表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巻き戻り令嬢のやり直し~わたしは反省など致しません!~  作者: 柏木祥子
三章 魔術師の演出のもとにロマーニアス王国民並びにカルト教団によって演じられたエリザベート・デ・マルカイツの迫害と暗殺
97/189

第95話 シューゲイザーズ(靴を見る人々)‐8

 悲鳴は上がらなかった。短剣をはじく音もだ。したのは何者かが床を蹴って後ろへステップした微かな音と、壁に突き刺さった短剣の金属の震えだけだった。


 マリアはその場に大量にあった剣の一本を引き抜き、アイリーンの前に躍り出た。普段帯剣している装飾付きの剣と、装飾のない剣――そして遺跡でも使って見せた一対のピッケル型の装備、雷槍――は、万が一戦いになったときに身元がバレる元になるため、持って来ていなかった。武器は短剣が何本かだけ。うち一本は今しがた投げたところだ。


 アイリーンの前に庇うように出たため、すぐ襲い掛かられてもいいようにマリアは剣を構える。しかし意外なことに突然現れた闖入者は、マリアやアイリーンに攻撃しようとはせず、手の中の長剣を腰から足にかけての垂直方向に持ったまま、やや中腰に立ってこちらと相対していた。


 闖入者は身長はマリアと同程度、薄い鎧をつけた若い男だった。


 今は攻撃して来ていないが、友好的ということではない。マリアの投擲とうてきによって阻まれはしたがこの男は明らかにアイリーンの首を折るつもりだった。


 腰に黒い塗料の塗られた剣を下げている。男は、マリアではなく、アイリーンのほうを見て尋ねた。


「誰だ? どうしてここに来た?」


 アイリーンは黙っている。マリアもだ。


 男がにやにやと笑う。


「おい。せっかく話そうとしてるのに、その機会を逃すっていうのか? お前らがどこから来たかは知らんが、ここを探りに来たんだろう。今のうちに話して情報を聞き出すのもありだと思うけどな。まあどうせ? ああ。どうせ殺し合いになるんだし。俺も殺す前にいろいろ聞けたらいいと思うんだ」


 マリアは剣先を遊ばせ、いつでも攻勢、守勢、どちらもできるように準備している。


「騎士だな」


 マリアが言った。


「ほう、なぜだ?」


 男が言った。


「剣だ。剣身を黒く塗ってるが、柄は使い古されてる。傭兵上がりやそこいらのチンピラだったら、自分の剣なんてものは持たない。騎士か、道楽者の貴族かだ」


「それはちょっと偏見混じりだと思うがな。でもまあ、そうだ。俺は元騎士だ。そっちは現役――それも貴族の騎士だな」


「それは何故?」


「ナイフを投げたときに思ったんだ。品がありすぎるってね」


 男がそう言って馬鹿にしたように笑う。マリアは一切笑わない。それに気が付いた男は黙り、場を静けさが支配する。


「そうだ。俺の名前を教えてやろう。俺はサビアン・カテドラル。一応、貴族だ。君らと同じ。憶えて帰る必要はないがな」


 男の言葉の、最後の呼吸がされたと同時にマリアは、残った短剣の一本を投げた。突貫してきた男がそれを剣で弾き、回転しながら襲い掛かって来る。


「チッ」


 マリアは舌打ちをして剣の腹でそれを受け止め、そのエネルギーが剣全体に伝わる前に横に受け流した。そしてそのまま受け流した方向へ体勢を傾け、ちょうど、互いの位置を交換した形で、もう一度相対することになる。


 続いて動いたのは、マリアのほうだ。下から上へ剣を振り抜く。サビアンも先ほどのマリアと同じように受け流す。そしてマリアの頭へ蹴りを放った。マリアはそれを、片手で防御するが、威力に耐え切れず、体勢を崩して一歩下がった。


 そこを隙と見たサビアンは剣をマリアの方目掛け振り下ろす。そのまま行けば、サビアンはマリアを袈裟切りにする。潜入という今回の性質上、金属鎧はない。いちおう、皮の鎧を中に着ているが、小ぶりのナイフぐらいしか防げない代物だ。このままでは殺されてしまう。


 マリアは剣を持った手ではこの攻撃を防ぐ時間がないと判断し、咄嗟に剣を持っていない手を攻撃の軌道上に置いた。刃を腕で受け止める。しかし、想像されるような出血もダメージもない。


「手甲か。そこだけ金属を用意したな」


 男が吐き捨てるように言う。マリアは足の位置を変えて姿勢のバランスを保ち、剣を振るった。


 互いの武器と武器がぶつかり合い、どちらも剣を取り落とした。サビアンは剣を弾かれ、マリアの武器は衝突の瞬間に、柄から嫌な音が聞こえたためだった。武器を失った二人は衣服を掴み合い、もみ合いになる。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ