#35 基本はパーティ戦
左前方から、拳銃が空中を舞い、飛んでくる。
ドラゴンも気づくのに遅れ、目の前を通り抜ける銃の道筋を妨害できなかった。
拳銃は見事な放物線の軌道によって、綺麗に左手に収まった。
「この前のお返しだ」
先ほど誰もいなかった階段には、いつのまにか蒼馬たちが来ていた。
「いつの話だよ」
呆気にとられ無防備となったドラゴンの逆鱗を狙う。
弾を全て放った。
軽い反動とともに5発の弾丸が飛んでいき、そのうちの1発が逆鱗に命中、その鱗を剥がした!
ドラゴンの肉質が露わとなる!
「そんな!? そんな事ってある〜!?」
「あんたの敵は私だよ!」
愛鈴たちが、すぐさま後ろの男と戦い始めた。
「肉が剥き出しになっちゃあ、もう近づく必要もないな」
人差し指を噛み、僅かに血を垂らし、空中に「槍」の文字を書く。
すると、「槍」の文字の魔法陣から、激しい炎を纏った槍が現れる!
「”紅槍”!」
魔法陣を蹴ると、その槍は飛び出していき、ドラゴンの肉を突き刺した!
そして、そのまま槍は突き進んでいき、ドラゴンの喉に、完全に風穴を開けた!
狼狽えるドラゴンに一気に近づき、大剣に最大出力の炎が纏われる!
「”火之迦具土・散絶”!」
剣を振るうと、巨大な炎がドラゴンを包み、塵も残さぬように激しく、激しく、燃え上がる!
そして、炎のオーラによって巨大化した大剣でその炎を真っ二つにぶった斬ると、炎は全て、巨大な爆発へと変わった!
爆発の跡、砂煙が消えると、そこにはあの巨大なドラゴンの姿は残っていなかった。
「あら? あらあらあらあら!? 倒しちゃったの!?」
「アンタの相手はこっちだ……」
「黙りなさい」
力強い一撃が、愛鈴の腹に直撃した。
愛鈴は、そのまま床に倒れ込む。
すかさず、蒼馬が愛鈴と男の間に立ち、忍羽が愛鈴を抱えて一度下がる。
「いや〜ブラボーブラボー! まさか本当にタワシのかわい子ちゃんに勝っちゃうだなんて……それじゃあ、タワシはこれにて失礼」
「あ、おい待て!」
そう言うと、男はシルクハットから煙を出し、気づけば消えていた。
「……勝てたね」
「ああ、お前らあってこそだ」
「だって蒼馬」
「いち早くこの場所見つけたのはお前だろ」
「あ、そっか!」
突然! 地面が大きく揺れ出す!
「な、何!?」
「あ、言い忘れてたけどエヴォクションの基地って、組織の規模がデカいと自爆装置とかあるんだよ」
「お前! それ早く言え!」
「このままだと俺ら瓦礫に埋もれて死ぬぞ!」
「と、とにかく逃げようよ!」
「いやーこのパターンは久しぶりだねー」
「呑気にしてる場合か!?」
蒼馬たちがやってきた階段を急いで駆け上がっていく。
「まずいまずいまずいまずい!」
「急げぇぇぇぇぇぇ!!!」
「な……なんとか逃げ切れた……」
「柊命なんかゾンビみたいな出方だったね」
本来入口があったらしい場所が閉じていて、そこから急いで逃げようと手を突っ込んだら、思ったより壁が薄く、海外のゾンビ映画のように地面から手が生え、そのまま地面をこじ開けて脱出した。
幸い、誰も見てはいなかった。
「ま、街は戻ったみたいだね」
「よかった……」
安堵感で地面に倒れ込んだ。
「柊命ぁ〜!」
「痛ッ!」
その上に、愛鈴が飛び乗った!
「もう! 無事でよかったよ!」
「お前なら、この程度なんとかできるってわかってただろ」
「私たちが助けに行ってなかったらこうはならなかったんだよ!」
愛鈴に首元を掴まれ、ぐわんぐわんと振り回される。
しばらくすると、落ち着いたのだろうか立ち上がり、少し離れた。
「ったく、帰るか。迷惑かけたな」
「次からは無茶すんなよ。背負いすぎんな」
「ああ」
夕陽の落ちる中、帰路に着く。
「今日の夜ご飯はなんだ?」
「あーどうする?」
「今日はカット野菜が安かったから肉野菜炒めにしよっかなーって」
「やったー!」
「それじゃあ、俺は副菜でも作ろうかね」
また日常へと帰っていく。
「……いよいよかな」
小声で何か、聞こえた気がした。
火之迦具土・散絶
火の神の名前を勝手に借り、柊命が名付けた技。
多大な魔力を消費し、巨大な爆発を起こす。
ただし、前提条件として、対象の体のどこか一箇所を自身の魔力によって強化を受けたもので貫かれている必要がある。
基本的に対巨大生物用の技であり、対人での需要は低い




