#15 4日目の意思疎通
杖は非常に強い力によって奪われ、オオカミの足元に捨てられる。
「あっ……」
一転攻勢、オオカミはこちらを威嚇し、また低い唸り声を上げる。
……まずくね?
オオカミは飛び掛かる。
鋭い爪と牙を立てて。
「っぶな!」
ゲームの回避モーションのように転がり避けるが、オオカミの動きは速い。
尋常じゃない速度でこちらを向き、ふたたび襲いかかる!
このオオカミ、基本的に牙を主体として攻撃している。
いや、普通そういうものか。
恐らく飛びつき方的に、その爪で獲物を押さえつけ、その鋭い牙で仕留める戦術なのだろう。
しかも賢い。
避けながら杖に近づこうとしても、必ず杖の前に立ち塞がる。
常に自身の立ち位置を考え、徹底的に追い詰めようとしてくる。
というか、仮に拾えそうになっても、拾おうとすれば、それなりに距離があろうと一瞬であのオオカミに食い殺される自信がある。
オオカミが少しでも襲いかかりそうな素振りを見せたら、すぐに避けるようにしているが、一向に活路は見出せず、ただ体力を消耗していくのみだ。
周囲を一瞬だけ見回す。
何か、何か利用できそうなものは……
……一瞬、柊命と目が合う。
すると彼はこちらの状況を一瞬にして理解したようだ。
「蒼馬…….」
すると、柊命は武器を地面に突き刺した。
その延長上には杖がある。
柊命とこちらでは距離がそれなりにある。
彼が直接助け舟を出しても、この距離なら火力に欠ける。
そんな中、俺が彼から感じ取った意図は、信頼を置いた上での立て直しだった。
「……なるほどな」
ここであえて、オオカミに背中を見せるという大勝負に出た。
肉食生物に背中を見せることは、実質的に死を表す。
が、必要な賭けであり、そのリターンのためのリスクであった。
オオカミはまた飛び掛かる。
それに対し、逃げるように目の前の店に走り出す。
オオカミが俺より早く近づく。
が、この退路が戦況を変えた。
足に力を込め、跳び、壁を蹴る。
いわゆるカベキック。
自らの火事場の馬鹿力による高い跳躍、蹴りはオオカミの頭上を大きく通り過ぎた。
それだけではただの回避。
杖を拾おうものなら、すぐに殺される。
が、
「地炎塔!」
剣先からマグマのようなものが地を這うように進んでいき、杖の真下でマグマが小さな噴火を起こす。
その勢いによって杖は地面から押し出され、宙を舞い、オオカミの頭上で見事にキャッチする。
地面に着地し、再び杖を構えられた。
今の、あんなに完璧に杖を飛ばすとか、天才かよ。
オオカミは襲いかかる!
が、もうかなり見切った!
オオカミの攻撃を杖でいなし、杖を咥えられできた一瞬の隙を狙い、顎に蹴りを入れる!
いいのが入った……と思う。
オオカミはまた一回転して体勢を直す。
が、もうこれで終わりだ。
オオカミが襲いかかるよりも早く、”その足元を狙った”。
そう、今現在オオカミが立っているその地点は、先ほど杖が落ちていた場所。
先ほどの攻撃でマグマが溜まった場所だ。
残されたマグマが刺激によって全て解き放たれる!
あまり噴火は大きくはないのだが、オオカミは大きな損傷を得たように見える。
だが、先ほども言ったように決定打には欠ける。
だから先に杖を回収した。
先端が赤熱化した杖を焦げ付いたオオカミの腹に突き刺した!
杖が奥まで入る感覚。
それと共に、オオカミの体はだんだんと灰になっていき、他の魔物と同じように散っていった。
気づけば、柊命も同時に魔物を倒しおえたようだった。
柊命は親指を立て、こちらに笑顔を向ける。
助け舟を出しておきながら無傷で戦いを終えた彼の実力に底はまだ見えない。
圧倒的に、作者の語彙力と表現力が足りてないね、うん。
たまに、たまにね、読者の想像力に委ねることがあるんだよ。
そういうときは……頑張ってください。
自分も修行するんで……




