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#25 月下美人②

 戦いは熾烈を極めた。


 最初は公園内で戦いが始まった。


 最初こそはワイヤーを垂らしておきながらもクナイで斬りかかったり、投げたりと、基礎的な動きの繰り返しだった。


 が、開始3分ほど。


「やっぱり、期待通りだ! 本番といこう!」


 梨疾羅は戦いながらだんだんと移動していき、背後に回ったその瞬間、垂らしていたワイヤーを伸ばし、俺の背中を叩きつけた!


 以前より力を増したワイヤーは体を大きく飛ばし、近くの建物の屋根に衝突し、そのまま建物の中に落ちていった。


「危ねぇ!」


 空中に固定されている何かに手をかける。


 それは飛行機の模型の羽だった。


 ……あぁ、そうだったな。


 ここって飛行機の展示場だったか。


 小さな飛行機のレプリカが床に置かれたり、天井に吊されたりと、大量に置かれている。


「なるほど……確かに最高の狩場だな」


「でしょ?」


 梨疾羅は俺の空けた天井の穴からこちらを覗く。


「にしてもよく耐えたね。本当に人間?」


「バリバリ人間だわ! 舐めんな!」


「そう? それじゃ、ここからは互いに本気出そうか」


 袖から、以前の数倍も長さのあるワイヤーを何本も出し、建物内に張り巡らさせた。


「ここはもう、私のテリトリーだよ」






「柊命! アイツ速いよ!」


 夜の街中、ドラゴンは、周囲を圧倒するスピードで飛び、その風圧で辺りの車を吹き飛ばしながら進んでいった。


 愛鈴は飛んで追いかけ、オレはガラ空きとなった道路の上を走っていた。


「普段なら見なかったことにするのに、こっちの世界だと見逃したら大災害起こるのウゼエ! 普通は人里には近づかないってのによ!」


 オレはまだ、ドラゴンを狩ったことはない。


 オレの世界のドラゴンどもはすでにほとんど狩り尽くされており、素材が劣悪なものと、まだ人の手には負えないものしか残っていないのだ。


 旅半ばの実力じゃ、ドラゴンを狩ることなんて夢のまた夢。


 生きたドラゴンの鱗をひっぺがすだけで家族代々伝わる秘宝にできるレベルだ。


「倒す計画はあるの?」


「ない! けどやるしかねえ!」


 以前、旅の最中に使ったドラゴンに喧嘩を売るだけのアイテム、竜の角笛を使うときが来た!


 息を大きく吸い込み、角に最大限の空気を送る!


 角からは轟音が溢れ、ドラゴンも思わずこちらを振り返った。


「あれは……ストームドラゴン!? 特定災害級生物じゃねえか!」


「ストームドラゴン?」


「本気で羽ばたけば嵐を起こし、その口からは雷を出し、さらに天気すら自在に操れるとかいう、出てきたら村の人間全員逃げろって言われているバケモンだよ!」


「やばくないそれ!?」


 ドラゴンの口に光が集まる。


「まずッ!」


 足に力を込め、強く飛び跳ねる。


 そして、愛鈴をキャッチして地面に降りると、先ほど愛鈴がいた場所に超巨大な雷のビームが放たれた。


「……」

「……」


 その威力に、ただ唖然と見ることしかできなかった。


「や、ややややヤバいよ柊命!!」


「お、落ち着け!! ひとまずアイツの行動を見極めるぞ!」






 蒼馬と梨疾羅の戦いは、一瞬にしてすっかりと見えなくなってしまった。


 梨疾羅の事だし、見せしめに私の目の前で本気を出すと思ったが、どうやら彼女もそれどころではないようだった。


 どんどん、離れていく。


 かつての私と彼女のように。


 建物に向かって走り出した。


 もう、遅れないように。

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