……父さんと母さんに会ってもらう
九月後半にある三連休の初日。日曜のこの日は何でもする約束を果たすため、という名目で僕は葉子を家に招き入れた。何をするのかと思えば。
「……父さんと母さんに会ってもらう」
「はい?」
「……結婚するから、その挨拶」
心の準備とかまだまだですよ!?
と、とは言えいつかはちゃんとしないといけない事だ。それが今じゃ駄目な理由なんて無い。
「でも、そんな事で使って良かったんですか?」
「……良い。そうでもしないと、駆はずるずるしなさそうだから」
「そそそそんな事はないですよ!?」
「……千草になってるから、思った通りそんな事ありそう」
いやね、もちろんそのつもりはあるんだよ? ただ、まだまだ先の事だからさ。今九月よ? 結婚するのは来年の春だからね?
……半年後か。別に早くはないね。
「……強引に連れて行くから、手ぶらで良い」
「そうは行きません。デパートで菓子折りを買ってから伺いますよ」
行くと決めてしまえばお腹も据わるもので。しっかりスーツを来て……今日もスカート穿かせる気? 本気? この子はさあ……。
それからデパートで評判の良い菓子折りを買って、彼女の家に向かった。
一応タクシーを使った。こんな時に徒歩とか、さすがに無いと思ったよ。汗だくになっちゃうし。
葉子の家は純日本家屋。庭園があって池があって鯉が住んでて……なんてイメージするそのままのお宅らしい。
葉子はがらがらと横に動く玄関を開き、帰宅した。僕は促されて恐る恐るお邪魔する。
足音が聞こえて顔を上げれば女性が姿を見せた。何処となく葉子の面影がある彼女は、以前動画で見た事のある人だ。
「いらっしゃい、駆さん」
「は、はじめまして! 平原駆と申します!」
「七海美樹です。娘がお世話になって、本当にありがとうございます」
「いえ、こちらこそいつも良くしていただいてますので!」
動画でも丁寧だったけど、実際会っても丁寧な方だ。しっとりした雰囲気で、大人って感じがする。柔らかい微笑みが何となく色っぽい、綺麗なお母さんだね。
お父さんの姿は無い。日曜だし、お仕事って事は無……くもないか。最近は日曜が休日だと決まってなかったりするからなあ。会社でも職種でも様々だ。それでもまだ日曜が休日って人の方が多いとは思うんだけど。
あーでも魔力反応はもう一つあるね。居間らしき和室で、正座して待ってらっしゃる。
「……駆、こっち」
「あ、はい。では、お邪魔致します」
「はい、どうぞ。後程お茶を用意しますわ」
そう言って、にっこりと微笑んだ美樹さんは台所の方へ向かった。僕は葉子に手を引かれる。行き先は当然、その和室。この家は和室しか無いっぽいけども。
そこには魔力反応で確認していた通り、お父さんらしき男性が座っていた。髪も顔も綺麗に整えられた、穏やかそうな人だ。僕を見ると嫌な顔一つしないでにこやかに挨拶してくれる。
「はじめまして。葉子の父の渡です」
「はじめまして! 平原駆です!」
正座して畳に指を突き、丁寧に頭を下げた。
「話には聞いていたが、丁寧な方だ。肩の力を抜いて、自分の家だと思ってゆっくりして下さい」
「ありがとうございます!」
無理無理無理! この状況でゆっくりなんて、出来るわけないじゃんか! そんな強靭な心臓持ち合わせてないよ!?
でも、お父さんもお母さんも優しそうな方でほっとした。気持ちの方は案外楽。厳格な方だったら大変な目に遭ってるところだ。雷でも落ちたかもしれないよね。
葉子に座布団のところへ呼ばれて失礼する。もちろん正座! やっぱり緊張するう。
美樹さんがお茶の支度を終えて席に着いたところで、菓子折りを渡した。口に合う事を祈ろう。葉子の太鼓判はもらってるから、幾分安心だ。
さ、さあいよいよだ。いよいよこの時が来た。葉子をお嫁さんにいただきたいと、申し出るんだ。お腹痛くなって来たぞ……。
「……わたし、駆と結婚するから」
「わかった。幸せにするんだよ?」
「……うん、任せて」
「あれ? ……えー!?」
待って? それはおかしい。僕が言うんじゃないの? え? これで終わり?
嘘お……。
一応改めて挨拶させていただいたけど、結婚については快諾だった。馬鹿みたいに緊張したのに何この……まあいいか。
その後はたわい無く雑談して過ごした。お茶が美味しいです。お二人には丁寧に話さなくても構わないと話しておいた。僕の方はもう習性だからね、このままだ。
ただ、この雑談の最中に思わぬ人物の名前がお父さんの口から飛び出した。
「柏崎祥吾と言う名前は覚えているかな?」
彼は葉子の剣の師匠。渡さんに頼まれて引き受けたって話してたね。正直に同級生である事を教えた。
いや、覚えているかと聞かれたんだから、同級生だとは知ってたのか。もしかして僕の事を知ってたり?
「実は、駆さんの事は彼から聞いていてね。面識は無いけど、知らないわけじゃなかったんだ」
「あー……あははは。それは何と言うか、お恥ずかしい限りです」
祥吾、何を話した?
「悪い話は全く聞いてないよ。むしろ祥吾が気に病んでいてね。相談されたり、愚痴を聞いたりってところだったよ」
「祥吾が……そうですか」
気に病む必要なんて無かったのに。人が良いとそういうところでも苦労するねえ。
最近何となく余所余所しいのは、もしかして気にしてるとか? しょうがない、今度がつんと言うか、からかって遊んであげよう。
『お主は男相手だと普通にからかうのう』
女性相手だと、何だか難しくてねえ。
『女からは専ら、からかわれるばかりだの』
その筆頭が何か言ってますね。
「まあ、祥吾以外からもちらほら噂話は聞いたけどね。何しろ当時から、今みたいな格好をしていただろう? 俺の学年でも結構人気があったよ」
「人気なんてあったんですか!?」
いや、人気と一口に言っても色々あるか。話題の人ってだけならこんななりだし、それなりにとは思う。好かれてたかどうかは別だ。
普通に考えて、そういう意味だよね。
「恋人にしたいって言う男子生徒がそれなりにいたなあ。あれは多分、駆さんが男だと知らなかったんだろうけどね。女子生徒には可愛いと評判だったね。彼女達が駆さんの性別を知っていたかどうかは、ちょっとわからないな」
「複雑な気持ちですね……」
「はは、男に好かれてもね」
「その辺り、どうなの?」
ぐいっと来た。何故食い付いた? お母様、あなたまさか。
「……駆は、男を惑わすのが好き」
危うく噴き出すところだった。何て事言うかな!? 否定出来ないけど!
あら、お父さんも吹きかけたね?
「それは本当なのか、葉子」
「……父さんも気をつけた方が良い」
何そのじと目は。君こういうところで表情出す子だった?
見なさい、渡さんも美樹さんもぽかんとしてるじゃないの。
「葉子に……表情が……!」
「それもこんな、こんな……」
本当にね。こんなタイミングでそんな表情する事なくない?
……ちょっと待って? 何でお二人とも目が潤んでるの?
「葉子が表情を見せるようになるなんて……!」
「駆さん、ありがとう……!」
「ええ……」
どんだけ無表情なのよ。思わずじと目で見返すと、顔を背けられた。葉子ちゃんたら、全くもう。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 五
筋力 六
敏捷 一八
魔力 二四
魔導器 強化属性剣
拡張機能 変幻自在 小領域作成
魔力量増大
魔術 魔力操作 魔力感覚
魔力封印
技術 看破 識別
軽業 跳躍
耐寒
精霊 風猫ルリ
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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