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これが創造と破壊の周期、世界の理なのだ

「つまりここは、お主らの世界なのだな……」


 姿を現したファリアと二人で、現状についてわかっている事を整理し始めた。


 まず、こちらの世界とあちらの世界の関係。こちらにとってあちらは遊ぶための箱庭であって、仮想のもの。実際には存在しない作り物の世界だという位置付けだ。


 ただしこれは、本当に位置付けという程度の意味でしかなくなった。何故ならファリアがこうしてここにいる事で、それは否定されたから。


 ……いや、そうとも断言出来ないか。仮想世界が本物の世界のように働かない、なんて僕には言い切れないんだ。作り物の世界だけど、そこに何らかの力が働いて本物になってしまった。そんな事も考えられるんだよね。


 そしてもちろん、異世界に繋がった可能性も。結局何が正しいのかなんて、現時点じゃわかんないんだ。


 この説明は受け入れられた。ゲームという物については理解がなかなか及ばなかったけども、幸い僕はswivel以外にもゲーム機を持ってる。それを遊んで見せた事が、少しは理解の助けになったみたい。


 次に、こちらの世界の事も多少教えた。これは少しずつ、おいおいで話す方が良さそうだと思ったので、あちらとの明確な違いだけにしておく。


「魔導器や魔術のような力は存在しませんし、魔物もいませんよ」


「ほう、そうなのか。では、混沌はまだ終末に向けて動き出しておらんのだな」


「混沌って、鎖にその力を使ったって言ってたあれですか?」


 そんな事を聞けば、ファリアはちょうど良いからとあちらの話を聞かせてくれる。


 それは神話の話だった。




 始まりには『混沌』があった。ありとあらゆるものが混ざり合って区別が無く、全てのものが一つとして存在していた。


 混沌には多くのものが混ざり過ぎていて、その状態から直接世界を創造するには不向きだった。そのため混沌から霊的エネルギーにして後に生み出される何もかもの源となる、『エーテル』が生じた。混沌が次々にエーテルへと変化し、エーテルが他のありとあらゆるものの源となる。そうして世界の創造が始まった。


 エーテルから初めに生じたのは姉妹神、光と生命を司る『フレーティア』、闇と精神を司る『ナルラファリア』だった。


「男女の神ではなかったんですね」


「うむ。生き物とは違って、我らは男女である必要が無いからのう。兄弟でも良かったのであろうが、生じたのは我ら姉妹であった。それだけの話よ」


 特に深い意味は無い、と。


「それからはまずそれぞれの領域を作った」


 フレーティアは光と生命の領域を、ファリアは闇と精神の領域を創造した。その後、フレーティアは自らの領域を二つに分け、生命の領域に大地や海、空を作る。そして空に光の領域を浮かべた。それから生命を生み出し、ファリアに頼んで心を与えた。


 一方でファリアは闇と精神の領域の形はそのままに、冥界としての役割を持たせた。生命の死後にその魂が闇の中で心や記憶など様々なものを落として無垢となり、光の領域を通って生命の領域へと生まれ変わって行く。そんなサイクルを定めた。


 これが世界の成り立ちだという。




 ファリアは続けて神々の事を話し始める。


「世界の創造からしばらくは何事も無かったのだ。しかし新たな神、四神と呼ばれる神々が現れた事で、世界は急速な変化を迎えた」


 この四神は、元は人だったらしい。それが光の領域や闇と精神の領域を訪れてしまえる程の力を得て、人々から神として扱われた。


 四神は、決して悪い神々ではなかった。生命を愛していて、世界をより良くしたいと心から願っている、深い慈しみの心を持った善良そのものの神々だった。けれどその思いが姉妹神との間に溝を作り、さらには広げてしまう結果を招く。


 彼らは世界に関わり過ぎた。魔物が増え始めた頃に、世界を守るためとして人間やエルフ、ドワーフといった人型の生命、『人族』に強い力を授けてしまった。


 その力をもってすれば、魔物達には充分対抗出来た。魔導器を得て、修練して魔術も備え、単純な力に勝る魔物達に立ち向かって打倒する。そうして人族は自らと他の生命を守り、魔物を追い払って世界を守り続けた。


 しかしそれで満足しないのが人の世の常というわけで。力を持ってしまった人族は、次にその矛先を味方であったはずの者達に向ける。戦争だ。


 その理由は地球と対して変わらない。種族や思想、生まれや肌の色、そして欲望や技術力向上のため。理由なんて何でも良かった。彼らはただ戦い続けた。


 そこで姉妹神と四神は意見を対立させる。姉妹神は関わりを持たず、それまで同様見守るつもりだった。


 しかし四神は、戦争に介入して一刻も早く止めるべきだと主張した。


 話し合いは長く平行線を辿り、四神はとうとう実力行使に出てしまう。武器を掲げ、力を振りかざし、姉妹神に向けた。結局彼らも元は人。例え神にその名前を連ねても、その考え方は同じだったんだろう。


 四神に対してフレーティアは人族に対する態度と同様に見守るという立場を貫いて、自ら退いた。一方ファリアは、神の介入は世界と生命のためにならないとして抗戦。けれど一対四では勝ち目が無く、二神を退けるも敗れ去った。


 フレーティアからは譲り受け、ファリアからは奪い取り、全ての権能を得た四神はいよいよ世界を守るためとして介入を始める。


 そして敗れたファリアは四神の手によって封じられてしまったというわけだった。


「その場所が、あそこよ」


「何と言うか……。すごく人間的ですね、四神は」


「あやつらの気持ちも、わからぬわけではないのだ。手が届くならば助けたい。そう思うのは当然の事で、称えられるべき善の心よ。しかし神が、それだけでは困るのだ。神は迂闊に手を出してはならん。神がしてやれる事は確かに多い。だがそれをしてしまっては生命の成長を、精神の成長を妨げる事になる。それをあやつらは理解出来なかった。理解するには時が足らなかった。それだけの事よ」


 時が足らなかった、で済む話とは思えないんだけど?




 神々の話は終わり、混沌という存在についても簡単に教えてくれる。


「混沌は世界の始めにあるものだが、同時に世界を終わらせるものでもある。魔物はその尖兵よ」


 世界の創造に繋がる破壊のための存在。それが今の混沌なのだとファリアは語る。避け得ない絶対の運命で、生きとし生ける者達に出来る事は精々それを先送りにする程度なのだとか。


 初めに存在していた混沌は、ありとあらゆる全てのものを内包していた。けれどそこから様々なものが創造の力であるエーテルとして抜け出て、世界を形成した。ならば後に残るのは何か?


「つまり、今の混沌は破壊の力に偏ってしまった存在?」


「その通り。これが創造と破壊の周期、世界の理なのだ」


 そして破壊の力となった混沌の手先として、魔物達が現れる。全生命を滅ぼし尽くし、全ての魂を混沌に還らせる。それが彼らの役割であるらしい。


「魔物が姿を現し始めたら混沌が動き出した証明、という事ですか」


「うむ。こちらにはおらんのだったな? まだ姿を確認しておらぬのならば、しばらくは大丈夫であろう」


 とは言えあちらはあちら、こちらはこちらだ。


「こちらには関わりの無い話ですよね?」


「ふむ……まあそうか。こちらが同じとも限らんのだな」


 しかし、ファリアが普通に存在してしまってるなあ。何か、不思議な気分だよ。普通に触れるし、と言うか触って来るし、体温も匂いもある。靴は脱いでもらうよう頼んだら、すうっと薄くなって消えた。便利な事で。


「服も同じように消せるぞ!」


「脱がないで下さいね!?」


 何故嬉々としてそれを口にした。




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  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  二


  筋力  六

  敏捷 一三

  魔力 一五


 魔導器 属性剣

  魔術 魔力操作


  技術 看破     軽業


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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