#39 哀Love①
とある地下通路、そこには白髪混じりの長い髪と髭をした男が静かにあぐらをかいていた。
「この人で合ってんの?」
「うん……そのはず」
愛鈴を探す道具を得るため、この辺りにいると言われている忍者の道具の製作者を探していた。
「すみません、あなたが忍者の道具を売ってる人ですか?」
「……」
返事がない。
「あのーすみませーん」
「……」
全く反応しない。
「蒼馬、ここはオレに任せろ」
柊命がわって前に出る。
「なぁじいさん。俺たちはどうしてもアンタの道具が必要なんだ! だから力を貸してくれ!」
「……」
反応なし。
「ッ……!」
柊命は汚い言葉が口から出そうになったが、慌てて口を抑えた。
「ねぇ、これって……」
忍羽が男の目の前に立つと、突然口をこじ開ける!
「ちょ、ちょっと!」
「あっ、やっぱり!」
忍羽が口に手を突っ込んだ!
「ちょ、何やって……!」
「あれ、お客さんかい?」
突然、角から目の前の男と瓜二つの男が現れた!
「やっぱり、ダミー人形だったんだ」
「はっはっは! 中にボタンがあったのに気づいたか!」
「お前が……その道具の製作者か?」
「その通り! このワシこそがお主らの探してた人じゃ!」
「あいや、探す上でのステップというか……」
「そ、そうなのか!?」
「ふーむなるほど。つまりその少女を探すためのものが必要じゃと?」
「はい、そうなんです。どうか貸していただけませんか? お金ならあります!」
「頼む、貸してくれ!」
「いいぞ! ただ、ワシはいつもここにいるから、今後とも御用達にな!」
「ありがとじっちゃん!」
男はポケットから何か木の箱のような物を取り出した。
そして、指でなぞると、リモコンの電池を入れるところのように蓋がスライドし、外れた。
「ここにその探している人の大切な物を入れるんじゃ! そうすれば見つかるぞ!」
「大切な物……持ってる?」
「いや、私は……柊命は持ってそうじゃない」
「なんでオレ?」
「いやだって、いつも仲良しじゃん」
「お、確かに」
「まあ仲良しではあるが……アイツの大事な物……」
柊命は顎に右手を当て、考え出す。
そして、しばらくの沈黙の末、剣を取り出し、ピンクの紐がついた鈴のキーホルダーを取り外した。
「これは……オレとアイツが出会ったばかりの頃、オレの剣に取り付けた物なんだ。『心配だから』って……コイツが大事な物なのかはわからない。でも……」
キーホルダーを木の箱に入れる。
すると、箱は小刻みに震え始めた!
「動いた!」
「ほう、かなり強い反応じゃ! これなら日本中どこへでも探しに行けるぞ!」
「じっさんマジか!?」
「うむ! こんな心地よい反応久しぶりじゃ! ほれ! とっとと探しに行くがよい! ソイツは探している人の方を向いてる間、小刻みに震えるぞ!」
「ありがとうございました!」
「また来ます!」
「ありがとなじっちゃん!」
箱の震える方向へ、走り出していく。
「達者でなー!」
辺りはすっかり暗くなり、そこし離れたところにある街と近くの街灯のみが光源となった。
新月の今日、海面が映すものは何もない。
……てっきり来ないかとも思った。
でも、やっぱり来ちゃったな。
「愛鈴!」
街の方から、走って柊命たちがやって来た。
「お前、無事だったのか!」
蒼馬が喜んだ。
「心配したんだよ!」
忍羽が安堵した。
「……愛鈴」
ただ1人の男だけが、本当にこの状況を理解しているように思えた。
「あれ愛鈴? どうして変身してるんだ?」
蒼馬が前に一歩進もうとするのを、柊命が牽制する。
「お前ら……2人ともどうしたんだ?」
「様子が変だよ!」
「……」
「……」
彼はやっぱり、よく私のことを見ている。
だから、罪深くも惚れてしまったんだ。
袖を捲り上げると、紫の刻印が姿を現した。
「愛鈴……なんだそれ……?」
蒼馬は困惑している。
無理もないだろう。
「やっぱり、流石柊命だね。私のことを少し見ただけなのに」
「お前とも、もう付き合いは長くなったからな」
楽器ケースから大剣を取り出した。
「やるんだろ? お前から来い。思ってることがあるなら先にぶつけろ」
「しゅ、柊命!?」
「ちょっと! 本当に何してるの!?」
「……ごめんねみんな。そしてさようなら」




