大義名分は得たし、今日も飲もうか
最寄り駅に到着した。愛里沙さん達はそこから歩いて帰れる距離に住んでるそうだ。最後に記念の写真を撮って、二人は車を降りた。ASで遊ぼうと約束して、帰途を行く後ろ姿を見送る。
そしたら僕達も宿に向かう。その途中でファリアとフレアを中から出した。カーテンを閉めた後ろの座席でごそごそと着替えてる。
「見ても良いのだぞ、駆」
「見ーまーせーん」
「おっと、もう見慣れておったの」
「静かに着替えてもらえます!?」
何なのこのコント。
宿に着いたら早速温泉だ。部屋の露天風呂は女性四人が使うけど、この宿は他にも幾つかお風呂がある。洸を誘ってそちらへ行ってみた。
主人さんの話では露天風呂二つに内風呂二つの四つがあって、フロントで札を受け取って貸し切りで利用するとの事。全部家族で入れるくらいの広さだと言うから、ゆったり出来そうだ。
今は露天風呂が一つ空いてたので、そこを利用させてもらう。受け取った札には使用中の文字。これを外に引っかけておけば良いわけだね。
浴衣と下駄で、からころと音を鳴らしながら歩く。途中ですれ違う他のお客さんには、何とも言えない目で見られた。
「カップ……ル?」
「兄妹じゃない?」
聞こえてる。聞こえてるから。
「手でも繋ぎましょうか」
「俺が社会的に死ぬだろーが」
一緒にお風呂入るんだから、手くらい繋いだところで何も変わんないけどね。
空いてたのは竹を連ねて囲った壁の、風情ある露天風呂。ここ、僕がオークと戦ったとこじゃん……。
脱衣所でぱぱっと脱いだら早速お風呂へ。しっかり洗ってから湯に浸かった。
ぐるっと見回すけど、完全に補修が終わってるのか綺麗なものだ。あの時の傷跡なんて少しも見当たらない。
ここで僕は、魔導器をこちらでも使えるようになったんだ。そう思うと感慨深い。
「何でお前はそうやって、女っぽい座り方してんだかよ」
「色っぽいです?」
「そうなんじゃねーの? 俺には渚がいるからよ。比較になんねーわ」
「渚相手じゃ分が悪過ぎますね」
つい想像しちゃうけど、やばい。絶対色っぽい。でも妖艶って言葉は似合わなそう。
「そう言えば、渚とは入らないんですか?」
「風呂か? 寝る前に部屋の風呂を使ってるぜ」
「昨夜はお楽しみでしたね?」
「まあな!」
でしょーね。そんで今夜もお楽しみなんでしょ?
「魔力感覚で覗いてたやがったか?」
「そんな事しませんよ! って言うか昨夜は酔ってしまってそれどころじゃなかったですからねえ」
素面でいるとそういう弊害があるのか。これは酔わないと駄目だね!
大義名分は得たし、今日も飲もうか。
はい、翌日です。貞操は大丈夫でした。貞操が大丈夫だっただけとも言い換えられるけど。
とりあえず朝一で露天風呂を使い、さっぱりした。そしたら洸達と合流してチェックアウトだ。階段を下りて行けば、主人さんが迎えてくれる。
支払いは洸が全部持った。
「お前この間の奴がどんだけの価値だと思ってんだよ。あっちの事でも色々世話になっちまってるしよ。こんなもんじゃ全然足りてねーっての」
というわけで、お礼代わりだ。そうなると遠慮するのも悪いし、お願いする事にしておいた。
「……わたしも?」
「気になるなら駆に何かしてやれ。今言ったが、幾ら礼しても足りねーんだ」
「……わかった。駆に色々して返す」
「色々って何!?」
澄まし顔で返答無し。先が思いやられるね!
主人さんとその他旅館の人達に見送られて、車に乗った僕達は出発した。機会があったらまた来よう。
道中はドライブを楽しみ、何だかんだで帰宅したのは夕方の事だった。荷物を整理したり浄化したりなどしていれば二十時近くなる。魔道具のお仕事が溜まってるはずなので、いそいそとログイン。
現れたのはフレアのお店。迎えに来てそのままログアウトしたんだから当たり前か。
「とても楽しかったです」
「また何かする時には誘いますね」
「はい! よろしくお願いします!」
最後にぎゅっとハグされて、照れ臭くて顔を赤くしつつ別れた。
エーテルを回収しつつ工房に帰れば、ちょうどヒルダ様のお姿があった。戻った事を報告して、お土産に買って来た名物の甘味をプレゼント。
「感謝しますわ。ランが戻ったのなら、リーフ様もこちらにいらっしゃいますわね?」
「多分、としか。あちらのご両親に旅行の話をしていらっしゃる場合には、もしかしたら次回になさるかもしれません」
「それもそうですわね。ああ、待ち遠しいですわ……」
お気持ちは理解しますけど、寂しさを僕で解消しようとするのは勘弁していただけませんか。ああ、良い匂いー。
結局その日リーフはログインしないまま夜を迎え、閣下の訪問を受けた。土産話を肴にお酒を飲みたいらしく、上物のワインと摘みの料理をアルベルト様に持たせてた。こちらからもお酒と料理を用意。もちろんお二人へのお土産も渡す。
ちなみにお土産は全て、ビニール系の素材を持ち込まないよう別の入れ物に移し替えてある。だから日持ちはあんまり良くない。とは言えこちらだったら保存食でない限り、そもそも食べ物は日持ちしない前提だからね。心配要らないでしょ。
それと、あちらの物とは言ってない。あちらの物を再現したという事にして渡した。
グラスにお酒を注いで支度が整ったら、ヒルダ様も交えて四人で乾杯。スマートフォンから移動させておいた写真などを見せつつ、旅行の色々を話した。
当然だけどフレアが写ってる物は省いてある。ファリアは姉だって紹介出来るので見せても大丈夫だね。
旅館の外観、部屋の作り、浴衣姿、露天風呂、料理の数々など様々なものからあちらの文化が窺えて、興味津々に色々質問された。一つ一つ丁寧に、答えられる範囲で答える。
さらに車内からの海の眺望、僕達の水着姿、遊んでいるところなども見せる。水着姿はちょっと刺激的だったみたいね。でもプレイヤーが既に持ち込んでるから、物凄い過剰な反応があったわけじゃない。
ヒルダ様は大興奮だったけども。
「リ、リーフ様とレジーナが……! それにランとナルミも素敵ですわ……!」
大変お気に召したようで。
閣下は旅館や街並みの方に興味を引かれてた。他には車とか生活様式とかね。この辺りはさすがに為政者。
「話に聞いた事が無いわけではないのだ。だがこうして目にするのは初めてでな。鉄の箱が走るなど、実に面白い」
こちらと全然違う物には大抵反応してた。建築物を見ればその構造が気になり、料理を見れば作り方や味について聞かれた。浴衣は着付け方や着心地など、車なら原理や速度や積載量なんかに注目。
僕も特別詳しいわけじゃないから、あくまでも知ってる範囲でしか答えられない。それでも充分なようで、閣下は楽しげにお酒を飲んでいた。
そうして賑やかに夜は更けて行く。
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名前 ラン
種族 ハーフエルフ
性別 男性
階級 五
筋力 六
敏捷 一八
魔力 二四
魔導器 強化属性剣
拡張機能 変幻自在 小領域作成
魔術 魔力操作 魔力感覚
魔力封印
技術 看破 識別
軽業 跳躍
耐寒
精霊 風猫ルリ
恩寵 旧神ナルラファリア
ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一
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