#43 アンダーコモン③
柊命は、魔法少女を前に倒れていた。
「柊命!」
「そんな……!?」
こんな光景、初めて見た。
確かに、以前彼がドラゴンと戦っていたときはどこか危なげではあったが、大丈夫だろうという信頼があった。
だからこそ、今目の前に起きているこの事態を信じられなかった。
「ああ、あの無能はやられちゃったか。やっぱり、魔法少女を雇っておけばよかった」
紫の髪の魔法少女は、そんな言葉を吐き捨て、こちらへと寄ってくる。
怖い。
純粋に、そんな感想が出た。
「逃げる? 戦う? どっちにしても君たちは殺すけど」
「……戦うに…決まってんだろ」
忍羽も後ろで首を縦に振っている。
「そう、じゃあさようなら。”スムマヌス”」
彼女の手元に、光り輝くバチバチとした剣が現れる。
彼女はそれを握りしめ、刃先をこちら側に向けた。
「”レヨン”」
剣の先端から、8本に渡る白い光線が、畝りながら飛んでくる!
それらは直接当たることはなかったが、8本全てが地面に衝突すると、眩い光を放ちながら大爆発を巻き起こした!
体が吹き飛ばされ、地面に倒れる。
立ちあがろうとしても、体に力が入らない!
「はぁ……弱すぎ」
少女は、輝く剣を手放すと、剣は光の粒子となって消えた。
「”クピードー”」
今度はハートの装飾が多く施されたピンク色の剣が現れた。
そして、少女はそれを空高く投げ出すと、剣からオーラが漏れ出す。
それはやがて人の形を形成し、剣を握った。
「興が冷めた、あとは任せたわ」
そう言うと、少女は気絶した柊命を抱え、空を切り裂くと、ワープホールのような空間の裂け目が現れた。
「じゃあね、負け犬さんたち」
「待てッ!」
少女と柊命は、空間の裂け目の中に消えていった。
慌てて追いかけようとする!
しかし、オーラによって構成された、虚な存在がそれを阻み、剣の柄頭で頭を強く殴った!
「ッ……クッソ!」
立ち上がり、その影に向かい殴りかかろうとする!
攻撃は影をすり抜け、すり抜けたところを裏から切り伏せられる!
「ッ!!!」
強い衝撃。
激しい痛み。
全身の血が引いていく。
地面に倒れ込む。
「よくも!」
忍羽が雨のように針を投げるが、そのいずれも当たらず、通り抜けていく。
「……」
影は何も言わずに剣を振るうと、斬撃波のようにハートの物体が大量に発生し、それらが忍羽の周りで爆発する。
「忍羽!!」
爆破の衝撃で吹き飛ばされ、地面で何度も転がり、動かなくなる。
「クソ…が……!」
目頭が熱くなる。
もう、頼れる人はいない。
頼れる人は……
それでも……!
叫び声を上げながら、影に向かい、再び殴り出す!
当たらない。
手応えがない。
それでも、やり続ける。
「……」
何も言わずに、影は剣を無常に振るう。
何度当たっても、挫けず、何度でも立ち上がる。
”頼る”じゃない、自分でなんとかするしかないんだ!
何度も立ち上がり、斬撃のような爆破で大きく吹き飛ばされる!
ポーチから、何かが転げ落ちた。
それは、ずっと肌身離さず持っていた白い箱だった。
『少々事情が変わってね、命の保障ができなくなってきたんだよね……』
彼女の言った通りだ。
かつて殺されかけたとき以上の絶望感がある。
背負ってるものが、昔と違う。
忍羽を守りたい。
柊命を助けたい。
愛鈴をそのままにはしておけない。
皮膚が焼けそうになるほど熱い箱を握りしめる。
「俺はもう…頼るだけじゃない! 俺だって、みんなと一緒に戦うんだ! 仲間でいたいんだ!」
影を、箱を握る手で殴りかかる。
攻撃は、すり抜けた。
でも、何か手応えを感じた。
「俺も、背負うんだ! 仲間として! この未来を! 宿命を!」
白い箱が、光り始めた。




