#21 地下が広すぎる
2025年 4月11日 (FRI)
昨日のバスターミナルの惨状によって、今日の講義は緊急で中止となった。
まあ、残当だ。
むしろ好都合。
「それじゃあ、今から特訓を始めるよ」
忍羽は普段と違い髪を結んでいて服も動きやすいスポブラに短パン、そしてスポーツウェアだ。
最初は柊命が稽古をつけることになっていたのだが、今回の相手が忍羽の知り合いであり、また忍者を相手とした戦いに慣れるために忍羽が稽古をつける事になった。
場所はここ、倉庫の地下スペース。
「多分ね、蒼馬に足りないのは初見技の見切りと筋力だと思うの」
「まぁ……確かに」
筋肉はある程度つけていたのだが、基本それ以上に身のこなしの練習を多くしていた。
「私ね、武闘にはかなり自信があるの」
スポーツウェアからストップウォッチを取り出す。
「5分間、一度も反撃せずに避け続けて」
タイマーを押すと、忍羽は一瞬で距離を詰め、その拳が顔のギリギリを通り抜ける。
咄嗟に体を反らせていたため、なんとか避けられた。
次には回し蹴りをしてくる。
バク転して避け、すぐに体勢を立て直す。
が、猛攻は止まらない。
ひたすらに避け続け、1分が経った頃、それは起こった。
避けようと前を向いたまま後ろに跳ぶと、壁に衝突してしまった。
「甘い!」
強烈な蹴りが、顔面に直撃する。
そのまま、横たわった。
「蒼馬……相手しか見てない?」
「……あはは」
「なるほどね。なら、次はこうしよう」
目隠しを取り出し、俺の目元に巻き付ける。
「この状態で、3分、手加減はするから耐え切って」
「待て、ただでさえ見えてないのに、これ以上見えなくしてどうする?」
「気配で読み取って」
「んな無茶な……」
とは言ってもやるしかないのだろう。
このくらい、乗り換えられないとアイツには勝てない。
「それじゃあ、行くよ」
背後から気配!
「そこk……!」
「違うよバカ」
後ろかと思ったら目の前だった。
チョップが脳天に突き刺さる。
「いたい……」
「ほら次、行くよ」
今度は2時の方k……
7時の方向からチョップが飛ぶ。
「俺……これ苦手かもしれん……」
苦闘、3時間目。
「そろそろお昼にしよっか」
結果としては、1分半ほどは耐えられるようになった。
が、まだ足りない。
あと57時間、ペースが悪いな。
「こままじゃ……まだ……」
手っ取り早く強くなりたいとか、そういうのは高望みだとわかっている。
だが今は、それを成さなければいけない状況なのだ。
「ほら、おにぎり」
「ありがとな」
おにぎりを1つ手に取り、かじりつく。
「もっとペースを上げなくちゃ……か」
「蒼馬……」
「今は無理もしなくちゃいけない。仮に何かを代償に捧げなくちゃいけなくても、俺はそれを呑まざる得ない」
「別に逃げてもいいんだよ」
「ここで逃げたら、俺はこれからも逃げ続けてしまう気がしてならない」
「そっか……」
忍羽も側でおにぎりを食べ始める。
「任せっきりにはなっちゃうんだけど、私もいつか彼女とは何かしらの形で決着をつけなくちゃいけないって思ってたの」
「やっぱ過去に何かあったのか?」
「……うん。あれは私が本来は小学生くらいの歳だった頃の話」
1997年 11月21日 (FRI)
「ちょっと待て、遡りすぎだろ」
「世界線によって時代が違うみたいだからね。ちなみに私の世界は今2003年だよ」
「俺が生まれる前だ……」
1997年 11月21日 (FRI)
その頃私は、山奥のとある里にて忍者の家系として生まれた。
その家名は”洸ヶ崎”、里の2台名家としてかなり地位の高い家だった。
そして、もう1つの名家が”不二宮”だった。




