りこぼした正義を君が拾えばいい。そしたら君もみんなもハッピー」


「そう…か?」


「あーもう話終わり! これ以上こういう話したら頭おかしくなりそう! 小学5年生に善悪の話を解かせようするんじゃないよ!」


 空になったアイスの容器を投げてくる。


 ドリンクタイプだからふにゃふにゃで痛くないがなんか嫌。


「とにかく、好きにやりなよ! 節度を持って! 節度を持って!」


「2回言った」


「節度を失った結果がおかあさまだから……」


「あぁ……」


 気まずい空気とひぐらしの鳴く音が部屋に流れた。


 ……あれってアルビノ種の蝉だ。珍しい。


 すると突然、勢いよく扉が開かれる。


「金ピカマンがまた出たみたい! それも駅の近くの駐車場で!」


「あぁ、わかった。すぐ行く」


「私は1人でもしばらくは大丈夫だから、行ってらっしゃい」


「すぐに着替えてくる」


 駆け足で自室へと戻った。

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