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ここはルリにお任せにゃ!

 まずは魔力吸収について整理しよう。


 ラズリ達が接近したら、およそ十メートルの距離で消えてしまった。構成していた魔力を吸収されたんだと考えられる。けど、ルリの風裂きは吸収されなかった。風裂きに乗った凶爪も効果を及ぼしていた。


 この事から、名前に含まれる『魔力』の言葉について魔力操作や魔力感覚とは表す範囲が違うか、もしくは単にエーテルの知識が無いから風属性や物理属性の魔術を魔力として認識せず吸収されなかったんだと推測出来る。


 それから、接近して魔力吸収の範囲に入ったにもかかわらず魔力操作や魔力感覚、凶爪は無事だ。魔導器自体も大丈夫。


 これについては理由がわからない。同じ持続型のラズリ達、三頭魔犬の魔術は駄目で、他の三つや魔導器は大丈夫だった。この差は何なんだろう? 召喚する形式の魔術は吸収される?


 ともあれ、わかってる事はそんなものかな。


 さて、どうしようか。遠距離攻撃が一切使えないのは正直辛い。ラズリ達が駄目なんだから魔弾も当然駄目だろう。魔導器の刀身は何とも言えないな。本体が大丈夫なんだし、もしかしたら吸収されないかもしれない。


 試せばわかるか。左手に持つ銃を向けて魔弾を撃ち、同時に魔力操作で魔導器を振るった。撃ち出された弾丸と刃は高速で飛ぶ。弾丸は目に見えない程の速度、刃は見えるけれど到達までほぼ一瞬。


 けれどどちらも、ウィジドに届かなかった。


「やっぱり、駄目ですか」


「私の力に気付いているのか。だが、これはどうかな?」


 言うが早いか、ウィジドから魔力が放たれ魔術が発動した。僕はその魔術の強大さに思わず声を上げる。


「嘘でしょ!? 何ですかその魔術!?」


 叫びながら全力で跳躍して飛び、辛くも難を逃れた。逃れたけど、大気の動きに翻弄されて吹き飛ぶように宙を舞ってる。魔力感覚で体勢を把握し、魔力操作で整えて天井に接地する。四つん這いで何とか衝撃に耐えた。


 今の今まで僕がいた場所は、青の混じった黒い魔力の何かに飲み込まれている。放出の魔術に似てるけど、到達は一瞬だったように思う。でも魔力量が多過ぎるから、多分何の魔術でもそうなるね。


 魔力感覚で魔術の発動を感じていなければ、とても回避が間に合わなかった。ウィジドに吸い込まれた魔力がこの魔術に費やされてる。でもラズリ達に使ってた二十点の魔力が全て乗ったようには感じられない。丸々扱えてしまうわけじゃない? それなら助かるんだけど。


 調べてみると、ウィジドの周りに拡散して行く魔力があった。それがおよそ十二。という事は、八点分が今の魔術に使われたわけか。充分凄まじいんだけど、ついほっとしちゃうな。おっと、散って行く魔力は元々僕のだ。回収させてもらおう。


 でも不思議だ。排出されて拡散した魔力は吸収されてない。吸収対象外になっちゃうのかな?


 回収した魔力は魔晶に戻した。これでラズリを二匹呼べる。今は無駄になるだけだし呼ばないけども。


「これを避けるか。貴様、何かの魔術で察しているな?」


「ご想像にお任せしますよ」


 天井に立って、見上げるように見下ろしながら返す。ウィジドに向けた視線をちらっと彼の後方、僕がいた方に逸らす。そちらは無傷、というわけでもなかった。床も天井も大きく削れてえぐれてる。壁も一部を除いて同様だ。まあその一部というのが、扉とその周辺部なんだけども。


 あれだけの魔術を受けて、何で無事なのさ。おっそろしい強度。当たる瞬間に魔力反応があったし、保護されてるのかな? その瞬間だけ発動する仕掛け? また隠されてる?


 まあ、何でもいいか。やっぱりウィジドを倒さなきゃ通れないんだ。頑張ろう。




 天井を蹴って接近、反転して身体の上下を変えながら襲いかかる。床に足から着地、同時に短剣を振った。ウィジドは避けようという素振りすら見せない。動けないそうだから仕方ないのかね。


 刀身が触れると、がきっという感触が右手に伝わった。ルリの風裂きで前もってわかっていた事だけど、ウィジドの身体は物凄く硬い。刃が通ったようには全く感じられない。


 短剣は四つの属性効果に加えて凶爪も巻き起こす。炎が焼き、風が斬り、水が叩いて土が打つ。さらに凶爪が裂いた。


 五つの属性全てがウィジドを襲い、これは多少痛手となったようだ。呻きとともに反撃の魔術が発動する。そこでさっきの魔術の正体も知れた。


 至近距離で撃ち出されたのは、線のような黒い魔力。魔力の光線だったんだ。


 アッシュさんの熱線同様、速いけど短い。普通であれば避けるのは難しい。僕は魔力感覚のおかげで避けられた。身体をひねって横回転し、その勢いを短剣に乗せて叩き付けてやる。そしてまた凶爪を合わせた五属性で少量のダメージを与えた。


「貴様、厄介な……!」


 ウィジドは消費無しの魔力光線……魔術名は魔線? 魔力線? ともかく、それを連続で放った。魔力の動きで魔術の発動と方向を察知して、かわしながら短剣を当てる。


 この魔線が困りものだった。魔弾と同じで連射が利く。次々色んな場所から色んな角度で撃たれる光線を短剣の届く至近距離で避け続けるなんて不可能だ。風盾とルリの風纏いのおかげで、何とか被弾せずに済んでる。


 風纏いは身体の表面を覆うような風の障壁を纏わせる魔術みたい。ぎりぎり避けられず風盾も間に合わなかった魔線は、この風纏いが逸らしてくれた。すごく心強い。


 ウィジドのローブは、やっぱり魔導器らしい。だから身体の、と言うよりローブの何処からでも魔術を発動して来るんだ。


「厄介ですね、全く!」


「貴様が言うか」


 お互い様だったか。


 しかしウィジドはまだまだ余裕たっぷりだ。それもそのはずで、こちらからの攻撃が大したダメージになってない。これじゃ例え倒せたとしても時間がかかり過ぎる。トーマが殺されてしまうって事は無いと思うんだけど、彼女の事を思う程に不安は募った。


 端末には、まだ連絡が無い。苦戦してるんだろうか。


 やっぱり急がなきゃ。どうしたらウィジドを短時間で倒せる? 現状効くのは短剣と風裂きだけだ。この二つで、どうしたらこの馬鹿みたいに硬い敵を倒せる?


 …………硬い敵? 硬い敵にはさあ、付き物な事があるよね?


 こんな事もあろうかと! 僕には取っておいた技術があるじゃない!


 いざ、看破あっ!


 使ってみれば、意識はウィジドの腹の奥へと引き寄せられた。そこに弱点があるんだ。


 一応肉の内側だね。干からびて貼り付くようなお肉の。でもこの位置だとローブが邪魔だ。そしてローブをどけるには鎖が邪魔。何てこったい。


 そうだ、この距離なら識別で確認出来る。


 魔線を凌ぎながら鎖を識別すると、これは『禁足の鎖』。ファリアを縛り付けていたあの鎖、『寂寞の鎖』同様に混沌の力から作られた物らしい。だとすれば、解くにはやっぱり同じ事をしないといけないのかな。


 まあ、それはいいか。ウィジドを倒して扉を開ける。それが今やるべき事だ。


 問題はその方法だよね。どうにかして、腹部の弱点を突かないといけない。何か良い方法は無いものかな……?


『ここはルリにお任せにゃ!』


 おお、本当に? どんな作戦で行くの?




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  名前 ラン

  種族 ハーフエルフ

  性別 男性

  階級  五


  筋力  六

  敏捷 一八

  魔力 二四


 魔導器 強化属性剣

拡張機能 変幻自在   小領域作成

  魔術 魔力操作   魔力感覚

     魔力封印


  技術 看破     識別

     軽業     跳躍

     耐寒


  精霊 風猫ルリ


  恩寵 旧神ナルラファリア


  ID 〇二六〇〇〇〇〇〇一

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