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今ようやく気付いた

 色々と話をしていたら、いつの間にか日付を跨いでいた。今日も当然仕事がある。なので寝支度に入らせてもらった。まずはお風呂に入りたいんだけど。


「何で付いて来るんです?」


「何をするのだ?」


 興味津々なんだね。仕方ないので家での諸々を軽く説明した。


「ほう、ここで湯を浴びるのか。では我も」


「え……」


「構わぬだろう? 何なら触っても良いのだぞ?」


「いやいやいや! 一人で入らせて下さいよ!」


「仕方ないのう。ならば我はお主の中に戻るとしよう」


 そう言って僕に触れ、薄くなって消えた。


「それって、中から見てるって事ですか」


『気にするな。くっくっく……』


 無理でしょ!


 でもまあ、もう仕方ないか。今日からは多分ずっと一緒だ。とっとと諦めよ……。


『うむ、ずっと一緒におるぞ。我はお主のものであるからのう、くっくっく……』


 なーんか、邪なものを感じるぞ。具体的には、やらしい事考えてるよね。仕方ない神様だよ、全く。


 手早く脱いで洗濯籠に服を放る。そしてユニットのバスルームに入ってふと、正面にある鏡を見た。そこに映るのは間違い無く僕の姿。ゲーム内とそっくりだ。


 ……そう、そっくりなんだ。


「何で、目が青くなってんの……?」


 瞳が鮮やかな瑠璃色に染まっていた。







 お風呂から出ても今日からの事を考えて憂鬱になっていた。この目じゃ色々言われてしまう。何とかしないと。と言っても、カラーコンタクトで誤魔化すしか無いだろうなあ。


 スマートフォンで調べてみると、ドラッグストアや量販店などでも扱っているところがあるらしい。この時間でも開いている場所なんて多くないけど、某大手のディスカウントストアなどは二十四時間だったり深夜でも営業していたりする。幸い近くにもあるので、そこへ向かう事にした。


「わかっているとは思いますけど、出ないで下さいね?」


『うむ、心得ておる』


 それなら安心だ。


 髪をゴム紐で手早くポニーテールにまとめ、財布とスマートフォンをトートバッグに放り込む。服はニット生地を使った長袖とデニム生地の短いズボンに黒のレギンス。薄手の上着を羽織って暖かい靴下にスニーカーを履いたら出発。


 しっかり戸締まりしてマンションを出た。てくてく深夜の街を歩いて行く。


『ほーう。これがお主の住む世界か。火も無いというのに光っておるあれは、魔道具の類いか?』


 魔道具という物はわかんないけど、まあ違うね。あれは街灯。電気の力で光ってる物だもの。


「魔道具というのは、特殊な力を持った道具ってところですか?」


『その認識で間違ってはいないが、そうか。魔導器や魔術が無いのであったな。魔物もいないのだから、魔道具など作る事も不可能か。あれは魔物の持つ特殊な部位を利用して、魔術に似た現象を引き起こす道具だからのう』


「便利そうですけど、高価そうですね」


『値段まではわからぬが、そうやもしれんの』


 それからもファリアはこちらの事に興味を持って、色々と尋ねた。隙間無く連なる家屋に疑問を持ったり、通りを走る車を見て度肝を抜かれたりなど見るもの全てが新鮮なようで、一緒にいて面白くも可愛らしい。


 ……僕も不可思議な経験してるなあ。




 お店ではカラーコンタクトを案外あっさり購入出来た。僕の瞳の色は注目を集めていたけど、カラーコンタクトを付けてるんだと思われたのか生温かい視線が向けられていて、むしろ痛かった。


 雑多な中で通りすがりに見て来る男性方は、そちらよりも脚の方が気になってたみたいだけどね。ぴったりとしたレギンスは脚のラインを露わにしてるから。同じ男だもの、気持ちは良くわかる。


 さすがにこの身体でずっと生きて来たから、もう慣れたし受け入れてしまってるな。存分に見るが良いと思えるくらいには、何でもなくなった。


 だからこんな短いズボン、ショートパンツだっけ? 穿いていられるわけで。


 わりとナンパされる事も多くて、慣れない内は苦労したっけ。慣れてからは適当にあしらう事も出来るようになって、何とかなってる。母さんからのアドバイス、『からかって遊んでやれ』はさすがに実行出来てないけども。


 あの言葉を聞いた時の父さんの、何とも言えない顔はまだ覚えてるよ。母さんはあの年なのに僕と大して変わらないように見えるから、不安も多いだろうなあ……。


 と言うか、あれは妖怪の類いじゃない? 本人には絶対聞けないけどね。







 カラーコンタクトが威力を発揮し、仕事を問題無くこなして帰宅。初めてのコンタクトレンズだけど、まあ何とか大丈夫そうだった。帰ったら外すけど!


 夕食を作って食べ、歯を磨いたり軽くストレッチしたりなど済ませて準備は完了。ファリアを中に宿らせてswivelを装着、ベッドに寝転がったらあちらの世界へ出発だ。


 視界が暗転して全感覚が途絶え、次の瞬間にはお尻の下に硬い感触を覚えた。石の床の冷たい硬さ。立ち上がってお尻に付いた埃を払う。剣を浮かべて周りを照らせば、昨夜と同じ大広間にいた。


 特別変化は無い。ゴーレムの残骸はそのままだし、他には何にも無い。


 さあ、今日も出口を探そう。うっかり忘れてた看破も思い出したし、これで全体をもう一度見て回ればきっと見つかるでしょ。


 早くこんなところ抜け出して、町に行きたいよ。何のためにゲームを始めたのかわかんなくなっちゃう。


 今のところはファリアを助けるためかな。それはそれで良かったと思うけどね。


『感謝しておるぞ』




 …………うん、今ようやく気付いた。


 もしかして、さ。……考えてる事筒抜けじゃない!?


『我もこうなるとは思わなんだが、その通りになっておるぞ』


「酷いですよ!」


『ふふふ、お主の知られたくないあんな事やこんな事も全て我に知られてしまうのう?』


 何てこった!


 ……でも、何かあったかな? 当然僕もただの人間だし、これまで色々恥ずかしい事をやらかして来てる。とは言えもういい年だからね、悶絶するような黒歴史もあんまり思い付かない。


 女装させられた事だって受け入れちゃってる。むしろ着てる服は婦人物ばっかりだ。婦人物じゃないとサイズも合わないし、似合わない。もちろん中性的な服を選んでるけど、これはさすがに女装じゃないよね?


 いじめられた事もあったなあ。でも庇ってくれる人が必ずいたから、僕はまだマシな方だった。中学からはゲイルがずっといてくれたし。


 僕が女の子なら間違い無く惚れてたよね。実際には男の子だから、そんな事にはならなかったけどさ。


『ちっ』


 何で舌打ちした!? そういう話もイケるのこの神様!?




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  二


  筋力  六

  敏捷 一三

  魔力 一五


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作


  技術 看破     軽業


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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