#18 背中は遠いから
「かかってこい」
「私の鉄線殺法、見せてあげる」
なんとなく技名で察した。
こんなのさ……あからさまじゃん。
絶対ワイヤー使うって。
「”鉄鎖”!」
彼女の両手の袖から3本ずつのワイヤーが飛び出す。
だが、それは俺を狙ってではなく、周囲の木や停留所の柱に向かって飛んでいった。
そして、ワイヤーがそれぞれにまとわりつくと、今度は袖からワイヤーを引き抜き、投げ、また別の木や柱へとまとわりつく。
ワイヤーが張り巡らされた。
「……あぁ、そういうタイプか」
「触るとケガするよ」
「だろうな……」
これ……杖じゃ多少分が悪いか。
遠隔系の何か……持ってないんだよな……
「どうしたの? 攻撃してこないの?」
「ちと準備が必要でな」
「そ、じゃあこっちから行くよ!」
少女はワイヤーの隙間を華麗な動きで潜り抜け、一気にこちらへと近づく!
「なッ!?」
杖を構え……いや、間に合わない!
彼女のクナイが顔の表面を掠め取った。
体を反らせ回避しようとしたが僅かに遅れた。
彼女の猛攻は止まらない。
次々とクナイを振り回し、襲いかかる。
反った状態から足に力を込め、バク転をし、その足でクナイを蹴る。
が、本来は消費物。
彼女は懐からまた新しいクナイを取り出した。
次の一撃が振り下ろされる。
鉄製の杖で受け止め、火花が散り、杖は僅かに凹んだ。
ただでさえ焦げついてるのに、あーもう使い物にならねぇよ!
買い替えの運命を背負った杖をひたすらに振り、クナイを受け止め続ける。
どんどん後ろに追いやられてしまう。
「ちょうどこの辺りかな?」
彼女は手を止め、明後日の方向に6本のクナイを投げた。
一体何をして……
次の瞬間、巨大な質量が全身に襲いかかった。
それは、ワイヤーによって縛り付けられ、根本あたりが抉れた木であった。
その勢いのまま吹き飛ばされ、反対側の木へと激しく打ち付けられる。
ヤバ……口から血の味がする。
「そのワイヤー、そんなに馬鹿力があんのかよ……」
「特注だからね。あと一撃で終わりかな?」
あと一本で木の根本抉れるクナイバケモンだろ。
で、残り5本のクナイで進行方向上のワイヤー処理と。
エイム力もバケモンだな。
「さ、おとなしく降参したら? 別に取って食うわけじゃないよ。人質にね」
「やなこった」
後ろの木に寄りかかりながら立ち上がる。
「ここらで一発、自立したいんだ。もう足は引っ張りたくない」
自覚は結構あった。
最初に下水道までついてった辺りから、何かを守りたいでもない、助けたいでもない。
ただ興味でついていった。
結果は上手くいけてたのかもしれない。
しかし、あれは軽蔑すべき愚行であった。
あのときも、昨日も、たまたま上手くいっただけだった。
ここで、1人で戦えてこそ、アイツら安心させられるし、俺も心置きなくついて行ける。
実績が欲しかった。
ただそれだけだ。
「……来いよ」




