#10 上り終わりは足プルプル
廊下最手前の部屋、その扉を開くと大量にファイル留めされた資料が棚に収納されていた。
「これは……?」
「エヴォクションやこの世界についてまとめた資料室みたいなの」
なんとなくファイルを一つ取り出す。
“Ωレベルに分類される魔法の研究資料2”
1がない!?
「なにこれ?」
「さぁ?」
他の資料もタイトルだけではよくわからない。
“魔法少女の神格化条件の調査1”
“平行線上世界との半不可逆的融合方法”
“ねじれ関係にある世界について”
「……これって、重要そうじゃね?」
俺が手に取ったのは”新世界における研究、施設の設置計画”という資料だ。
開いてみると、そこにはまさしく俺たちの住んでいる世界についての情報が書いてあった。
「ちょっと読む。”2067年11月25日、我々は別の世界線を見つけた。いわゆる平行世界というやつだろう。その観測した世界では我々の世界で当然のように存在する『魔力』の存在が発見されていない特異的な世界であった”」
「確かに、魔力がないってのはかなり特異的だよね」
「いや、オレが転生する前の世界もそうだったぞ」
「……なんの話?」
ただ一人、忍羽だけはポカンとしている。
「そういや、忍羽ってどういう世界の出身なんだ? オレは異世界でアイツが魔法少女の世界、コイツがこの世界の人なんだが……」
「私が前いた世界? ……あっ、そういう事? ここって私の住んでる世界とは別の世界なの?」
「ようこそスタート地点へ」
「えっと……私の世界は……テレビがあって……ご飯が美味しくて……」
「わかった。もういい」
「……続き読むぞ。”この世界での人間を解剖してみた。が、我々の世界のものとなんら違いはなかった。つまり、実験用のモルモットとしての使用は可能、そのため多くの捕獲を目的としての拠点の設置を行う”」
「つまり、人体実験し放題だから狩拠点作ろうぜって話か」
「恐らくな。”また、同時並行としてさらに別の世界線を見つける研究を進める。我々の住む世界をaと定義し、拠点を置く世界をb、研究を進める世界をcとする”」
「平行世界は二つ見つけてたんだね」
「で、蒼馬の住んでる世界はbって事かな?」
「多分、その拠点がここを指すんだろうし、それであってると思う」
「ここから資料の日付が変わってるな。”予定が変更となった。cでは良き友人を見つけ、長期的に研究の独自開拓をするという事となり、その邪魔をしないよう研究を進める世界線をbへと変更した”……って、はぁ!?」
「c逃げたな」
「ッ……続き! “また、研究を進めていく上で、不特定多数の存在を平行世界から継続的に招き入れる事が可能となる術を開発した。ただ、それは範囲にして首都圏を覆う範囲での術となるため、安全面の都合上bにて施行する事を決定、そのためbの拠点増加を行う”……これで終わりだ」
「つまり?」
「bの世界で拉致しまくって研究しようとしたけど、いい感じの術できたからついでにそれもやろうぜって事」
「なるほど」
「多分、この不特定多数の存在を並行世界から持ってくるってやつで呼ばれたのが私たちなんだよね?」
「そうだな。オレも気づいたらこの世界にいたし、そういう感じで送り込まれてるんだな」
「これさ、その術使ってるヤツを倒したら修正力で全部が元通りになるのか?」
「わからん。そもそも修正力自体があまり判明してる事が少ないし……」
「……なんかすごい高次元な話してる?」
忍羽はさっきからずっと置いてけぼりだ。
「なんにせよ、目的は決まったかもな」
「そうか?」
「この資料に書いてある術を使ったヤツを探す。そのために施設を潰し続ける」
「なるほど? ま、俺はそれでいいけど」
「蒼馬……今回は上手くやったみたいだがお留守番を勧めるぞ」
「……」
「そういえば柊命の行った部屋には何があったの?」
「よくわからない薬品の山。これといって手掛かりはなかった。アリシアなんたらとか、ヨウ化ナンタラとか」
「そっか……蒼馬の部屋は?」
「めっちゃ鉄臭いダンボールとめっちゃアルコール臭いダンボールが大量にあった」
「それって……」
「何か心当たりが?」
「いや……知らない方がいいと思う」
「そう?」
「うん」
愛鈴は小声で「この施設……そんなに管理杜撰なんだ……グロっ」っと言っていたのが微かに聞こえた。
その言葉でなんとなく何が入っているのかなんとなく察したが、考えないようにした。
「んじゃ、帰る?」
「もうそれでいいかもな」
「私も特にこれ以上調べることはないかな」
「いく当てないし……うん」
このとき俺らは忘れていた。
この先に地獄の登り階段が待っていたということに……




