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#32 車ひとつ走ってない

『というわけで、施設には特にこれといったヒントはなかったよ。午後は私たちの方でも探してみるから。それと柊命、電話越しに何か愛の言葉をかけ……』


「ああ、ありがとな」


 愛鈴からの通話を切った。


 手掛かりなし……か。


 午前の間、1人でヤツらが昨晩飛んでいった方向でアジトを探していたのだが、一向に見つからない。


 何が「デカいから見つかる」だよ、見つかんねえよ。


 ……はあ、ここまで進展ないものか。


 早く見つけないと被害者がもっと……急がなくちゃ。


 あのドラゴンはどこへ行ったのか?


 飛んでいった方角には……マップを見ても何かがあったようには見えない。


 だからこそしがみつぶしに探しているのだが、もっといい探し方はないものか。


 普段、施設は地下などで多く見つかるが、あの手のサイズのヤツは施設から出すためには広い出入り口が必要だ。


 つまり、人の多いところの可能性は低い。


 ならどこだ?


「……公園か!」


 先日、幹部の男は「気づいたらどっかいっちゃう」と言っていた。


 が、snsのタイムラインにて事件発生前を調べても、あのドラゴンに関する情報が一切出てこない。


 仮に遠くから飛んできていたのなら、空を見た誰かが写真はなくとも、ラグがあれど、snsに投稿しそうなものだ。


 それに、昨日は満月が綺麗に見えるほど雲ひとつない夜だった。


 雲の上で飛んでいたという線はないに等しい。


 そして、「気づいたらどっかいっちゃう」といった説明から、それを素直に受け取るならば、誰かによって意図的に運ばれた可能性も低い。


 つまり、多くの人には見つからず、他者の協力なしで移動できる範囲。


 つまり、先ほど至った答え、公園となるわけだ。


 昨日の公園、何かが隠れているかもしれない!


 そうと決まれば走って向かっていった。






 レンタルサイクルを借り、公園までやってきた。


 空いているスタンドに自転車を返却し、公園の中へと入る。


 この辺りは立ち入り禁止とはなっていないが、明らかに2週ほど前に訪れたときよりも人が少ない。


 子供たちの笑い声も聞こえてこない。


「……クソッ!」


 苛立つ拳を罪なき木にぶつけた。


 別に折れたりはしなかった。


 流石オレより恐らく長生きな植物だ。


 ま、んな事言ってられる余裕もないか。


「はやく……はやく見つけなきゃ……」


 走っていく中で、昨日ドラゴンが現れた橋に辿り着いた。


 下に道路が走ってる、いわゆる高架ってやつだ


 一応、魔法が使われたかどうかの確認を済ませるため、鉄柵を越え、橋の側面を掴んでぶら下がり、裏側を確認する。


 別にこうする必要はないのだが、何もなかったらすぐに公園内に戻りたいし。


 橋の裏を覗くと……良くも悪くもない誤算、魔法陣の残滓が見つかった。


 ドラゴンほどの巨大なものを運ぶためには巨大な魔法陣が必要だ。


 きっとそのときのものだろう。


 魔法陣があるという事は、逆探知で場所はわかるが、遠い可能性がある。


 ポーチからビニール袋を取り出し、魔法陣付近の空気を片手で集める。


 もう公園に戻る必要はなさそうだし、このまま真下にある道路に降りよう。


 手を離して、両足と袋を持っていない右手で着地する。


 瓦礫によって、この辺りの道路は通れなくなっている。


 そのため、近くには吹き飛ばされ放置された車しか残っていない。


 この残滓は……今すぐ解析するか。


 ポーチから残り少ない魔力の詰まった瓶を取り出し、それを残滓の入った袋に入れて混ぜ、地面にぶちまけた。

弁明


 魔力瓶あるなら愛鈴の魔力吸う必要なかったじゃん!と思う人もいるかもしれません。


 しかし、魔力を体内に移すためのステップが違います。


 人から受け取る場合は自身の血や魔力に反応させ、即座に受け取ることができます。


 しかし、自身と性質の近しい魔力でなければできません。


 魔力の詰まった瓶は飲むことによってものの10分程度で自身の魔力と同化させ、使えるようになります。


 しかし、瓶に詰まった状態はプレーンのため、どの性質とも合わず、即座の回復には使えません。


 と、いうお話。

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