#50 ボルシチバニラ
2025年 5月1日 (THU)
あの後、黄金男……名前忘れたな。
なんだっけ? ゴル……ボル……ボルシチバニラだ!
アイツは俺たちが去った数分後に消えたらしい。
どうやら、関東各地で怪物が数分だけ出てきて人々を攫い、消えるといった現象が多く起こっているらしい。
「次にアイツが出てくるまで待機か……」
「そうなりそうだね」
そんな会話をしながら今日も朝食を作る。
「このお玉、かなり疲弊してるな」
「三不粘の被害者がここにも……」
「今度買い直さなくちゃな……」
「あ、そうだ。時間あるしお米の炊き方教えよっか?」
「あーそういやそんな話したな」
昨日は俺が米を炊いたが、何かしっくりこなかった。
やっぱり忍羽の炊く米はすごいんだなって、改めて思わされた。
「代わりに、和食以外がうまく作れないからさ、教えてくれないかな……なんちゃって」
「おう、三不粘作るか?」
「それは遠慮しとくよ……」
「そうだな、マイナーな料理じゃなければ教えられるぞ」
「それじゃあ! ピザの作り方教えてよ!」
「あ、ピザぁ……俺もあんまり作ったことないけど……生地から作る?」
「作りたい!」
「それじゃ、柊命が戻ってきたときのお祝いで作るか」
そんな近い未来の料理計画を立てながら、米のとぎ方、炊き方をひとつひとつ丁寧に教えてもらった。
「金の鎧……」
柳沢雄一は苦悩していた。
かなり、思い当たる節があった。
彼の世界においてヒーローは基本的に事務所に所属し、活動する。
そして、名を売り、グッズの売り上げがボーナスに繋がる。
ヒーローとして生きていくには、派手に、悲劇的に、そして感動的に戦いを演出しなければならない。
ここまでやらなくちゃいけないのも、競合がいるからこそだ。
競合は、戦うだけで華々しい。
ただその場にいるだけで名前が売れる。
生きている世界が違うのだ。
魔法少女とは、力も人気も違う。
あの世界においての強者は魔法少女であり、ヒーロー達はそれを模倣したものにすぎない。
魔力は、魔法少女しか持つことができない。
本当に、厳しい世界だ。
「金の鎧ってことは……まさか社長が……それに、黄金の拳って点でも合致する。て事は、やっぱり彼なのか……?」
ヒーロー達は、今日も正義と商売の境目で葛藤する。
彼らには、両方を選ぶ贅沢な選択はないのだから。
「というわけで、作戦会議を始める」
4人で愛鈴の部屋で話し合いを始めた。
「……なんでここ?」
「だって運結、最近寝たきりで申し訳ないって言ってただろ」
「あ、まぁ、うん」
「だから、話し合いだけでもって。んで、議題なんだが、金ピカ野郎が硬すぎてダメージ通らない!」
「金ピカ野郎?」
「愛鈴には話してなかったな。実は幹部と戦ったんだがそいつが金ピカ野郎でな、どんな攻撃も硬すぎて通らないんだ。ヤバい。勝てない」
「それ多分ヒーローのゴルディジェネラだね」
「あそうそう、そんな感じの名前だった!」
「やっぱ、運結もそう思うか」
「元幹部だから知ってた」
「愛鈴……幹部だったの?」
「うん」
「もう少し早く言って欲しかったかな」
「愛鈴、詳しいのか?」
「うん。ヒーローゴルディジェネラ、自らヒーロー事務所を立ち上げて現在は業界トップ。本人も超大人気ヒーローとして戦っていてその派手な見た目と鋼鉄の肉体は人々の人気を呼んだとかなんとか」
「弱点はわかるか?」
「いや?」
「ッ……そうか」
「弱点なら僕がわかる」
「マジ!?」
「ほんと!?」
「あの人はかつてエヴォクションの実験のモルモットとして改造され、不覚にも鋼鉄の肉体を得て、ほとんどの攻撃は通らなくなった。ただ、強すぎる力には耐えられるが、一方で強い衝撃を受けると皮膚より下にある肉や内臓に人一倍ダメージが入りやすい。つまるところ、斬るとかより殴るとか、叩くとか、そっちの方が効くな」
「なるほど……つまりハンマーか」
「いや、ハンマーに限った話じゃないんだが……そうだ、あの人と戦うとき、僕も連れてってくれよ」
「お前、本当にどっちの仲間だ?」
「彼には因縁があるんだ……仮に組織を裏切るとしても、僕は決着をつけたい。自分の信じた正義を貫きたい」
「……そう。いいけどさ」
「これからもよろしくね」
「ああ、よろしく」
「まだしばらく私の介護よろしくー」
「……あはは」




