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#20 伝書カラス

 何故だろうか、連絡を受けた柊命たちが俺を迎えにくるまで、誰もバス停には来なかった。


 早期に介抱されなかったのは痛くて辛かったが、こんな惨状を誰にも見られなかったのはある意味で幸運だった。


「”ペインリカバー”」


 愛鈴の魔法によって傷が癒えていく。


(この名前が英語の「ペイン」と「リカバー」なのは、彼女が親に知らせず作った技だから)


「……マジで骨治ったかも」


「……すご」


「12時間以内の傷なら接合と治癒ができるよ」


「マジすげぇ」


 俺は、部屋でベッドに座っていた。


「まさか、お前の方にアイツが行ってたなんてな」


「それに、追い返しちゃうだなんて……」


「俺だって半熟者さ、あの状況、あれができる限りで最大限の攻撃だった。だから、いくら頑張ってもアイツを倒す事はできなかった。退けるだけで精一杯なんだ」


「で、でも!」


「それに、アイツは明らかに手加減をしている。アイツがワイヤーの攻撃を避けられなかったのもきっと、舐めてかかってたからだ」


「そ……そっか」


「結局、足を引っ張る事になっちまったな」


「最低限の被害で済んだからいいさ。それに、蒼馬が無事でよかった」


 突然、窓ガラスを何かが叩いた。


「何?」


 忍羽がカーテンを開けると、そこには足に紙が結びつけられたカラスがいた。


「……まさか」


 忍羽は窓を開けると、カラスは部屋の机に止まる。


 忍羽はその紙を取り外した。


「……」


 紙をゴミ箱に投げ捨てる。


「ちょちょ待て!」


「なんで捨てた!?」


「どうしたの急に!?」


「いや……ただ紙が巻き付いてただけだったから」


「いやめっちゃ読んでただろ!」


 柊命がゴミ箱から紙を拾い上げた。


「……」


 ゴミ箱に捨てた。


「おい待て!」


「一体何が書いてあるの!?」


「いや……そりゃ……ほら、愛鈴」


 今度は愛鈴が紙を受け取った。


「……」


 愛鈴は無言で紙をこちらに手渡した。


「おいバカ!」


「なにやってんの!」


「え何? そんなに俺に読まれちゃ困る事書いてあった?」


 紙を開く。


「……果たし状?」


『陽奈山蒼馬、今日の夕陽が降り始めた頃合い、私はかつてない屈辱を受けた。不二宮の名においてこのような事態は許されない。よって貴様にこの果たし状を送りつけた。来たる4月13の21時、互いのプライドを賭け指定の公園にて決闘を申し込む。私は誇りを取り戻すため、貴様は私の関与する研究施設の情報を得るため、命をかけた戦いをしよう。不二宮梨疾羅』


「……」

「……」

「……」

「……行くなよ?」


 柊命がまず声を上げた。


「……いや、行くさ。研究施設の情報を得られればかなり進展を得られるかもしれない。それに、決闘を申されて断るのはあまりよくないだろ?」


「無理だ! 今のお前じゃ勝てん!」


「相手はミスワンパターンだ。やってやるさ」


「んな単純な世界じゃねぇ! 決闘ともなれば相手はどんな工夫だってしてくる! 今回みたいに加減するんじゃなくて本気で殺しに来るんだぞ!」


「俺が死んでも、そもそものアイツの目的はお前らだ。いずれお前らに襲いかかって、そこで勝ってくれれば修正力で生き返れると思う。予防線は一応あるんだ」


「だがな!」


「俺は行く。断固として行く」


 もうこの意思を変えるつもりはない。


「蒼馬、死んでも生き返れる保証はないんだよ?」


「先日、スーパーでエヴォクションと出会ったとき死んでいたであろう人を昨日生きた状態で見かけた。だからきっと生き返れるさ」


「でも……」


「俺はやる。アイツとも、これまでの自分とも、どんなリスクを負ってでも決着をつけたい。ここで逃げたら、もう一生ダメな気がするんだ」


「……」


 はたから見れば、確かに無謀の極みだろう。


 一般人vs忍者。


 戦闘経験も、生きてきた環境も違う。


 でも、これを避けてはいけない。


 もしコイツらと一緒にいたいなら、もっと化け物みたいなヤツとも戦わなくちゃいけないのだから。


「……わかった。私は応援するよ」


 最初に声を上げたのは忍羽だった。


「私も、アイツとは色々とあるからさ、私が直接手を下せる訳じゃないけど、それでも決別しなくちゃいけない。だから、私には私にできる最大限のサポートをするよ」


 笑顔が……眩しい。


「それじゃあ私も! 頑張る人を否定はできないよ!」


「お前ら……」


 柊命だけは、まだ渋っている。


「ほら、柊命も」


 愛鈴が彼の腕を掴み、催促する。


「……たく、わかったよ! 絶対生きて帰れよ!」


「お前ら……」


「蒼馬! 明日は朝から特訓だ! いいな!?」


「ああ! やってやる!」


 夜が明け、希望の兆しのように太陽が光を差す。


「ひとまず今日は寝るぞ!」

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