今気付いたよ……
掲示板の一件を聞いて、その後はちょっと気力が失せて脱力。ログアウトして普通に寝た。そしたら月曜だ。お仕事!
そして帰宅! さすがに一日以上は引きずらないし、いつも通りにログインした。
昨日は部屋でただログアウトしただけだから、目を開ければベッドに座った状態だ。端末を見ると、カインさんだけ来てるね。少しお喋りしてみると、今もロランシルトにいるそうな。ロランシルトから南に新しい町を作る計画が進行中で、そちらに三人揃って協力してるとの事。
「完成までは相当時間かかるからさ、さすがにそれまではいないつもりだけどな。水龍の月までには形になってるって話だぜ」
「早いですね。そんなもので出来ちゃうんですか」
「用意は前から進めてたなあ。街道は既に出来てるし、資材も整ってるって言ってた。兵士も今はいっぱい来てるしさ。人手も充分なんだよな」
増援の千人だね。ちょうど良いから使ってしまおうというわけか。戦争に参加するよりは、こういう作業の方が命に関わらない分良かったかもしれないね。
そんな話をしてたら、アッシュさんが入って来た。
「やっほー。聞いてよランちゃん。こいつまたしょっぼいナンパしてさ!」
「やめて!?」
相変わらずなようで何より。何か安心した。
「今度慰めてあげますね」
「何する気!?」
「何って……ふふ、何して欲しいです?」
「ランちゃんが魔性っぽい!」
「大笑いしてんなよ!」
アッシュさんも相変わらずだね。ゲンゾウさんも元気いっぱいだそうだ。別れてから何日も過ぎたわけじゃないし、変わらないのも当然か。
こちらの近況も話した。トリシアに着いて従士になった事、くらいかな? 何故かもう知ってたけど。掲示板で既に広まってるらしい。ゲイルがあまり広めないよう言っておいてくれてたし、従士からじゃないとは思うんだけど。
町は普通に歩いてるから、まあ幾らでも知られる機会はあったか。
そんなに目立ってるのかな……。
朝食の時間だったから、食堂に顔を出してみた。人はあまり多くない。食事も昨夜とは違って、各自注文する形式みたいだ。
「ランか。おはよう」
「おはようございます、ホークさん! ……あ、隊長!」
「どちらでも構わないぞ」
普段は一応役職で呼ぼうかな。問題が無い時は名前で、とか。
「戦士ギルドに行ったのだな」
「はい。ゲイルとレジーナさんが良い職員さんを紹介してくれました」
「ああ、聞いている。馴れ馴れしい娘だが、仲良くしてやってくれると嬉しい」
娘? え、キリーさんの事?
…………あ、マークス! そっか、ホークさんだ! ホーク・マークス!
今気付いたよ……。
「キリーさんはお嬢さんだったんですね」
「あれは母親に似たからな。なかなかの器量だろう?」
自慢の娘さんですね? 親の顔になっちゃってるよ。
「お綺麗ですよね。それに話し易い方なので助かりました」
露骨に嬉しそうなんだけど。可愛いお父さんだなあ。
「あ、でも男と親しくされると心配だったりします?」
「ははは、さすがにその時期は通り過ぎた。あれももう良い年でな。そろそろ見つけて欲しいと思っているのだが、仕事一筋なのだ。最近ではむしろその意味で心配している」
逆だったか。ホークさんも仕事一筋そうだし、そこが似ちゃったんだね。
ホークさんの娘さんならエルフの血は流れてる。でもキリーさん、耳は尖ってなかったな。そしたら僕と同じタイプのハーフエルフか。お仲間。
僕がこちらの人族であれば、なんてお世辞に惜しんでくれる。放浪者だと色々問題があるからね。子供は作れないしあちらの環境次第では来れなくなるし、サービス終わったら強制的にさよならだ。伴侶とするには全く向かない。でも、そう言っても良いくらい気に入ってもらえてるのは素直に嬉しいね。
ヒルダ様はいつかいなくなるのなんてこちらの人でも同じ、なんて言ってたけど、可能性があるのと添い遂げられない事が確定してるのとでは雲泥の差がある。やっぱり選択肢には入らないんだよね、普通。
僕の場合はさらに容姿の問題もある。同性みたいな異性なんて、なかなかそういう目で見れないものだから。ヒルダ様でもないと厳しいでしょ。あ、後はセシルさんか。
キリーさんにも、良い人が見つかると良いね。
ホークさんと一緒にご飯を食べた後は、ちょうどキリーさんの事を思い出したところで戦士ギルドへ行く事にした。魔物の素材をまだ売ってなかったんだ。
服装は白のキャミソールにアーシルトで買ったノースリーブのブラウス、黒のスリット入りミニスカと黒いベルトのサンダル。くびれに巻いたベルトはフレア手製の、属性剣ホルダー付きの物。下着? 今日は白の紐。
随分暖かくなって、朝方と夜だけショートマントを羽織るくらいで大丈夫だ。後四週もすれば炎狼の月、夏の時期に入るそうだから気温も上がるわけだよ。四週と言っても四十日だから、まだ先の事だけど。
どのくらい暑くなるんだろうなあ。……フレアにどんな服着させられるんだろうなあ。
露出の激しい服だけは、まだ開き直れないんだよね。脚はまあ、慣れて来たけどさ。
『肩回りや腰回りがまだ不慣れなのだな。ではそのように話しておくか』
わざわざ露出する服を用意しそうじゃない? そこに慣れるため、とか何とか言って。
『くくく、否定出来んところだのう』
露出は腕とか脚だけにして欲しいな。
……いやいや! 露出させないで欲しいんだけどね!? 今更なのはわかってる!
暖かい季節は好きだから大歓迎。でもその事を考えると少し憂鬱かな。ズボン穿きたいんだよ、ズボン。
夏になったら海で遊べたりするのかな? トリシアは面してるから、プレイヤー達が遊びに行きそうだよね。魔物はいるだろうから、そこは注意しないといけないな。
あー、港も見に行きたい。観光らしい観光をまだしてなかった。今日はそれでも良いなあ。ファリアと二人でのんびりと、ね。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 三
筋力 六
敏捷 一四
魔力 一八
魔導器 属性剣
魔術 魔力操作 魔力感覚
技術 看破 軽業
跳躍
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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