#16 そろそろ大学がヤバい
愛鈴の方も、あまり苦戦しているようには見えなかった。
「”アムリュジス”!」
ピンクの閃光が鷹の翼を貫く。
鷹はそのままバランスを崩し、片翼だけで飛ぼうと踏ん張るが、あえなく落下した。
「これで終わり! “ベゼプレジール”!」
(「ベゼ」口付け 「プレジール」快楽)
ステッキの先端から魔法陣が現れ、そこから巨大なハートがとび出し、爆発した!
ピンクの煙と共に、鷹は灰となって霧散した。
よし、大丈夫だったな。
ま、ここまでは想定内。
このメンバーでの不安要素なんて俺と……
「不二宮ぁ! さっさと降参したらどう!?」
「洸ヶ崎の血の野郎なんかには負けないよ! そっちこそ降参したら!」
「はぁ! 不二宮と洸ヶ崎は血ぃ繋がってるでしょうが!」
えぇ……
「これは……ガキの喧嘩か?」
「……じゃね?」
「がんばれしのはちゃーん〜!」
どちらも武器も特殊な技も使わない。
相手の頬をつねったり、髪を引っ張ったり、デコピンしたり……攻撃軽くね?
突然、2人がこちらに気づいた。
戦いが終わり、急に静かになったからだろうか?
「……」
「……」
二人は無言で取っ組み合いを止めた。
「これで勝ったと思うなよ!!!」
不二宮と呼ばれている少女が球状の何かを地面に叩きつけると、白い煙が広がった。
煙が消えて頃には、もう彼女の姿は残っていなかった。
煙幕だ……
「チッ……逃げられた。不二宮め……」
「改めて聞きたいんだけど、二人ってどういう関係なの?」
「……知り合いじゃないから!」
意地でも隠し通すつもりか。
「同じ女子としてさ、私にだけ秘密で教えてくれない?」
「……だめ!」
「え〜」
結局、話はつかずにそのまま家へと帰ることにした。
あれ、結局なんだったんだ……
「す、すげぇ!」
「米はね、こうやって炊くんだよ」
炊飯器から現れたのは、米の一粒一粒が立ち、輝くツヤを持ったまさに黄金の海のようであった。
時刻にして現在6時。
もう夕食の時間だ。
「俺もいつか……こうなれるかな」
「大丈夫。毎日しっかり教えてあげるから」
「まじ最高っす月宮様」
「ふふふ、もっと褒めてもいいんだよ」
何か、何かマウントを取れる料理はないのか!?
俺の得意な料理……得意な料理は……
米料理だったわ。
完敗です。
「んじゃ、揃ったし飯にするか。俺は2人呼んでくるから」
「はーい。それじゃあ私はご飯運んでおくね」
階段を登って、一時的に貸しているゲストルームへと近づく。
今は3部屋貸してるが、実はあと2部屋あるんだなこれが。
ほんっとうに広い家だ。
「お前らーご飯だぞー」
「はーい」
「すぐ行く」
こうやって呼びにくるのも大分慣れてきた。
そういや、未だに修正力で記憶が消えないな。
やっぱり、例の文章に書いてあった術者を倒さなくちゃダメなのか?
……さっぱりだ。
ただまぁ、こんな生活もたまには悪くないか。
こうやって、作った料理を食べてもらえる機会なんて高校以来だ。
こういう日々を大切にしていかなくちゃな。
階段を降りて、配膳を手伝いに行った。
「そういえば、昼のアイツはどこ行ったんだろうな?」
柊命がまず話題を振った。
「あれ……できれば掘り返さないでほしいなーなんて」
「そういう訳にはいかない。別にアイツ個人のプライベートとか人間関係について話し合う気は毛頭ない。問題はアイツが異世界の生物を連れていた事だ」
「あー確かにね」
「どゆこと?」
「つまり、アイツがエヴォクション、もしくは研究施設に関わってる可能性があるって事だ。ただ、誰かと言葉を交わして協力を持ちかけるエヴォクションは聞いたことないし、洗脳されてるようでもなかったから、恐らく後者の可能性が高い」
「つまり、不二宮がそういう施設と協力関係にあるってこと?」
「ま、そういう事だな」
「まあ確かに彼女なら……」
「……その不二宮ってやつがどんなヤツなのかは知らないが、なんとかしてアイツを誘き出し、施設を探し出さなくちゃいけない」
「何か心当たりはあるか? 嫌ならいいんだが」
「……わかった、必要情報だよね。彼女は不二宮梨疾羅。抜け忍の私を追って里から出てきたの。アイツが出てきたって事は、多分この街にいればまたそのうち……あぁもう! アイツなんかが私と同じ忍者だなんて! 考えただけで腹立つ!」
「なるほど、そういう関係だったのか。それじゃあ、あとは揺動しておけば時間がどうにかしてくれるって感じか」
「まぁ、そうなるかな」
「んじゃ、明日はオレと愛鈴、忍羽で今日行った街を1日かけてまわってく。蒼馬は大学言ってくれ」
「気が向いたらな」
「いや……戦闘能力は承知の上だが、流石に戦力が有り余ってるから大学行ってくれ」
「ま、どっちにしろ明日は行かなくちゃだったしな。単位落としたら実家に連れ戻されるんだ」
「んじゃ、そんなところで明日の予定は決まりだな。異論はあるか?」
「大丈夫!」
「俺は構わん」
「まぁ……仕方ないよね」
「んじゃ、決まりだ」




