最終話・……末永く、ね
かつては現実世界かと見紛うような仮想世界を体験出来るゲーム機があった。
今はゲームなどという物で遊んでいられる時代ではない。
町は荒廃し、人口は激減し、そして人々は住処を追われた。
様々な魑魅魍魎、悪鬼羅刹が跋扈する人外魔境。それがかつて瑠璃色の星と呼ばれた美しい惑星……その成れの果てである。
大地に緑は無く、海に青など見当たらない。空に輝くは太陽と月のみ。
風は砂塵を巻き上げた。土は乾燥し尽くして雑草すら生えない。見える水は海水のみだがそれも到底飲むに耐えない。そして火が点く物など探す事すら困難。
地上に以前の生命は無く、心無い者どもによる破壊の跡ばかりが広がる。
無辺に広がる不毛の世界。無尽に続く破滅の世界。
そんな中に動くものがあった。
かつて存在した地下と地下を繋ぐ交通網の入口。そのところどころ崩れた階段を上る細長い影。
砂色の衣に身を包んだそれは、地上を支配していた種族の姿だった。
「っていうゲーム! やろうよ、駆姉!」
またすごいジャンルを選んだな……。
VRゲーム機は改良され、新しく発売されたswivel・plusは半没入と言う機能を搭載した。外の刺激の一切を遮断してしまう従来型の欠点を克服し、幾つかの形式で現実世界の状態を知る事が出来る。
単純に性能も向上していて、さらに様々な機能も追加した。そんな最新ゲーム機で発売されたばかりの新作に、最近の彼……川村洋はどハマりしているらしい。
今年十二歳の彼はもちろん洸と渚の息子。まあ懐いて懐いて可愛いったらない。しかも渚に似たのか面立ちの整った美少年。性格は洸に似たので、大胆且つ豪快。
うちの娘、翠の幼馴染みなんだけどさ。何故か僕の方が親しい。絡み易いのかもしれないな。翠は葉子似だから。
ちなみに洋はもてるらしい。しかし一向に誰ともそういう風にならない。年が年だし早いのかなと思いつつ心配していたところ、どうもおませさんだったようだ。フレアが大好きみたい。
「駆姉?」
かけねえ。それが僕の呼ばれ方。普通に女性扱いである。一緒にお風呂入った事あるよねえ? めっちゃ見てたの気付いてるからね?
ちなみにこのゲーム、暦ちゃん絡みみたい。またじゃないだろうね? なんて聞いてみたら案の定そう。SOS出してたから、つい……なんて可愛らしく言っててさあ。呆れ果てつつ結局手伝う羽目になってるのよね。
だから僕も、実はプレイヤーだ。
「わかりました。じゃあここ、来て下さい」
ベッドの上で壁に寄りかかり、脚を開いて間を叩く。そうすれば洋は僕に背を預けて、ゲーム起動のために端末を動かし始めた。
僕もswivel・plusを装着し、同じく端末を操作。ゲームの世界へと、二人で旅立って行く。
最近、思うようになった事があるんだ。
『ほう、聞こう』
葉子がいなくなったら、きっと物凄い寂しいけどさ。
『うむ。そうなるであろうな』
こうして洋とか翠とか、子供達や孫達に囲まれて、一緒にゲームしたりしていれば、案外何とかなるんじゃないかなって。ほら、ゲンゾウさんみたいに。
『それだけではない。我らもおるからの?』
うん、そうだね。
だから少しだけ、悩まなくて済むようになって来たって言うか。
受け入れられそうかなって。
『お主も成長しておるという事だな』
もう四十越えてるのにね。僕はまだまだだな。
『だがまあ、そう悲観する事もないのだぞ?』
ん?
『葉子に頼まれておってな』
何を?
『死んだ後、魂を回収してくれとな』
…………はい?
『自分もずっとお主といたいと、我に頼んで来よったのだ。だから別れる事にはならん』
ええ……。
それさ、もっと早く言ってくれない!?
『何を言うか。お主が成長するのを待っておったのだ。悩み、考え、そして未来を見据えて歩いて行く。そうなるのを我らは待っておった。今日お主は見事、成長の時を迎えた。だから、教えた』
そ……そう言われると、何も言えないけどさ!
ああもう、損した気分……。
『くっくっく。今後は葉子も含めて、我らをよろしくのう?』
……末永く、ね。
以上を持ちまして、『男の娘(省略!)』は完結となりました。約七ヶ月の連載期間でしたが、楽しんでいただけたなら幸いです。
ちなみにこのお話は西暦2020年、つまり今年のつもりで書いておりました。コロナだとかオリンピック延期だとか対応出来ませんて! なので丸ごと無かった事にして一切触れませんでした(笑)。
新作は執筆中ですが、投稿にはまだまだ時間がかかると思います。その際には活動報告でお知らせ致しますので、お付き合いいただけたらと存じます。
それでは皆様、ありがとうございました。




