#27 月下美人④
雷ビームを放ち、激おこなドラゴンはその黒い体に雷を纏うと、鱗の一部が黄金のような輝きへと変化した。
その姿は恐ろしくも厨二心を引くかっこよさがあり、まさに生きる大災害と言った感じだ。
……いや、んな事言ってる場合でもないよな。
コイツをどうにかしないと、間違いなく街がいくつか消える。
別に結果として倒せれば修正力でどうにかはなるが……そういう問題じゃないな。
倫理観を問われるそれだ。
「どうする愛鈴?」
「どうしよっか……」
互いに策がないんだよな。
「ひとまず……突っ込んでみる」
大剣を鞘に納め、足に力を込め、ドラゴンめがけて高く飛び上がる!
刹那、ドラゴンと目が合った。
すると、ドラゴンは大きく翼をはためかせ、巨大な竜巻を発生させた!
「ヤバッ!?」
体を捻り、なんとか竜巻を避けるが、これじゃ近づけそうにない。
なんとかバランスを直し、着地する。
「愛鈴……」
「なに?」
「今のオレらじゃ勝てん」
「……やっぱり?」
「だが、このまま逃げるわけにもいかない。この戦いにおける俺の思いついた結末を3つ言う。どっちが出来そうな方を選んでくれ」
「わ、わかった!」
「ひとつ、アイツを宇宙に放逐する。そしてもうひとつ、近くのなんらかの基地に誘導して押し付ける。最寄りだと入間辺りだな。最後に、オレたちみたいに他の戦力がいる事に賭ける」
「どれも無理じゃない!?」
「なら他にあんのかよ!」
「ないよ!」
「どうする? オレとしてはどれもイマイチお勧めできん」
「そりゃそうだよね……2は現実問題無理。入間には遠すぎるし、軍が出たところで倒せる保証がない。1は過程が思いつかない。火山でもないと難しいよ。3は……運だね」
「運だな。それに勝てる保証がない」
「でももう3しかないじゃん!」
愛鈴はステッキから魔法陣を作り出し、そこから何かの筒を取り出した。
「発煙筒か?」
「うん。この発煙筒を使っておけば半径10km以内の魔法少女は反応してくれるはず」
「あのレベルの相手だと、何人くらいで勝てると思う?」
「……20」
「ッ………!」
「もうこれしかないからね! いい!? やるよ!?」
愛鈴は筒の底を叩き、床に置いた2秒後、煙が空高くに打ち上げれられた。
しかも、その煙は魔力に満ち溢れていて、瞬く間に魔力が拡散していく。
「これで10分くらいして来なかったらきっとそれ以上は来ないと思う」
「10分間耐え凌げって訳か」
ドラゴンと再び目が合う。
そして、ドラゴンの口元に再び光が集まっていく!
「マズい!」
オレは右に、愛鈴は左へと避けた。
近づきさえしなければどうにかはなるか……
「愛鈴、最低限のダメージを与えるための遠隔武器はあるか」
「ないよ。私のステッキも中距離だし」
「……仕方ない。苦手だがやるか」
右の人差し指を噛み、血を出す。
「な、なにやってるの!?」
「コイツで倒すのは無茶だが、10分間、できる限りはやってみるさ」
ポーチから包帯を取り出し、人差し指に巻き付ける。
そして、指を動かし、空中に赤く「火」の文字を書く。
「何これ!?」
火の文字を殴ると一つの火球となり、ドラゴンへと飛んでいく!
……当たりはしたが、あまり効いてるようには見えない。
「ッ……やっぱダメか」
「なに!? 何アレ!? 何!?」
「オレの魔術は血を使うんだよ。ただ、今みたいに血の量が少ないと大した火力が出ない」
「なにその新事実!?」
「基本は近接タイプだからな、基本使わないんだ」
だがまあ、当たることはわかった。
もっと血を犠牲にすればなんとかその場しのぎ程度には……
あと9分、やるしかないか。
再び、血を使って宙に「火」を描き、飛ばす。
が、効かない。
ドラゴンも「何かしたか?」といったような眼差しでこちらを見てくる。
「こうなったらやってやろうじゃねえか!」
宙に「炎」と書く。
「喰らえ!」
文字を殴ると、先ほどの2倍ほど大きく、激しく燃え盛る火球が飛び出していく!
「……」
が、しかし、ドラゴンは冷めた顔つきでひと息吹きかけるだけで火球を消してみせた!
「は、はぁ!?」
「ありゃりゃ」
全く効いてない!?
突然、ドラゴンは雄叫びを上げた!
すると、周囲の天気が曇り始め、雷が大量に落ち始める!
さらに、雨も降り始めてしまう!
「ヤバいって!」
「柊命! 一旦逃げよう!」
「逃げてどうする! アイツの獲物は完全にオレらだ! アイツの素早さはさっき見ただろ! あと6分もすれば援軍来るだろ!」
「それが……最大で10分くらいってだけで、本来近くに他の魔法少女がいたらもっと早く来てるはず……」
「……」
ドラゴンが口からビームを放つ!
「危なッ!?」
さらに避けた先へと狙ったかのように次々と雷が降る!
動き止めたら死ぬ!
一時的に避難しようと人のいない車の窓を割り、中に入るが、雷の威力は凄まじく、一撃にして車が凹んだ!
物理干渉じゃねえか!
「もう私たちでやるしかないよ!」
「ああもう! どうにでもなれの精神だ!」
車から転がり出て、その端を上げて壁代わりにする。
愛鈴の壁の方へと転がり込んできた。
「どうする? もうこの壁はそんなに持たないぞ」
「何か、何かあの魔法でもっと火力を出せないの!?」
「字を濃くして画数を増やせば火力は上がる。だがいささか魔力量が足りない」
「そんな……」
「……魔力、貸してくれるか?」
「え?」
「お前の力がどうしても必要なんだ!」
愛鈴の両手を掴む。
「え……え! え!? そ、そんな私には……」
「お前しかいないんだ!」
愛鈴の顔が赤く染まった。
言い方が悪かったか。
「お前の魔力を分けてくれ!」
「う……うん」
愛鈴が左手を差し出す。
「ありがとう」
愛鈴の人差し指を甘噛みした。
「!!!!!」
彼女の皮膚を通して魔力が流れてくる。
以前、一時共闘した魔族とこれをやったことがあったが、魔法少女の魔力はなんだか他と感じが違う。
なんだか……少し苦くて、どこか雑味がある。
本当に同じ魔力なのか疑いたくなるレベルだ。
「そそそそ、それで魔力、すすす吸い取れるの……?」
「ああ、皮膚を挟んでても問題ない」
指から口を離す。
「ありがとな、愛鈴」
「は、はひ……」
車の上に乗る。
そして、空中に「爍」の文字を力強く、濃く書く。
技を放つ直前、ドラゴンはこちらに向けて竜巻を飛ばしてきた!
が、もう止まらない!
「”閃爍”!」
文字を蹴り、飛ばす。
すると、極々小さな一つの白い球が飛び出していった。
弾が竜巻にぶつかって瞬間、眩い輝きを放ち、大爆発を起こした!
周囲の音は消え、耳鳴りが激しい。
そして、光が辺りを満たし、視界が白一色の世界へと一瞬にして変わっていった。
そして2秒後、その全てが結果として残った。
地面はまるで隕石でも降ったかのように、大きく、激しく抉れていた。
ドラゴンはというと……結論から言うと倒せていなかった。
が、目に見えて多くの傷が残っている。
翼を傷つけ、地面に立っている。
……一矢、報えなかったか。
オレと愛鈴は、息を呑んだ。
いよいよ誤字確認とラビ振り以外で投稿前の確認をしなくなりました。
あとは過去の自分を信じるのみ。
過去の自分「フザケンジャネェッテ」




