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#11 話のネタには困らない

 あぁ、外の空気が美味しい。


 外はまだ昼下がり。


 子鹿のように足をプルプルさせながら地上まで戻ってきた。


 長く険しい道のりだった。


「……一旦シャワー浴びるか」


 そのままどこに寄ることもなく家へと向かった。




「で、誰から入る?」


 家の中には俺と柊命、愛鈴と忍羽。


 忍羽はアテがないからそのまま居候ルートとなった。


 結局なんの世界線か分からなかったな。


「一応聞いておく。先に入っておきたいとかある?」


「ここは家主先じゃない?」


「え、いいの? じゃあ遠慮なく」


「その後、忍羽行っていいよ」


「あ、どうも」


「最後に私と柊命で一緒に入る」


「は? はあ!?」


「へーお前らってそういう関係……」


「違う! 違うから!」


「……ロリコン?」


「違うよ! オレ断じて違うよ!」


「ね、柊命? 一緒に入ろ?」


「やーめーろーよー! 一方的に社会的地位を削ぎ取りに来るな!」


「柊命は嫌なの?」


「嫌だよ」


「即答はひどくない!?」


「じゃあ俺は忍羽をゲストルームに案内するから。それまで好きにリビング使ってな」


「違うから! 置いてかないで!」






 夕暮れ、今日の食材が一人分増えて非常に困った。


 そんなわけで近所のスーパーに行ったのだが、昨日の惨状からは考えられないほどいつも通りの光景が広がっていた。


 なるほど、これが修正力か。


 感心しつつ今日の食材を買っていく。


 人が増えたわけだし、特別なメニューの方がいいか?


 二人の歓迎会もやってなかったわけだし。


 ……ピザパでいいかな。


 出前は取らないけど、ピザを数枚とポテト、あとはジュースを買った。


「ただいまー」


 エコバッグにそれらを詰めて帰ってきた。


 リビングの扉を開けると、台所に忍羽がいる。


「あれ、どうした?」


「いや、居候の身だし、炊事くらいはしておこっかなーって」


 その姿を見るに、どうやら米を炊いたところだったらしい。


「……非常に言いにくいんだけど、今日はピザパだから米は使わないかな」


「え……」


 米を研いでいた手が止まる。


「冷凍して明日の朝食べよっか」


「……うん」


「てか偉いね。家事手伝おうとするって」


「え……普通じゃないの?」


「育ちがいいな。あの二人は戦闘に特化してるから特に何とも思わなかったけど、全くそういう事言い出さないよ」


「そ、そう? そういうものかな?」


「ま、あんまり気張りすぎんなよ。別に俺も家事は好きだからさ」


「うん。ありがと」




「「「「乾杯!」」」」


 何も作りたくない上に祝い事の時のテンプレであるピザパーティが始まった!


「よっしゃオレビール!」


「柊命何歳?」


「え? 多分17歳のはず」


「カル◯スかコーラにしろ」


「私はカル◯ス!」


「じゃ、じゃあ私はコーラ!」


 全員未成年だからノンアルだ。


 というか俺も未成年だから誰もアルコール買えない。


「おっしゃどんどん焼くからどんどん食えよ!」


 俺はオーブンでピザを焼き、焼いてる間だけ食べれる。


 別に取り皿に取っておけば後で食べるから問題ない。


「……で、何から話す?」


「急に気まずくなるじゃん」


「いやだってさ、オレらまだ出会って3日だぞ! 忍羽に至っては今日の昼が初めてだし!」


「じゃあ、改めて自己紹介する? それぞれ別の世界線なわけだし、土産話の1つや2つあるでしょ」


「たーしかに」


「んじゃ、オレから行くわ。このオレ泉柊命は14歳の頃に友人のカルト的何かに巻き込まれて異世界転生したんだ! 異世界転生ってロマンだろ? だが! いざ行ってみるとクソ! 住めばクソってヤツだった!」


「どんだけクソだったの?」


「かなりクソ! マジでクソだった! なんせ言語の壁がデカすぎる! 天の授かり物だとかなんとかで1年でマスターできたが固有名詞は未だサッパリだ!」


「異世界って言語の壁あるのか!?」


「あったよ! マッッッッジで何言ってるかわからん! ただ、前代の転生者がいるおかげで日本語自体は解明されてて、旅には日本語が使える翻訳家がいたんだ! 向こうだと古代文字扱いらしいから考古学者だった!」


 自動翻訳的なスキルってパッシブで付いてるものかとばかり……いや、言語って地域によって構成や成り立ちが全くの別モノだから難しいのか?


「た、大変だな」


「多分この場にいる誰もこのネタ超えられないんじゃないかな?」


「じゃあ次は私! 運結愛鈴、魔法少女ソリアムドをやってまーす! ちなみに二つのフランス語を掛け合わせた造語だよー!」


「フランス語なのか?」


「なんか意外かも」


「なんかね、初代魔法少女がフランス出身らしくてね、その文化の尊重的な意味でフランス語を使うようにしつけられてるんだよね」


「フランスなのか……ヨーロッパならてっきり魔女狩り関連でイングランド……イギリス辺りが初出かと思ってた」


「結構その辺関わってはいるんだよね。噂だとイングランドで魔女狩りから逃げた一族の子孫が初出って説もあるらしいよ。それで! 魔法少女の業界ってのはね、すごく戦争なの!」


「あれ意外だな」


「てっきりオレも平和なものかと思ってたが……」


「みんな仲良しって程ではやってるんだけどね、実態は手柄の奪い合い! それにグッズの売り上げが給料に直結するから魔法少女間での金のやり取りもよく行われてるとか!」


「芸能界かよ」


「芸能界もそこまで酷くはないでしょ。……ないよね?」


「ま、大体そんなところかな。次は誰いく?」


「ここは俺が……」


「いや、私が!」


「いやいや、俺の話普通すぎてつまらないから!」


「私だってそうだよ!」


「安心しろ。オレら全員それぞれ違う常識を持ってるから何でもネタになる」


「確かに……おっしゃここは公平にじゃんけんだ!」


「「さーいしょーはグー! じゃんけん」」


「ポイ!」

「ほい!」


 俺はグー、対して忍羽はパー!


「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「勝ったぁぁぁぁぁ!!! 私の話!」


 自己紹介の順番決めでこんなに熱くなれるジャンケンがあるだろうか?


「私は月宮忍羽! どこにでもいる高校2年生の抜け忍!」


「お前忍者だったの!?」


 どういう世界なのか発覚するのが思ったより早かった!


「うん。でもそんな珍しい話じゃないでしょ?」


「珍しいよ! やっぱ俺インパクトで勝てねぇよ!」


「大丈夫だって! それで、私は中学までは山里で暮らしてたんだけど、ある日お父様と大喧嘩しちゃって、ほぼ勘当状態で抜け出してきちゃった! 今は同じ高校の自称探偵高校生の友達と一緒に暮らしてるよ」


「なんだろう、全員濃すぎる」


「んじゃシメ、蒼馬」


「嫌だよぉぉぉぉ! 勝てねぇよコイツらには!」


「おら話せ!」


「ッッッッッッッ……俺昔に殺されかけた事あってな、自分で言うのもアレだけど、実は俺結構いいとこ生まれでタワマン住みだったんよ」


「そういや愛鈴も前なんか反応してたな?」


「うん、陽奈山グループ。国内の家電量販店で4本指に入る超大手だね」


「すごいよな。一人暮らしの大学生で一軒家だなんて」


「え、親が海外旅行とかで人がいないとかじゃないの!?」


「んなテンプレみたいな感じじゃねぇよ。それで、親に会社を継ぐように昔から教育を徹底されてたんだけど、なかなか上手くいかなくてな。そしたらある日、姉さんがナイフを持って部屋に入ってきて、『一族の面汚しはここで死ね』って襲いかかってきたんよ」


「だいぶ話濃くね!?」


「んで、たまたま窓から叔父さんが侵入してくれたおかげで助かったんだけどさ」


「叔父が窓から侵入!?」


「どういう事!?」


「いや、実家さ、叔父さん出禁なんよ。だからたまに秘密裏に会ってた」


「お、おう?」


「ま、結果としては俺はおじさんの住んでる港町で高校卒業するまで暮らしてった。今は叔父さんの持ってた物件で一人暮らししてるんだけどな。ちなみに、その条件として倉庫の本棚を一つ丸々俺の関わった作品で埋めろとの事」


「……濃いなあ」


「大分トリでいい話だったね」


「いや、インパクトで言えば負けてるわ」


「んな事ねぇって!」


「いやだって、柊命と愛鈴に至っては超常的話だろ!」


「お前は常軌を逸してるんだよ!」


 レンジの音が鳴り響いた。


「お、焼けたな。ほら、どんどん食え!」

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