5 雨宿りできてるのかしら(前)
短いですが、すぐに次話に続きます。
(2,000字以上あった部分を二つに分けました。既読のかたは申し訳ありません……orz)
「あ」
ぱたたっ……、と、雨礫が窓を叩く。
コリスは急ぎ館の外へと駆け出し、干したままだったシーツや衣服を取り込んだ。両手いっぱいのそれに埋もれるように扉をくぐり、間一髪で本降りに間に合う。ほっと息を吐いた。
雨音を背に軒下を伝い、リネン室へと向かう。
リネン室は正面入口から少し離れた雑用扉からのほうが近かった。
“祠”に付随する“館”は、とにかく大きい。使わない部屋は閉じてあるものの、一つ一つの設備がだだっ広いのはどうしようもなかった。
複数の洗い場がある洗濯部屋然り、厨房や貯蔵室然り。本当はもっと大所帯が暮らすべき場所だ。
(そう。昔は)
つい、過去に思いを馳せてしまうのは谷長のザイダルが戻り、客人のシオンの長逗留も決まって、何だかんだとひとの気配に安心したからかもしれない。
――寂しかったのかな、とも思う。
それもあり、初めてシオンを迎える日は楽しみで仕方無かった。
迂闊にもときめいたことは事実だが、同性と知ってからは、同性だからこその慕わしさや気楽さがある。性を偽っているからこその心配ごとも。
よいしょ、とリネン室の籠に洗濯物を入れ、アイロンをかけてゆく。
蒸気の湯気で火傷しないよう気をつけながら、どしゃ降りの窓の外を見た。
「長とシオンさん、雨宿りできてるのかしら……」
昼はとっくに過ぎている。お弁当を終えているだろうことは救いだ。対岸の森の、いったいどの辺りまで進めたのか。
谷の安全を確保するためとはいえ、無理せず切り上げて来てほしい気持ちが強かった。
――――じゅっ。
香り付けにハーブ水をスプレーした箇所に、ひときわ豪快に蒸気がけぶる。
コリスは手早くシーツを仕上げていった。
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