チカラミンX
やっぱり誰だって若くありたいと思うもの
チカラミンX
「お~~いトメ吉さん!あんたの番じゃぞー!」
公園で老人達がゲートボールを楽しんでいる。
段段トメ吉86歳は重い腰をあげた。
「えっこらしょい・・・」
トメ吉はスティックを振り下ろした。
連れ添いに先立たれ早10年、寂しさを紛らわす為に
始めたゲートボールもずいぶん上達した。
トメ吉は最近恋をしている。同じ老人会の梅田トキ
90歳に一目惚れしていた。トキもまた10年前に
連れ添いに先立たれている。
老人会とは、月に一度、同じ町内の65歳以上
の老人達が公民館に集まって愚痴をこぼしながら
お酒を飲む会だ。梅田トキとはそこで出会った。
トメ吉は自分の番を終えるとゆっくりベンチに
戻っていった。
(今日こそはトキさんに告白しようかの・・・)
段段トメ吉86歳。青春まっさかりであった。
ゲートボールを終えてトメ吉はいつものドラッグ
ストアに養命酒を買いに立ち寄った。
店内を見渡すと珍しい飲料水が目に止まった。
{老人向け栄養ドリンクチカラミンX。
これ1本で元気100倍。筋肉増強剤入り。
一本1000円}
トメ吉はチカラミンXを一本だけ手に取るとレジ
にそれを持っていった。
さっそく自宅に帰るなりトメ吉はチカラミンXを
飲み干した。
(まあこんなもん気休めじゃ。どうせ効き目なん
ぞないだろうが)
飲み干したチカラミンXの空き瓶をゴミ箱にほうり
投げた。とその時・・・
(ん?!なんじゃ。なんじゃ!?体中に熱い血が流
れる感じがするぞ)
みるみるうちにトメ吉の体中に血管が膨張し浮き
上がる。そして同時に筋肉がメキメキと腫れ上がり、
着ているシャツがビリビリと裂けて破けていった。
あっというまにトメ吉はボディビルダーの様な
体になっていた。
(おおお!?すごいぞ。なんなんじゃこれは、こんな
ものドラッグストアで売っていいのか!)
トメ吉は今なら誰にも負けない気がした。
試しに箪笥を持ち上げようとすると二メートルも
ある箪笥が軽々と持ちあがった。
トメ吉は思った。
(これじゃこれじゃこの力じゃ。この力を使って
トキさんに告白するのじゃ!)
トメ吉はパンパンになった体に無理やりジャケット
を着こみ梅田トキの家に向かった。
ドンドン!
「トキさんやあ!ちょっと用があるんじゃ!開けて
くれんかのーー!」
トメ吉はドアを叩いた。
ドアは開きそこに変わり果てた梅田トキの姿が
あった。
トメ吉同様にトキの体もマッチョになっていた。
「なんじゃ?トメ吉もあれを飲んだのかい?」
トメ吉は驚いたような表情で答えた。
「チカラミンXじゃろ?それ飲んだらこんな
体になったんじゃ!トキさんも飲んでるとは、まさか
じゃったよ!どうじゃ?マッチョな者同士これから
ボーリングでも行かんか?」
トキは頬を赤らめ、少しもじもじしながら
軽く肯いた。女の顔になっていた。
それからしばらくしてボーリング場にトメ吉とトキの
二人の姿があった。
ボーリング場の空気は凍り付いていた。
ガラガラガラーーーーン!!!
次々とピンが吹っ飛びストライクを決めるふたり。
一番重たい球を物凄いスピードで投げる。
周囲の客は驚き中には携帯の写メで撮っている者も
いた。
「トキさんや!ボーリングなんて30年ぶりじゃ!
やっぱり面白いの!!せっかくじゃ!バッティング
センターも行ってみやせんか??」
トキはガンガンストライクを決めながら、頬を赤らめ
軽く肯いた。女の顔になっていた。
それからしばらくしてバッティングセンターに
トメ吉とトキの二人の姿があった。
バッティングセンターの空気は凍り付いていた。
カコ―ーーーーーーーーーン!!!
軽快にバットに当たる球の音が鳴り響いていた。
時速150キロ、店で一番早いマシンから出る球を
打ちまくる二人。
周囲の客は驚き中には携帯の写メで撮っている者も
いた。
トキさんや!バッティングセンターなんて30年
ぶりじゃ!やっぱり面白いの!!せっかくじゃ!
ラブホテルでも行ってみやせんか??」
トキはガンガン150キロの球を打ちながら、頬を
赤らめ軽く肯いた。すっかり女の顔になっていた。
それからしばらくしてラブホテルにトメ吉と
トキの二人の姿があった。
ラブホテルの空気は凍り付いていた。
:倫理上の問題につき以下省略・・・・by苺大福
そうしてふたりは夢のような幸せな時間を過ごした。
:しばらくして月に一度の老人会の日。
トメ吉はその日老人会に出席していた。
するとそこにいた老人すべてマッチョになっていた。
チカラミンXの評判は口コミで全員に伝わっていたの
だった。
皆お互いの肉体美を見せ合っている。
そしてテーブルの上には今日はお酒ではなく
チカラミンXが置かれている。部屋の隅にいた一人
の老人がチカラミンXを一本手にして飲み干した。
満足げな表情を浮かべ飲み終えた空き瓶をジロジロ
見つめた。
するとたちまちその老人の顔は青ざめていった。
瓶にはこう書かれていた。
:使用上の注意事項
服用に関しては一生涯につき一本まで。副作用で
飲むと個人差はありますが寿命が10年程縮まります。
死ぬ直前にお飲みになってください。最後に夢
のような日々を過ごす事が出来ます。
使用・用量は守ってお使い下さい。ピンポーン
今日も読んでいただいてありがとうございます。




