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第二章・弄ばれし者達01

 牙虎を埋める。少女の助言だ。だからアスライは穴を掘る。


 この牙虎は死なない。だが傷が完璧に再生しても、呼吸ができなかったり氷漬けにされたりしていると復活できないらしい。

 だがこの情報を得るのに少なくない時間を要した。少女は極度の恥かしがりなのか人見知りなのか、長い前髪で顔を隠し、ボソボソと呟くように話す。よく聞こえないので顔を覗き込もうとすると更に俯くので、余計に声が聞こえなくなってしまった。

 アスライが近づけば少女が離れるのを繰り返しているうちに、牙虎が動き出したので、もう一度頭部を破壊しなければならなかった。


 穴を掘っては、生き返ろうとする牙虎の邪魔をするを、延々と反復する。少女はその間もせっせと穴掘りを手伝っていた。

 日が暮れる頃になって、ようやっと牙虎の巨体を埋められる深さの穴が完成する。アスライはさっさと牙虎を穴へ放り込み、土を埋め戻した。念入りに土を踏み固め、上に大きな岩で蓋をしておく。


「ふう……」

 泥まみれだ。隣にいる少女も泥まみれだった。

 長い銀色の髪をした、小柄な少女だった。年は一二、三才ごろに見える。この少女は初めて出会った時、内臓を喰われ、確かに死んでいた。なのに今は、こうして生きている。

 目の前の泥まみれの少女と、あのとき死んでいた少女が繋がらず、アスライは落ち着かない気持ちになる。


「お前は……一体何なんだ?」

 少女の長い前髪から覗く真紅の瞳に、哀しみの色が浮かぶ。


「迷惑に……なるので……私のことは……忘れて……ください……」

 ボソボソと、だがはっきりとした拒絶の意思を、少女は表明する。そしてこの場を去ろうと背を向ける。


「おい、待て」

 声をかけると、少女は足を速めた。追って来られるのを本気で嫌がっているようなので、アスライの足は鈍った。どうしようかと逡巡する。


「あ」

 と少女が声を上げ、何かに覆い被される。


 ヂューッ、ヂュールルルッ! 


「――ッ、――――ッッッ!」

 魔獣に喉を噛み潰され、少女がジタバタと藻掻いている。


「…………は? ……はあああああっ?」

 アスライはその秀麗な顔をマヌケ面にし、慌てて少女を襲っている魔獣に斬りかかった。

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